無痛-原作のあらすじと犯人と黒幕ネタバレ読書感想文

西島秀俊が主演するフジテレビの無痛ドラマ「無痛(むつう)-診える眼」の原作となる久坂部羊の原作小説「無痛」のあらすじとネタバレを含む読書感想文です。

原作小説「無痛」のあらすじとネタバレ編は「無痛-原作のあらすじと犯人のネタバレ」をご覧ください。

このページには原作小説「無痛」のあらすじと犯人や真犯人や黒幕や結末のネタバレが含まれています。原作小説「無痛」のあらすじと犯人や真犯人や黒幕や結末のネタバレを知りたくない人は閲覧にご注意ください。

■無痛-犯人と黒幕と結末ネタバレ読書感想文
2015年10月期にフジテレビで、久坂部羊の原作小説「無痛」がドラマ化されるので、久坂部羊の原作小説「無痛」を読んだ。これは原作小説「無痛」を読んだ夏休みの読書感想文である。

原作小説「無痛」は、刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)をテーマとした小説である。

刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)とは、「1・心神喪失者の行為は、罰しない。2・心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」という事が定められている。簡単に言えば、精神障害者は無罪や減刑になるという事を定めた法律である。

刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)がテーマになっいるので、小難しい小説なのかと思っていたら、そんなことはなかった。作者の久坂部羊は現役の医師なので、医療系の単語が登場するが、特に専門的な知識が無くても十分に楽しめるストーリーだった。

また、原作小説「無痛」の冒頭で起きた灘区教師一家殺害事件は、天童荒太の小説「家族狩り」を彷彿とさせるものがあり、原作小説「無痛」は長編小説だが、一気に最終回まで読めた。。

(注釈:天童荒太の小説「家族狩り」のあらすじとネタバレは「原作小説「家族狩り」のあらすじと犯人と結末のネタバレ」をご覧ください。)

■無痛-灘区教師一家殺害事件の犯人のネタバレ
原作小説「無痛」の冒頭で、教師・石川昭次の一家4人が殺害されるという事件が起きた。事件が起きた場所が兵庫県神戸市灘区なので、事件は「灘区教師一家殺害事件」と呼ばれた。

現場に残されていた子供用の帽子と大人用の靴跡が犯人を推理する手がかりになるのだが、高島菜見子の2人目の夫・佐田要造が面白いキャラクターだったので、不覚にも犯人を推理する事を忘れて読み進め、気づいたら結末で院長・白神陽児が犯人のネタバレをしていた。

結局、灘区教師一家殺害事件の犯人は、白神メディカルセンターの手術室の機材係・イバラ(伊原忠輝)だった。

イバラ(伊原忠輝)は、先天性の尖頭症で頭の形が砲弾みたいに先細りしていたので、イバラ(伊原忠輝)の頭には子供用の帽子でサイズがピッタリだった。しかし、足は普通に大人サイズだったので、現場に供用の帽子と大人用の靴跡が残っていたのである。

しかし、イバラ(伊原忠輝)は犯人と言っても、ただの実行犯で、殺された教師・石川昭次に恨みを持っていたのは黒幕の院長・白神陽児だった。

しかも、黒幕の白神陽児は、刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)でイバラ(伊原忠輝)を無罪にするため、向精神薬「ラサーム」を通常よりも多く服用させていたので、イバラ(伊原忠輝)は灘区教師一家殺害事件について何も覚えていなかった。

■無痛-黒幕の動機のネタバレ
黒幕の院長・白神陽児が教師・石川昭次を恨んでいた理由は、「寝取られ」だった。最近は若者の間で「寝取られ」というジャンルが流行っており、「寝取られ」はネット用語で「NTR」と表記されるようだ。

ただ、黒幕の院長・白神陽児が教師・石川昭次に石川彰子を寝取られたわけではなく、石川彰子を寝取られたのは院長・白神陽児の弟・怜児だ。

灘区教師一家殺害事件で殺された妻の石川彰子は、元々は弟・怜児の恋人で、弟・怜児は石川彰子との結婚を考えていた。

しかし、教師・石川昭次は、院長・白神陽児の変質的な性癖の噂を聞き、石川彰子に「兄弟で変態医師」と吹き込んで、弟・怜児から石川彰子を奪ったのである。

弟・怜児は、院長・白神陽児の影響で内向的だったので、教師・石川昭次に言い返せず、山で自殺していた。

■無痛-靴を捨てた犯人と黒幕のネタバレ
メールでしか話さない自閉症の南サトミが、灘区教師一家殺害事件の犯行を認め、臨床心理士・高島菜見子に、メールで犯行に使った靴を川に捨てたことを自供した。

しかし、南サトミは靴を川に捨てた事を自供していなかった。メールを送った犯人は精神障害児施設「六甲サナトリウム」で働く高島菜見子の同僚・熱田広江である。

犯人の熱田広江は、臨床心理士・高島菜見子の事が嫌いだったので、南サトミに携帯電話を充電してあげると言い、南サトミから携帯電話を預かり、南サトミの携帯電話から臨床心理士・高島菜見子に、犯行に使った靴を川に捨てたとメールしていたのだ。

