ノーサイド・ゲーム-池井戸潤の原作の読書感想文

池井戸潤の原作小説「ノーサイド・ゲーム」の夏休み読書感想文です。

■ノーサイド・ゲーム-原作の感想

池井戸潤の小説「ノーサイド・ゲーム」を読んだ。タイトルからも分かるとおり、ラグビーをテーマとした小説である。

私は、ラグビーをテーマとした往年の名作ドラマ「スクールウォーズ」のようなスポ根ドラマを想像していたのだが、小説「ノーサイド・ゲーム」は「スクールウォーズ」とは全然違った。

「スクールウォーズ」は、ラグビー未経験の中堅サラリーマン・君嶋隼人が、廃部を目前とした「トキワ自動車」の社会人ラグビーチーム「アストロズ」のゼネラルマネージャーに就任するという話だった。

私はラグビーの試合を観たことが無いし、ルールも知らないのだが、君嶋隼人がラグビー未経験という設定なので、ラグビーを知らなくても、問題なく読めた。

ただ、ラグビーの試合を観たことが無いため、試合の描写は、試合の様子が全くイメージ出来なかった。

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■ラグビー界の問題

「トキワ自動車」の「アストロズ」は、毎年16億円の赤字を垂れ流していた。

半分はラグビー選手の人件費で、設備や交通費や宿泊費などを入れると、支出は16億円になるのだが、それに対して、収入はほぼゼロだった。

しかし、赤字は「アストロズ」だけの問題ではなく、プラチナリーグに加盟している他のチームも同様に赤字で、プラチナリーグ全体の問題だった。

赤字の原因は2つ。1つ目は、そもそもの入場者数が少ない。2つ目はチケットの売り上げが貰えない。

この2つ目は、入場券の売り上げは日本蹴球協会へ行き、日本蹴球協会から参加チームに公平に分配されるのだが、実際は日本蹴球協会の穴埋めに使われており、売り上げが分配されていなかった。

しかも、ここで問題なのは、1チームが頑張って入場者を増やしたとしても、入場券の売り上げはリーグの参加チームで分配するので、ほとんど利益は上がらないという点である。

日本蹴球協会は何もしなくても加盟金が入ってくるので、加盟チームが赤字でも何もせず、加盟チームは1チームだけが頑張っても、何も変わらないので、何もしない。

これがラグビー界の悪しき体質なのだが、こうした悪しき体質はラグビー界だけではなく、色々な業界に残っており、私も何度か経験したことがある。

こうした組織の体質は、個人が何を言っても変わらないし、頑張っても無駄だと思う。

では、どうすれば、組織は変わるのか。その答えは、「踊る大捜査線」にある。

「踊る大捜査線」のなかで、和久平八郎(いかりや長介)が青島俊作(織田裕二)に、「正しいことをしたかったら偉くなれ」と言った。

組織を変えたければ、組織のトップにならないとダメで、いくら下っ端が正しいことを言っても何の効果も無いということだ。

■ノーサイド・ゲームの感想

「ノーサイド・ゲーム」は、企業のラグビーチームが運営者の目線と、選手の目線から描かれており面白かった。

特に、仲間を裏切ってライバルチーム「サイクロンズ」へと移籍する里村亮太の移籍承諾書を巡るやりとりでは、運営者と選手の感覚の違いがよく現れていた。

ところで、小説の内容自体は面白かったが、タイトルがイマイチだと思った。

「ノーサイド」というのは、試合が終わったら、敵も味方も無なり、お互いの健闘を称え合うことである。

だから、「ノーサイド・ゲーム」でも、結末で、敵も味方も無くなり、戦っていた敵と1つになって大団円を迎えるのかと思いながら読んでいたのだが、敵と味方が健闘を称え合うという結末では無かった。

タイトルと結末の印象が全然違ったので、勧善懲悪の結末にするのであれば、タイトルを変更した方が良かったと思う。

なお、原作のあらすじとネタバレは「ノーサイド・ゲーム-原作のあらすじとネタバレ」をご覧ください。

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