ON・藤堂比奈子-大友翔(小林翔太)と中島保の犯人ネタバレ感想文

内藤了の原作小説「ON(オン)猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」の読書感想文です。なお、犯人のネタバレをしているので、閲覧にご注意ください。

■大友翔(小林翔太)のネタバレ

小説「ON(オン)猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」の実在のモデル(テーマ)となった事件は、1999年4月14日に山口県光市で起きた「光市母子殺害事件」だろう。

光市母子殺害事件とは、少年A(当時18歳)がアパート1室に押し入り、この部屋に住む主婦(当時23歳)を殺害した後に強姦。さらに、主婦の娘(生後11ヶ月)を殺害して、袋の中に入れて放置し、財布を盗んで逃走したという事件である。

そして、この光市母子殺害事件は、母親を殺して強姦したのは「死者復活の儀式」であり、幼女を殺害して袋に入れたのは「ドラえもんが助けてくれると思った」という主張がなされ、一躍有名になった。

さて、「ON(オン)猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」で、同僚・仁美を殺害した犯人は、レストランのイケメン従業員・大友翔(小林翔太)だった。

大友翔(小林翔太)は、15年前の少女殺害事件の犯人で、少年院を出所後、ハヤサカ・メンタルクリニックに通い、普通の生活をしていた。

犯人・大友翔(小林翔太)は、母親ら性的関係を迫られて近親相姦という関係にあり、少女殺害事件や同僚・仁美は、母親に対するトラウマが犯行の動機となっている。

実話・光市母子殺害事件の犯人・少年Aも、母親と近親相姦的な関係にあり、そうした母親との関係や、母親の自殺に対するトラウマが犯行の動機になったされる。

こうした実話を踏まえたうえで、犯人・大友翔(小林翔太)の動機を考えようとしたのだが、上に書いたように、犯人・大友翔(小林翔太)の動機は母親に対するトラウマであり、犯行に深い意味は無いようだ。

■中島保(野比先生)のネタバレ

中島保(野比先生)は、ハヤサカ・メンタルクリニックの医師で、ドラえもんに登場する「野比のび太(のび太君)」に似ていることから「野比(のび)先生」と呼ばれている。

小説「ON(オン)猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」という猟奇的殺人事件が起きる小説に、ドラえもんが登場するのは不自然だと思うかもしれないが、これも光市母子殺害事件がモデル(テーマ)となっていると思えば、納得が出来る。

実話・光市母子殺害事件では、幼女を殺害して袋に入れたのは「ドラえもんが助けてくれると思った」という主張がなされた。

ドラえもんに助けを求める存在は、野比のび太(のび太君)なので、ドラえもんに助けを求めた光市母子殺害事件の少年Aは、野比のび太(のび太君)と言える。

よって、「野比(のび)先生」と呼ばれる中島保は、実話・光市母子殺害事件の少年Aと言えるだろう。

さて、中島保(野比先生)は「スイッチを押す者」であり、犯罪者のスイッチを押して自殺に追いやった犯人である。

中島保(野比先生)は犯罪者のスイッチを押した結果について「自分が犯した罪の記憶、反復していた快楽記憶を被害者の立場で経験し、狂い死ぬか、ショック死すると」と予想していた。

中島保(野比先生)が、いくら救いたいと思っていたとしても、「狂い死ぬか、ショック死する」という結果を想定してスイッチを押している以上、単なる殺人鬼に過ぎない。

■ON・藤堂比奈子の結末の意味

光市母子殺害事件の犯人・少年Aは、「誰が許し、誰が私を裁くのか…。そんな人物はこの世にはいないのだ」と述べている。

これに対し、真犯人・中島保(野比先生)にスイッチを押された犯罪者は、被害者にやったことを同じ事を自分自身に行い、自殺する。

これがON・藤堂比奈子が出した実話・光市母子殺害事件に対する答えではないだろうか。

つまり、犯罪者は人に裁かれるのではなく、被害者と同じ苦しみを味わって自分自身を裁け。ON・藤堂比奈子の結末には、そんな意味が込まれているように思った。

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