とと姉ちゃん-スチーム式アイロンの商品試験の実話とモデル

朝ドラ「ととねちゃん」に登場するスチーム式アイロンの商品試験(商品テスト)の実話とモデルを紹介します。

■とと姉ちゃん-スチーム式アイロンの商品試験の実話とモデル

商品テストの切っ掛けは、戦後、大橋鎮子(大橋鎭子)が闇市で仕事のために購入したミシンだった。このミシンはとても綺麗だったが、動かなかったのである。

戦後の日本には粗悪品が横行しており、大橋鎮子(大橋鎭子)と花森安治は「こういうものを消費者が買ってはいけない」として、雑誌「暮しの手帖」の企画「商品テスト」が始まることになる。

当時の日本製は、粗悪品の代名詞であり、外国製品に遠く及ばず、雑誌「暮しの手帖」の商品テストで、花森安治から「お薦めできる商品はありませんでした」という烙印を押され続けた。

しかし、日本人(企業)は、商品の欠点を指摘されても、雑誌「暮しの手帖」にクレームを付けたりせず、欠点の改善や商品開発に力を入れた。

雑誌「暮しの手帖」に商品を批評されて、お金を持ってきて泣きついてあり、嫌がらせをした人も居たが、それは少数であり、大半の人(企業)は雑誌「暮しの手帖」の商品テストで指摘された欠点を改善するために努力した。

ただ、企業が雑誌「暮しの手帖」の批判を受け入れたのは、日本人の国民性というだけではなく、雑誌「暮しの手帖」の商品テストが、厳格で公正なテストに裏打ちされたものであり、企業も参考にするほどだったからだった。

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■想像以上に厳格だった商品テスト

そもそも、雑誌「暮しの手帖」の商品テストは、読者に良い商品を紹介する企画ではない。企業に良い商品を作って貰うための企画である。

花森安治は「良い商品が売れて、悪い商品が売れなくなれば、店頭に並ぶのは良い商品だけになる。全て良い商品になれば、後は読者が好みで商品を選べば良い」と考えていたのだ。

そして、花森安治は「製造業者が命がけで作った物を批評のだから、批評する方も命がけでテストしなければならない。もし、商品テストで失敗すれば、会社が潰れる」と言い、厳格で公正なテストを行った。

一般的な雑誌は企業から商品提供を受けて記事を書いている場合が多いので、企業寄りの記事になる事が多い。

しかし、雑誌「暮しの手帖」は絶対に商品提供は受けず、商品テストする商品は全て定価で購入しており、企業から距離を置いた。

しかも、この頃の商品は個体差も激しかったので、企業から「たまたま悪い商品が商品テストに使われただけだ」というクレームを避けるため、花森安治はデパートと街の電気屋で同じ商品を2つ購入して、テスト結果の良い方の数値を採用するという念の入れようだった。

また、各商品が同じ条件でテストの条件を厳しく定め、途中で少しでも条件が狂えば、また初めからテストしなおり、公平性も厳しく守られていた。

■チームアイロンの商品試験の実話とモデル

雑誌「暮しの手帖」は公平・中立・厳格を守って商品を試験していたことから、日本の企業は、雑誌「暮しの手帖」の商品テストで酷評されながらも、その酷評を真摯に受け入れ、欠点の改善に励んだ。

しかし、アメリカ企業は商品の欠点を指摘しても、訴訟対策として注意書を増やすだけだった。一方、イギリス企業は商品の欠点を指摘しても「それが伝統だ」と言って改善しなかった。

このため、粗悪品の代名詞となっていた日本製品は、外国製品に追いつき、追い越すことになる。

そして、日本製品と外国製品の立場が逆転する象徴となったのが、昭和47年(1972年)発売の雑誌「暮しの手帖」第2世紀20号(通算120号)で行われた第3回スチームアイロン商品テストだった。

日本製品は順調に試験が行われたのに対し、これまで2度のアイロンの商品テストで好成績を収めていたGE社のスチーム式アイロンのスチームが出なかったのだ。

花森安治は企業から「テストで使用したのが、たまたま悪い製品だったけだ」と言われるのを避けるため、デパートと町の電気屋で同じ製品を2つ購入していたが、アメリカのGE社のスチーム式アイロンは2台ともスチームが出なかった。

花森安治は故障かと思い、3代目のアイロンを購入したが、やっぱりダメだった。

結局、花森安治はGE社のスチーム式アイロンを16台購入したが、スチームが正常に出たのは5台だけだったので、これは故障ではなく商品の欠陥と判断し、雑誌「暮しの手帖」で公表したのである。

こうして、日本製品と外国製品の立場が逆転が明白となった。さらに、日本製品は改善を続け、「メイド・イン・ジャパン」として高品質の代名詞となっていったのである。

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■企業も採用した商品テスト方法

花森安治は商品テストを開始したが、テスト方法は手探りであり、試行錯誤の末、次々に独自のテスト方法を生み出していった。

たとえば、アイロンのスチームを撮影するとき、和紙にスチームを吹きかけても、スチームの範囲が分かりにくい。

ならば、水に色を付ければ良いのではないか、ということで色つきの水でスチームを出してみたが、色つきのスチームは出ずに失敗していまう。

そして、試行錯誤の結果、逆転の発想から、スチームに色をつけるのではなく、紙の方に薬剤を塗るという試験方法を開発したのである。

これなら、スチームがかかった場所だけ、薬剤が反応して色が変化するので、ストームがかかった範囲が一目瞭然となる。

こうしたテスト方法は、企業も全く思いついておらず、商品テストの方法を採用しており、雑誌「暮しの手帖」の商品テストは企業にも大きな影響を与え、日本製品の品質向上に寄与したのである。

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