クリーンハンドの原則(クリーンハンズの原則)

山崎豊子の小説「運命の人」に登場するクリーンハンドの原則(クリーンハンズの原則)の意味のネタバレです。

クリーンハンドの原則とは、イギリスの慣例法「公平を求めて裁判所に訴える者は、綺麗な手で訴えなければならない。(He who comes into equity must come with clean hands)」という法則である。

(クリーンハンドの原則を「クリーンハンズの原則」「クリーンハンドの法則」と呼ぶこともある。いずれも意味は同じである。)

クリーンハンドの原則を簡単に言えば、「悪いことをしている者に他人を訴える権利は無い」「違法行為をしている者を法律で保護する必要は無い」という考え方である。

日本の法律でいえば、クリーンハンドの原則は民法708条(不法原因給付)にあたる。

さて、外務省機密漏洩事件(西山事件)をモデルとした山崎豊子の小説「運命の人」にもクリーンハンドの原則が登場する。

山崎豊子の小説「運命の人」では、クリーンハンドの原則を「他人を責める者は、自分の手が綺麗でなければならない」と説明している。

実話の外務省機密漏洩事件(沖縄密約事件)で毎日新聞の元記者・西山太吉が批判される理由は、クリーンハンドの原則に関係あり、小説「運命の人」の中でもクリーンハンドの原則が大きなポイントとなっている。

外務省機密漏洩事件(沖縄密約事件)で、西山太吉が批判される理由は主に3つある。

1つ目は、女性事務官の蓮見喜久子と肉体関係を持ち、外務省の機密文書(極秘電信文)を入手したこと。

2つ目は、入手した機密文書を毎日新聞で報道するのではなく、社会党の横路孝弘に渡したうえ(目的外使用)、ニュースソース(蓮見喜久子)を守れなかったこと。

3つ目は、西山太吉が外務省機密漏洩事件(西山事件)で逮捕されたとき、妻の西山啓子が証拠を燃やして、証拠を隠滅したこと。

もちろん、西山太吉が批判される理由は全て個人レベル(記者レベル)であり、新聞記者の情通問題を沖縄密約という国家レベルの問題と同等に論じることは、明らかに詭弁である。

しかし、この詭弁が通じるのがクリーンハンズの原則である。だから、外務省機密漏洩事件(西山事件)が沖縄密約事件から情通事件へとすり替えられたと言われている。

さて、現在、西山太吉は国を相手取り、沖縄返還にともなう密約文書の開示請求訴訟を行っている。当時の機密文書を開示せよ、と裁判所に訴えているのだ。

しかし、この沖縄密約開示請求訴訟にもクリーンハンズの原則が効いている。

西山太吉が外務省機密漏洩事件(西山事件)で逮捕されたとき、妻の西山啓子は自宅にあった証拠を燃やした。西山啓子は台所で証拠を燃やそうとしたが、炎に驚き、妹の家で証拠を燃やしている。

沖縄密約開示請求訴訟は有意義な訴訟であると思うが、西山太吉の妻が証拠を隠滅した事実を知っていると、素直に応援できない。クリーンハンドの原則は、まさに「お前が言うなの原則」なのである。

実話「運命の人」については「外務省機密漏洩事件(西山事件)のあらすじとネタバレ」をご覧ください。

ドラマ「運命の人」の登場人物の実在のモデルについては『「運命の人」の実在のモデル』をご覧ください。