樺太犬タロ・ジロの生存を予言していた犬飼哲夫

実話「南極物語」のあらすじとネタバレシリーズ「樺太犬タロ・ジロの生存は予言されていた」編です。実話「南極物語」のあらすじとネタバレは『実話「南極物語」のあらすじとネタバレ』をご覧ください。


第2次南極観測隊が越冬隊の成立に失敗し、南極の昭和基地に樺太犬15頭が置き去りとなった。そして、1年後、第3次南極観測隊が樺太犬タロ・ジロと奇跡の再会を果たすことは有名である。
誰もが、昭和基地に置き去りになった樺太犬は死んでると思っていた。しかし、樺太犬タロ・ジロは生きていると予言した3人の人間が居たのである。3人は樺太犬に関連して人で、全て実話である。
■第1次越冬隊の犬係・菊池徹の予言
1958年(昭和33年)2月24日正午、第2次南極観測隊の隊長・永田武が越冬を断念した。
しかし、その前から愛犬家や動物愛護団体などから「犬殺し」との批判が相次ぎ、日本国内では早々と慰霊碑の建立が提案されていた。
そして、1958年(昭和33年)7月、大阪府堺市にある大浜公園で樺太犬慰霊像の除幕式が行われ、第1次越冬隊から西堀栄三郎・菊池徹・藤井恒男の3名が参列した。
そこで、悼辞を頼まれた菊池徹は、「リキ・ゴロ・アンコ・クマ…」と昭和基地に置き去りにした樺太犬15頭の名前を順に呼んでいく。
しかし、13頭で絶句してしまった。菊池徹にはどうしても残り2頭の名前が出てこない。菊池徹は仕方なく、「やすらかに眠れ」と結んだのである。
後で、朝日新聞の藤井恒男が菊池徹に尋ねたところ、菊池徹は「どうしても最後の2頭が思い出せず、やむなく『安らかに眠れ』で結んだ」と答えた。
なんと、菊池徹が思い出せなかった樺太犬2頭こそが、奇跡の生存を遂げた樺太犬タロ・ジロだったのである。これは、第1次越冬隊の犬係だった菊池徹の不思議な実話である。
■第1次越冬隊の犬係・北村泰一の予知夢
第3次南極観測隊の発足が決定すると、北村泰一は結婚を予定していたが、再び南極を目指すため、第3次南極観測隊に参加し、南極へ向けた準備で忙しい日々を送っていた。
そのようななか、北村泰一は、南極で2頭の樺太犬が走り回っている夢を観た。2頭がどの犬かまでははっきりと分からなかったが、兄弟犬のタロ・ジロのように思えた。
ある日、第1次越冬隊の隊長・西堀栄三郎などの京都在住のメンバーが北村泰一のために壮行会を開いた。そこで、北村泰一は樺太犬の夢を観たことを話し、タロジロは生きているのではないか、と明かした。
しかし、みんなは「また、北村が変なことを言っておるぞ」と笑うばかりであった。
しかし、その後、第3次越冬隊として再び、南極の地を踏んだ北村泰一は、樺太犬タロ・ジロと奇跡の再会を果たすのであった。これは、第1次越冬隊の犬係だった北村泰一が体験した不思議な実話である。
■北海道大学の教授・犬飼哲夫の予言
犬飼哲夫は、寒冷地の動物生態学の権威で、樺太犬にも精通している北海道大学の教授である。
犬飼哲夫は、第1次越冬隊長の西堀栄三郎に頼まれ、南極観測隊のために樺太犬を集め、犬ぞり訓練に担当していた。いわば、樺太犬タロ・ジロの育ての親である。
第1次越冬隊の医療担当・中野征紀は北海道大学山岳部出身で、犬飼哲夫とは親しく、帰国後もときどき会っていた。しかし、樺太犬を置き去りにしてきた非難は大きく、お互いに樺太犬を話題にすることは無かった。
ところが、1958年(昭和33年)の秋、中野征紀が樺太犬について話した。中野征紀から当時の状況を聞いた犬飼哲夫は、樺太犬は首輪を抜け出して生存している可能性があることを話した。しかし、中野征紀は全く信じなかった。
この話が広がり、1958年(昭和33年)11月に日経新聞に犬飼哲夫の対談が掲載されることになったが、樺太犬生存説は誰にも信じてもらえず、科学評論家の原田三夫にも酷評された。
しかし、その後、第3次南極観測隊の北村泰一が南極で樺太犬タロ・ジロと奇跡の再会を果たし、犬飼哲夫の予言は正しいと立証されたのである。
犬飼哲夫が樺太犬が生きている予言の根拠は次のようなものであった。
1・樺太犬が本気になれば、首輪や鎖を引きちぎることができる。
2・樺太犬タロ・ジロは若くて体力がある。
3・仕事が無いときは飼い主はエサ代を節約するため、樺太犬を放し飼いにしていたので、樺太犬は自分で餌をとっていた。
4・樺太犬は雪の中に潜って吹雪をやり過ごす。
5・樺太犬はクマのように脂肪にエネルギーを蓄える。
犬飼哲夫はトナカイや樺太犬を軍事利用する計画で陸軍に協力しており、樺太犬の生態に精通していた。犬飼哲夫の予言は、希望的推測ではなく、動物学者としての知識に基づく予想だったのである。
樺太犬タロ・ジロの死体を解剖した結果については、「樺太犬タロ・ジロの解剖と死因」をご覧ください。

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