南極第一次越冬隊とカラフト犬のあらすじとネタバレ感想
第1次南極観測隊で第1次越冬隊の犬係だった北村泰一の小説「南極第一次越冬隊とカラフト犬」のあらすじとネタバレを含んだ読書感想文です。
このページは「南極越冬記のあらすじとネタバレ感想文」からの続きです。感想文のトップページは「南極越冬隊タロジロの真実-あらすじとネタバレ感想文」です。
さて、昭和基地から120km地点に接岸した第2次南極地域観測隊は、第1次越冬隊を宗谷へと回収する。宗谷側からは、第2次越冬隊員3名を昭和基地へと送っていたが、最終的には第2次越冬隊員3名も回収している。
結果的に、第2次南極地域観測隊は樺太犬のタロ・ジロなど15頭を南極に置き去りにすることになる。これについては、多くの非難があるが、ある意味では仕方なかったことだと思う。
第1次越冬隊(予備観測隊)は南極で機材チェックをしたり、現地情報を収集したりする人体実験的な役割だったが、第2次越冬隊(本観測隊)は国際地球観測年(IGY)の開催に合わせて行う観測部隊で、あくまでも第2次越冬隊の目的は「南極での観測」だった。
第2次越冬隊の目的が「昭和基地の維持」や「樺太犬の回収」であれば、樺太犬タロ・ジロの置き去り問題は起きなかっただろうが、第2次越冬隊の目的は「南極での観測」なのだから、仕方が無いという一面はある。
ほかにも色々と事情があるのだが、天候が悪かったのも樺太犬タロ・ジロ置き去り事件の大きな要因である。
南極観測船とは、氷を割るために造られた「砕氷船(さいひょうせん)」のことである。
砕氷船は船底の先が斧のようになっており、船を氷の上に乗り上げて、船の重みで氷を割っていく。それでも割れないときは、船体を揺らして(ローリング)、氷を割る。
ローリングするために、砕氷船の船底は丸くなっているうえ、一般的な船のように横揺れ防止のパーツが付いていない。
だから、南極観測船は普通の船よりも揺れるのである。宗谷も揺れるのだが、アメリカの砕氷艦「バートン・アイランド号」は、宗谷よりも揺れた。
したがって、砕氷船が受ける悪天候からの影響は、一般船が受ける影響よりも大きくなってしまうのだ。悪天候で飛行機は飛ばないし、昭和基地までの距離が遠いので、陸上輸送も困難だった。八方手詰まりである。
第1次越冬隊が昭和基地に残ってもう1年越冬することは、食料が十分にあったので物理的には可能だったが、色々と事情があるので無理だった。
「南極越冬隊タロジロの真実-あらすじとネタバレ読書感想文の最終回」へ続く。
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