カッコーの巣の上で-チーフの解説

ジャック・ニコルソンが主演する映画「カッコーの巣の上で」(原作はケン・キージーの小説「One Flew Over the Cuckoo's Nest」)のあらすじとネタバレの番外編「カッコーの巣の上で-マクマーフィーとビリーの解説」です。

映画「カッコーの巣の上で」のあらすじとネタバレは「カッコーの巣の上で あらすじと結末ネタバレ」をご覧ください。

■カッコーの巣の上で-チーフの解説
映画「カッコーの巣の上で」に登場する入院患者チーフ・ブロムデンは、ネイティブアメリカン(アメリカ先住民=インディアン)です。

「チーフ」というのは、インディアンの「酋長」のことで、入院患者チーフ・ブロムデンは、インディアンの象徴として描かれていると解釈できます。

そこで、インディアンの歴史を簡単に紹介するのですが、その前に入院患者チーフ・ブロムデンが主人公マクマーフィーに語った父親の話を思い出して欲しいのです。

チーフ・ブロムデンは父親について「おやじはデカかった。何でもやれた。みんな一目置いていた。だが最後の頃は、酒に溺れた。酒を口にする度に、飲むよりも飲まれてどんどん小さくなっていった。衰弱しきったところを・・・。始末されたんだ。ごく自然に」と話してします。この話を念頭に置いてください。

■インディアンの歴史のあらすじ
コロンブスは1492年にアメリカ大陸のサン・サルバドル島を発見して以降、ヨーロッパの白人が続々とアメリカ大陸へと移住しました。

コロンブスは新大陸を発見した英雄と評価されていますが、インディアンを大虐殺した悪人でもあり、コロンブスによるインディアン大虐殺により、インディアンの悲劇は始まるのです。

そして、アメリカ大陸に移住した白人は、武力と酒を駆使して、インディアンから土地を奪ったり、騙し取ったりしました。

インディアンは酒に弱い人種でした。インディアンは酒を飲むと直ぐに泥酔するので、白人はインディアンに酒を飲ませて酔っ払ったインディアンと契約を交わし、タダ同然の値段で土地を手に入れるのです。

インディアンに土地を所有するという習慣が無いので契約の無効を訴えましたが、白人は契約の理由に、インディアンを追い出しました。抵抗するインディアンが居れば、平気で殺しました。

こうした話で有名なのがニューヨーク市マンハッタン島の逸話です。マンハッタン島は、1626年にオランダ人がインディアンから、わずか60ギルダー(24ドル)相当の酒(ウイスキー)と交換したのです。

(注釈:一般的には「白人はインディアンから、タダ同然でマンハッタン島を購入したが、インディアンが代金の24ドルを貯金していれば、利息に利息が付き、現在の価格でマンハッタン島を買い戻してもお釣りが出る金額になっている」という話として語られることが多い。)

さて、当時は「白人以外は人間でない」「キリスト教以外は人間では無い」という思想があったので、白人はインディアンを未開の劣等民族として迫害していきます。

インディアンは白人に土地を奪われたり、大虐殺された挙げ句、白人の移住民が独立戦争を経てアメリカ合衆国を建国し、アメリカ大陸東部を支配するようになります。

そして、インディアンがアメリカ人にとって邪魔な存在になると、アンドリュー・ジャクソン大統領は1830年に「インディアン移住法」を制定し、10万人のインディアンをミシシッピー側の西やオクラハマなどに指定した「インディアン居留地」へと追放しました。

インディアン居留地とは、インディアンの権利を保障したインディアンの共有地で、インディアン居留地ではインディアンの権利が保障されていました。しかし、実質的にはインディアンを隔離するための街(コロニー)です。

これは精神障害者を隔離していた政策と同じです。精神障害者も宗教施設へ隔離されていました。後に精神障害者を収容していた施設が、精神病院となります。

さて、アメリカ大陸東部を支配したアメリカ合衆国は、シシッピー側の西へと進出し、西部開拓時代が本格化します。

そして、1848年にアメリカ大陸西岸のカリフォルニアでゴールドラッシュが起こり、西部開拓時代の黄金期を迎えます。このとき、ジーンズのリーバイスなどが誕生しました。

一方、西部のインディアンは平和的な共存を望んでいましたが、アメリカ政府はこれを受け入れず、武力を行使し、インディアンを駆逐したので、インディアンも白人に反撃し、西部インディアン戦争へと発展しました。

