湊かなえ「夜行観覧車」の犯人と結末ネタバレ感想文

湊かなえの原作小説「夜行観覧車」のあらすじと犯人ネタバレと結末ネタバレを含むネタバレ読書感想文の後編です。

このページは『小説「夜行観覧車」のあらすじと犯人と結末ネタバレ』からの続きです。

このページには、湊かなえの小説「夜行観覧車」のあらすじや犯人や結末のネタバレが含まれています。小説「夜行観覧車」のあらすじやネタバレを知りたくない人は閲覧にご注意ください。

■小説「夜行観覧車」のネタバレ読書感想文
湊かなえの原作小説「夜行観覧車」が、2013年1月期の冬ドラマとしてTBSでドラマ化されるため、原作小説「夜行観覧車」を読んだ。

ドラマが始まる前に原作小説「夜行観覧車」を読もうと思っていたのだが、NHK大河ドラマ「八重の桜」の連動企画として書いている実話「新島八重の桜」が難渋したため、小説「夜行観覧車」を読むのがドラマの最終回前となった。

(注釈:大河ドラマ「八重の桜」の主人公・新島八重の生涯を描いた実話「新島八重の桜」は、「実話「新島八重の桜」のあらすじとネタバレ」をご覧ください。)

さて、湊かなえの原作小説「夜行観覧車」はミステリー小説と思っていたため、犯人を予想しながら読んだのだが、何の犯人推理要素もなく、犯人は事件現場に居た母・高橋淳子だった、という結末だった。

ドラマ「夜行観覧車」は最終回を迎えていないが、ドラマの犯人が原作通りなら、犯人は高橋淳子(石田ゆり子)である。

原作小説「夜行観覧車」はミステリー小説ではなく、ひばりヶ丘で起きた殺人事件を中心に3つの家族を描いた家族小説だった。ミステリー小説を期待していたので、期待外れで残念だった。

■高橋淳子の動機
母・高橋淳子の動機は前妻への対抗心だった。高橋淳子は後妻で、3兄弟のうち、長男・高橋良幸だけが前妻の子だった。

前妻の子で長男の高橋良幸は優秀で、医者になるたため、大学へ進んだが、実子で3男の高橋慎司は成績が悪かった。

長男・高橋良幸は父・高橋弘幸に医者になるように言われていた訳では無く、自らの意志で医者を目指していたが、長男・高橋良幸が大学に入学したとき、父・高橋弘幸が喜んでいたため、母・高橋淳子はコンプレックスをもっていたようだ。

高橋淳子は死んだ前妻に対抗心を持っており、どうしても3男・高橋慎司も医者にしたかったようだ。

■高橋淳子の殺意
高級住宅街「ひばりヶ丘」で起きた殺人事件の犯人は、妻の高橋淳子だったが、高橋淳子が犯行に及ぶ描写は無い。

高橋3兄弟や遠藤啓介らが、それぞれ知っている情報を出し合い、真相に迫っており、高橋淳子が夫・高橋弘幸を殺すまでの心境は、あくまでも推測である。

高橋淳子が夫・高橋弘幸を殺したときの心理は、遠藤真弓が娘・遠藤彩花を殺そうとした時の心理描写から推測するしかないだろう。

では、遠藤真弓はどうして娘・遠藤彩花を殺そうとしたのだろうか。遠藤真弓はが娘・遠藤彩花を殺そうとした理由は、娘・遠藤彩花が約束を破って家を傷つけたからである。

遠藤真弓は結婚する前、家の展示場で働いていた。このとき、子供が家を傷つけたことがあり、遠藤真弓は家を傷つける子供に憤慨していた。

そのとき、展示場の修繕に来たのが遠藤啓介だった。そして、遠藤真弓は、遠藤啓介の「家なんて直せば良いんですよ。綺麗なままの家なんてあり得ないんだから」という言葉に共感し、遠藤啓介と結婚した。

家に強い拘りを持つ遠藤真弓は、娘・遠藤彩と「床を気づけない」という約束をしていたのだが、娘・遠藤彩が家庭内暴力を振るって暴れ出し、床を傷つけたため、遠藤真弓は娘・遠藤彩花を殺そうとしたのだ。