しかも、高島菜見子と離婚した2人目の夫・佐田要造は、高島菜見子を恨んで、犯人の熱田広江と共謀しており、熱田広江の指示で灘区教師一家殺害事件で使用されたのと同じ靴を購入して、川に捨てた。

やがて、結託した熱田広江と佐田要造が肉体関係に発展するのだが、その時の佐田要造の反応が面白すぎる。

■無痛の結末は消化不良のネタバレ
原作小説「無痛」は面白かったが、結末はなんとなく消化不良だった。黒幕の院長・白神陽児は、アメリカに逃げたし、真犯人のイバラ(伊原忠輝)も精神鑑定中に病院から逃げ出した。

真犯人のイバラ(伊原忠輝)に手首を切られた刑事・早瀬順一郎も、イバラ(伊原忠輝)を許し、処罰よりも治療が必要だと話した。

被害者本人の刑事・早瀬順一郎が真犯人のイバラ(伊原忠輝)を許すと言っているので、それはそれで良いと思うが、冒頭で起きた灘区教師一家殺害事件については、子供2が殺されているので、イバラ(伊原忠輝)の無罪には何となく納得できなかった。

それに、弟・怜児が石川彰子を寝取られた原因は、院長・白神陽児の変質的な性癖なので、一番悪いのは院長・白神陽児だと思う。

■無痛-刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)の感想
久坂部羊の原作小説「無痛」は、全体的に面白かったのだが、物足りないところがあった。刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)で無罪になった精神障害者がどうなるか、という所を描写していないからである。

一般的に、刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)で無罪・不起訴になった精神障害者は無罪放免になると思われることが多いが、実際は心神喪失者等医療観察法によって精神病院に強制入院させられることが多い。

心神喪失者等医療観察法(心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)は、2001年(平成13年)6月に起きた大阪府池田小学校児童殺傷事件を切っ掛けに制定された法律で、刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)を理由に罪に問えなかった精神障害者を強制入院させる事を定めている。

申請を行って認められれば、刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)によって無罪や不起訴になった精神障害者を強制入院させることができる。

心神喪失者等医療観察法については賛否があり、時間があれば調べようと思っているのだが、まだ資料も読めていない。

また、隔離された精神病院の中はブラックボックスともいえるので、強制入院させられた精神障害者がどのような生活を送っているのかはよく分からない。

だからこそ、刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)をテーマにした原作小説「無痛」では、精神病患者の強制入院まで扱って欲しかった。

■無痛と映画「カッコーの巣の上で」の感想
久坂部羊の原作小説「無痛」を読んで一番好きな登場人物は、高島菜見子の2人目の元夫・佐田要造だ。佐田要造は、子供の頃に受けた包茎の手術が原因で性格が歪んだようだ。

2人目の元夫・佐田要造は精神科医を騙して精神病を装い、刑法・第39条(心神喪失及び心神耗弱)を利用して無罪になろうと考えていたので、名作映画「カッコーの巣の上で」のマクマーフィー(ジャック・ニコルソン)に通じる物を感じた。

映画「カッコーの巣の上で」は、刑務所に入れられた主人公のマクマーフィー(ジャック・ニコルソン)が強制労働から逃げるため、詐病を使って精神病院に入るストリーだ。

2人目の夫・佐田要造は精神病院に入る前にイバラ(伊原忠輝)に殺されてしまったが、もし、計画に成功して精神病院に入っていたら、映画「カッコーの巣の上で」のマクマーフィー(ジャック・ニコルソン)のようになっていたのかもしれない。

なお、映画「カッコーの巣の上で」は、隔離されていた精神病院の実情を世間に知らせるという意味でも大きく評価された映画なので、精神障害者が精神病院でどのような生活をしているのかに興味のある人に是非、見て頂きたい作品だ。

ちなみに、映画「カッコーの巣の上で」の結末でインディアンの入院患者チーフが病院を抜け出している点も、原作小説「無痛」と共通している。

(注釈:映画「カッコーの巣の上で」のあらすじと結末ネタバレについては、「カッコーの巣の上で あらすじと結末ネタバレ」をご覧ください。)

■無痛-治療をしないという選択
私が原作小説「無痛」を読んで共感出来たのは、主人公の医師・為頼英介が治療をしないという選択肢を提示した点だ。

元々、医者は病気を診断できても、病気を治すことは出来ないことが多い。医者が治せる病気は、病気の1割か2割程度しかないそうだ。風邪薬を発明したらノーベル賞が貰えると言われる程で、医者は風邪すら治せないのである。

私は、以前に「患者には処方するが、自分では飲みたくない薬の話」という医者が書いた記事を読んで、花粉症の治療を辞めた。最近は、病院へ行くよりも、スポーツジムにでも行った方が、体にも財布にも良いと思うようになった。