また、黒人奴隷制度を廃止しようとするアメリカ北部と、黒人奴隷制を維持しようとするアメリカ南部が対立し、1861年に南北戦争が勃発します。

南北戦争は黒人奴隷制を廃止しようとするアメリカ北部が勝利し、1862年9月にリンカーン大統領は奴隷解放宣言をしました。

その間もアメリカ政府は西部進行を続けており、インディアンは白人に抵抗を続けていましたが、インディアンは次々と虐殺されていきました。

そして、1890年にサウスダコタ州ウーンデッド・ニーでインディアン300人が惨殺された事件によってインディアンは抵抗を止め、西部インディアンはインディアンの敗北に終わりました。

こうして、ほとんどのインディアンはインディアン居留地へと封じ込められることになり、アメリカ政府は、フロンティアライン(戦線)が消滅したことを宣言し、アメリカ全土を領土化を完了しました。

そして、アメリ合衆国は次なる領土を目指して太平洋へと進出し、ハワイの植民地化を開始します。

このころ、ハワイの民族の減少しており、ハワイのカラカウア王は移民を受け入れるため、各国を訪問します。

1881年、カラカウア王は最初に日本を訪れて、明治天皇に拝謁し、日本とハワイの併合、山階宮定磨王との政略結婚、移民の受け入れなどを申し入れました。

しかし、アメリカとの対立を避けたい明治政府は、ハワイとの併合や政略結婚については断り、移民だけを了承しました。こうして、日本人のハワイ移住が始まり、日本人の着物をシャツに縫い直した服が話題となり、現在のアロハシャツが誕生しました。

(注釈:このとき、明治天皇がハワイとの併合を了承していれば、ハワイは日本の領土となっていたと言われてます。)

1887年、アメリカはハワイに送り込んだ移住者にハワイでクーデターを起こさせました。この結果、ハワイのカラカウア王はアメリカから押しつけられた憲法を受け入れざるを得なくなりました。そして、ハワイは後にアメリカに併合されます。

さて、アメリカ大陸を奪われたインディアンは、インディアン居留地へ隔離されましたが、インディアン居留地ではインディアンの権利を保障されていました。

しかし、アメリカ合衆国は19世紀末からインディアンの解体政策をとり、ドーズ法やカーティス法によってインディアンの部族ごとに与えたインディアン居留地を解体し、インディアン個人個人に土地の所有を認める政策へと変更しました。

これと同時に、インディアン個人個人をアメリカ国民として取り込み、インディアンの文化を禁止し、強制的にキリスト教教育などが行われるようになります。

(注釈:第2次世界大戦後、アメリカが日本に対して、財閥解体や農地解体を行ったのと同じ手段です。)

しかし、インディアン側からの公民権運動が起こり、1934年にルーズベルト大統領が「インディアン再組織法」を制定し、インディアンは再び部族でインディアン居留地の共有が出来るようになりました。

ところが、1950年代に入ると再びアメリカ政府によるインディアン解体政策が始まり、アメリカ政府はインディアンの100以上の部族の認定を取り消し、法律的にインディアンは消滅しました。

そして、アメリ政府は法律的にインディアンが消滅したことを理由に、インディアン居留地を解消し、インディアンの特権を剥奪しました。

こうして、インディアンは散り散りになり、インディアンが消滅の危機を迎えました。

このようななか、1960年後半に入ると、ベトナム戦争に対する批判からカウンターカルチャーが発生し、人権運動や女性解放運動や黒人運動が活発化し、インディアンも1960年代から公民権運動「レッド・パワー運動」を展開しました。

その結果、現在、インディアンはインディアン居留地(自治区)を回復し、カジノ運営など様々な特権を認められています。しかし、補助金などの問題もあり、酒に溺れるインディアンも多いようです。

(注釈:インディアンと言っても様々な部族があり、カジノ運営を否定する部族や酒を禁止する部族も居ます。)

■映画「カッコーの巣の上で」のチーフ
こうしたインディアンの歴史を理解した上で、映画「カッコーの巣の上で」に登場するチーフ・ブロムデンとい存在を解釈してみます。

チーフ・ブロムデンは父親について「おやじはデカかった。何でもやれた。みんな一目置いていた。だが最後の頃は、酒に溺れた。酒を口にする度に、飲むよりも飲まれてどんどん小さくなっていった。衰弱しきったところを・・・。始末されたんだ。ごく自然に」と話しています。