遠藤真弓は遠藤啓介の「家なんて直せば良いんですよ」と言う言葉に共感して遠藤啓介と結婚したが、遠藤真弓は「家なんて直せば良いんですよ」とは思わないらしい。

つまり、遠藤真弓が家に強い拘りを持っていたように、高橋淳子も死んだ前妻に強い拘りがあり、ちょっとした切っ掛けで殺人に及んだのだろう。

■無縁社会
遠藤真弓も娘・遠藤彩花を殺しかけたが、小島さと子が来てくれたおかげで、遠藤真弓は殺人犯にならなくてすんだ。

最近はトラブルに巻き込まれることを嫌うため、他人の家庭に首を突っ込む人は少ないが、昔は小島さと子のような「お節介おばさん」がよく居たそうだ。

遠藤真弓が小島さと子のおかげで人殺しにならなかったということは、小島さと子のようなお節介おばさんが街には必要だということだろうか。

■拘りを捨てる
遠藤真弓は「家」に拘り、高橋淳子は「前妻」に拘った。そして、小島さと子は「ひばりヶ丘」に拘った。

湊かなえの小説「夜行観覧車」には、それぞれに強い拘りを持つ3人が登場する。

拘りとは、「小さい事にとらわれる」という意味である。湊かなえの小説「夜行観覧車」を読むと、拘りを持ってはいけないと思った。

だから、スープや麺に拘るラーメン屋で食べない方が良いと思うし、拘りの家などを作る建築業者では家を建てない方が良いと思う。

■坂道病
ひばりヶ丘殺人事件の真相が明らかになった後、遠藤彩花が「坂道病」と言っている。

坂道病とは、「普通の感覚を持った人が、おかしなところで無理をして過ごしていると、足下が傾いているような気分になってくる。踏ん張り続けているうちに自分が傾いていることにも気付かなくなり、ふとしたことで転がり落ちてしまう」という意味らしい。

おそらく、作者の湊かなえは、小説「夜行観覧車」を通じて、坂道病を訴えたかったのだと思うが、私には坂道病の感覚が分からないので、あまり実感も共感も出来なかった。

それに、「普通の感覚を持った人」というが、小説「夜行観覧車」に登場する人物は全員が変な人だと思ったので、「普通の感覚を持った人」は居ないと思った。

■小説「夜行観覧車」の感想と書評
小説「夜行観覧車」は1日でサラッと読めた。小説「夜行観覧車」は非常に読みやすい小説である。

ただ、私にとって、1日で読めたということは、読み返した部分が無いという事になるため、あまり良い意味では無い。実際、小説「夜行観覧車」を読んでも、1枚も付箋を貼らなかった。

小説「夜行観覧車」は浅く広い印象である。殺人事件・イジメ・家庭内暴力・坂道病・マスコミ批判など、色々なテーマが取り上げられているだけに、全体的な印象は薄かった。

本の帯には「エリート一家で起きたセンセーショナルな事件」と書いてあるが、別にセンセーショナルな事件でもないため、殺人事件の印象も薄かった。

遠藤真弓がひばりヶ丘殺人事件に関係しておらず、あくまでも高橋家のお向かいさんという立場なので仕方が無いのかもしれないが、もう少し殺人事件のパートが面白ければ良かったと思う。

最後に小島さと子が、マー君に「長年暮らしたところでも、一周回って降りたときには、違った景色が見えるんじゃないかしら」と話した。

しかし、私には夜行観覧車の意味が理解できなかったので、ただの蛇足に思えてしまい、消化不良の結末だった。

この『小説「夜行観覧車」のあらすじとネタバレ読書感想文』を書いている段階では、ドラマ「夜行観覧車」第8話が終わったところである。

ドラマ「夜行観覧車」の第8話までを観る限りでは、原作小説よりもドラマの方が面白いため、ドラマ「夜行観覧車」は原作に拘らず、面白い結末を迎えて欲しい。

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