また、ある医者が何かの記事で「自力で病院へ行けるような人間は、病気では無いから、病院へ行く必要は無い」と言っていた。あながち、間違いでは無いような気がする。

もちろん、早期発見、早期治療は大事なので、不調を感じたら病院へは早めに行った方が良いと思うが、病気によっては、治療をしないという選択肢も持っておいた方が良いと思う。

■無痛犯人・イバラ(伊原忠輝)は無痛症
灘区教師一家殺害事件の犯人・イバラ(伊原忠輝)は、生まれながらに痛みを感じたない、先天性の無痛症だった。

痛みというのは、危険を察知するためのセンサーだ。人間は痛みを感じながら危険を学習していく。

また、殴られたら痛かったので、人を殴ってはいけないなどと、人間は学習していく。だから、痛みを感じる事は重要だ。

しかし、犯人・イバラ(伊原忠輝)は痛みを感じないため、他人の痛みについても理解しない。だから、冒頭で起きた灘区教師一家殺害事件でも、残虐な殺し方が平気で出来た。

原作小説「無痛」を読んで、原作小説「無痛」は「痛み」をテーマにしているのだと思った。それは、体の痛みであり、心の痛である。

痛みなんて無ければ良いと思っていたが、原作小説「無痛」を読んで、痛みは大切だと思った。痛いのは生きている証なのだと思った。

■黒幕の院長・白神陽児のゲイ疑惑
原作小説「無痛」を読んでいるとき、黒幕の院長・白神陽児はゲイだと思った。イバラ(伊原忠輝)を院長室に呼んで秘密の治療をしたり、筋肉を鍛えさせたりしていたのは、院長・白神陽児の趣味なのだと思った。

黒幕の院長・白神陽児が犯人のイバラ(伊原忠輝)と肉体関係を結ぶ描写は無かったが、黒幕の院長・白神陽児は変質的な性癖の持ち主だったので、やはり、ゲイの関係にあったと思う。

イバラ(伊原忠輝)は向精神薬「ラサーム」を飲まされて記憶に無いだけで、黒幕の院長・白神陽児に体をもてあそばれているに違いない。

■無痛の感想
原作小説「無痛」は刑法39条の他にも、ストーカー問題や混合診療問題など、テーマが多岐にわたっていた事もあり、結末は物足りなかったが、全体的に面白かった。作者の久坂部羊は現役医師なので、手術の描写なども良かった。

現役医師の作家と言えば、チームバチスタシリーズで有名な海堂尊が居るが、久坂部羊の原作小説「無痛」は海堂尊とは違った面白さがあった。

また、原作小説「無痛」の冒頭で起きた灘区教師一家殺害事件は、天童荒太の小説「家族狩り」を彷彿とさせるものがあった。

原作小説「無痛」はドラマ化が難しそうな小説だが、2015年10月期にフジテレビでドラマ化されるので、どのように映像化させるのか、楽しみにしたい。

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コメント欄

こんにちは。
昨日フジテレビで無痛(むつう)-診える眼が放送されましたがこの感想を見て次回がまた楽しみです。
時間があったら原作を読んでみようかなと思います。

  • 投稿者-
  • 匿名

石橋杏奈ちゃんかわいーw

  • 投稿者-
  • しっぽ

こんばんは。
無痛、とても面白いですね。
それとは、関係無いのですが、、、
映画カッコーの巣の上で、、、精神科の、内情に興味があればと
勧められていますが、あんなのは数十年前の精神科であって現状とは
全く異なります。
暴力的な対応、暴言があるのは認めますが、
無抵抗な患者さんを殴る蹴るなんてものは、普通ありません。
あの映画を精神科の内情と思われているのでしたら、情報を改められた方が良いと思います。

  • 投稿者-
  • 精神科ナース

■精神科ナースさんへ
1例で全ての精神病院を批判するつもりはありませんが、2012年に千葉県の精神病院で、准看護師2名が男性患者の着替えを介護する際に男性患者に暴行を加え、首の骨を折るなどの重傷を負わせるという虐待事件があり、暴行を受けた男性患者はこの怪我が原因で2014年に死亡しています。

この虐待事件は実話であり、一部報道は、精神病院という性質上から、こうした事件は氷山の一角であると指摘しています。

また、実際に精神病院に入っていた人から話を聞いたことがあるのですが、映画「カッコーの巣の上で」はよく出来ていると言っていたし、実際の精神病院は臭いも酷かったと言っていまいた。

また、薬物に依存した治療は、当時から「化学的ロボトミー」と批判されており、映画「カッコーの巣の上で」はそうした性質も良く表していると思います。

もちろん、問題があるのは一部の精神病院だけかもしれませんが、映画「カッコーの巣の上で」は現在の精神病院を知る上で、参考になると思います。

  • 投稿者-
  • 管理人