この話に登場する「おやじ」とは、チーフ・ブロムデンの本当の父親ではなく、インディアンの祖先と解釈することができます。

そして、父親についての話は「インディアンは広大なアメリカ大陸を所有していたが、白人に酒を飲まされて土地をだまし取られ、酒を飲む度に領土を縮小していき、反抗すると大虐殺され、インディアンは白人によって解体された」と解釈することができます。

■チーフが入院していた理由の解釈
映画「カッコーの巣の上で」に登場する入院患者チーフ・ブロムデンは、なぜ、精神病院に入院していたのか。その理由は映画「カッコーの巣の上で」には登場しません。

映画「カッコーの巣の上で」を観てもチーフ・ブロムデンが入院した理由は説明されていないので、理不尽に思うかもしれません。しかし、入院した理由など、極めて些細なことであり、入院した理由など必要ないのです。

そもそも、インディアンは平和的にアメリカ大陸で住んでいましたが、白人が勝手にやって、白人に虐殺され、白人に土地を騙し取られ、インディアン居留地へと押し込められのです。それは全て白人の都合で行われました。

だから、チーフ・ブロムデンが入院した理由など映画「カッコーの巣の上で」には必要ないのです。あえて、チーフ・ブロムデンが入院した理由を付けるのであれば、「白人(権力者)の都合で入院させられた」と私は解釈します。

■黒人とインディアンの解釈
映画「カッコーの巣の上で」には黒人も登場します。黒人は、病院の看守(警備員)でした。これはインディアンとの対比として描かれていると解釈できます。

黒人は長らく白人の奴隷として白人に支配されてきましたが、1960年代にインディアンと同様に、黒人も権利を求めて運動を起こしました。

1960年代に起きたインディアンの公民権運動を「レッド・パワー運動」というのに対して、黒人の公民権運動を「ブラック・パワー運動」と言いました。

「レッド・パワー運動」という理由は、インディアンの肌の色が赤いからです。インディアンの肌の色は「赤」で、黒人の肌の色は「黒」です。そして、日本人の肌の色は「黄色」なので、白人は日本人を「イエローモンキー」と呼びます。

さて、黒人もインディアンも白人に迫害されており、1960年代後半に公民権運動を起こしたのですが、黒人とインディアンが目指すところは対照的でした。

インディアンはインディアンの自治権を求めて白人の社会から独立使用したのに対し、黒人は白人社会のなかで白人と平等の権利を求めたのです。

こうした方向性の違いから、映画「カッコーの巣の上で」に登場する黒人は病院側(白人の世界)で看守(警備員)をしており、インディアンのチーフ・ブロムデンは患者側に居ます。

■聾唖のチーフの結末の解釈
主人公マクマーフィー(ジャック・ニコルソン)をイエス・キリストに例えると、童貞のビリーは裏切り者のユタで、聾唖のチーフはイエスキリストに槍を刺したロンギヌスと解釈でます。

つまり、マクマーフィー(イエス・キリスト)は精神病院で入院患者に自由という精神を教え、入院患者から尊敬を集めました。

そして、精神病院から逃げ出す前に、クリスマスパーティー(最後の晩餐)を開いたが、童貞ビリーのせいでマクマーフィー(イエス・キリスト)は看護婦長ラチェッドに捕まり、ロボトミー(十字架)にかけられてしまいます。

最後に、聾唖のチーフ(ロンギヌス)は、マクマーフィー(イエス・キリスト)を窒息死させ、精神病院を出て行きました。

マクマーフィー(イエス・キリスト)が死に、精神病院は看護婦長ラチェッドの支配する世界に戻りましたが、入院患者の間にはマクマーフィー(イエス・キリスト)が教えた掛けポーカー(キリストの教え)が残りました。

さて、ロンギヌスは十字架にかけられたイエス・キリストに槍を突き刺した人物で、盲目だったロンギヌスはイエス・キリストの返り血を浴びて盲目が治ったと伝わっているので、聾唖のチーフがロンギヌスの役割を果たしているのです。

■精神病院から逃げ出したチーフの行方
インディアンは自治権を求めて白人の世界からの独立を目指した結果、インディアン居留地(自治区)で自治権を勝ち取り、カジノを運営しているのですが、補助金や免除もあるので昼間から酒を飲んで自堕落な生活をしているインディアンも居り、色々と問題も多いようです。

なので、チーフが精神病院から逃げ出して自由を手にしたとしても、生活保護を受けながら自堕落な生活を送ったのかもしれてません。

一方、黒人は白人の世界で同等の権利を求めた結果、黒人初の大統領となるオバマ大統領を輩出しています。そのオバマ大統領は、インディアンの自治権を認める方針を出しています。

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