樺太犬タロ・ジロが南極で生き延びた方法と理由

実話「南極物語」で昭和基地に置き去りにされた樺太犬タロ・ジロが生き延びた理由について。実話「南極物語」のあらすじは「実話『南極物語』のあらすじとネタバレ」をご覧ください。


このページは「第2次南極観測隊が越冬隊の成立に失敗した理由と原因」からの続きです。
1958年(昭和33年)2月24日正午、第2次南極観測隊の隊長・永田武は第2次越冬隊の不成立を決定し、昭和基地に残された樺太犬タロ・ジロ・リキなど15頭が置き去りになった。
置き去りになった樺太犬15頭のうち、タロ・ジロの2頭だけが生き残り、翌年の奇跡の再会へと繋がる。
当然、昭和基地は無人になっているので、樺太犬タロ・ジロらがどのようにして生き延びたのかは不明だが、その諸説を簡単に紹介しておく。
■樺太犬15頭の生死の状況
昭和基地に残された樺太犬15頭のうち、7頭が鎖につながれたまま死んでおり、残り8頭が首輪を抜けて逃走していた。首輪を抜けた8頭のうち、生存が確認できたのはタロ・ジロの2頭だけである。
後に、第9次越冬隊が昭和基地付近でリキと思われる1頭の死体が見つかるが、首輪を抜けた残り6頭は不明のままである。
■鎖につながれた樺太犬の死因
鎖につながれたまま死んでいた樺太犬は生存時の平均体重が45kgであったが、発見時は22kgだった。その他の樺太犬も体重が半分になっていた。
解剖の結果、胃からビニールの切れ端と糸くず5グラムが見つかった。体内の脂肪は無く、臓器は薄くなっており、死因は餓死とみられる。
■昭和基地に残された樺太犬の生存期間
死体の体重や脂肪の量から推察すると、鎖につながれた樺太犬は1ヶ月程度は生存していたとみられる。樺太犬は熊のように冬眠状態にあった場合は、2ヶ月程度は生存していた可能性がある。
首輪を抜け出した樺太犬についてはさらに長期間、生存していたとみられている。
■樺太犬タロ・ジロの餌の謎
樺太犬の周りには、アザラシの死骸ややペミカン(携帯用の餌)があった。首輪を抜けた樺太犬はこれらの餌を食べることができたが、樺太犬が餌を食べた形跡はない。
樺太犬が餌を食べなかった理由は不明であるが、首輪を抜けた当初より、他に食料が得られる場所を知っていた可能性が大きい。
■樺太犬タロ・ジロについての証言
第1次越冬隊の犬係だった北村泰一が第3次越冬隊員として、昭和基地で樺太犬タロ・ジロと再会した樺太犬タロ・ジロについて「丸々と太って小熊のようだった」「油のような物でベトベトしていた」と証言している。
樺太犬タロ・ジロの体重から考えて、十分な餌を摂取していたようである。
■樺太犬タロ・ジロは若かった説
樺太犬19頭が第1次越冬隊とともに南極の昭和基地で越冬することになった。越冬当時、タロ・ジロは1歳で、越冬する樺太犬の中で1番若かった。
樺太犬タロ・ジロは若かったから生き延びることが出来たが、他の犬は年寄りだったので、1年間を生き抜く体力が無かったとされている。
■帰巣本能説
樺太犬には帰巣本能が強い。首輪を抜けた樺太犬8頭のうち6頭は、帰巣本能により日本に向かって走り出し、行方が分からなくなり死亡した。
タロ・ジロは日本よりも昭和基地で過ごした時間が長いため、帰巣本能が昭和基地に働いていた。
ただし、1968年に第9次越冬隊の村越望が係留場付近で樺太犬の遺体を発見した。この樺太犬は「白っぽい」「毛が短い」とう証言から、リキと推定されている(遺体に関しては写真および資料は存在していない)。
第1次越冬隊の犬係・北村泰一は、昭和基地で樺太犬リキとみられる遺体が見つかったことにより、帰巣本能説について疑問を持っている。
■アザラシのウンコを食べた説
樺太犬が吠えると、アザラシは驚いて糞をしながら逃げる。アザラシの糞には未消化の小エビや稚魚が含まれており、栄養が豊富だった。樺太犬タロ・ジロはアザラが落とした糞を食べて、1年間を生き延びたという説。
厳冬期には昭和基地付近からペンギンが居なくなる。厳冬期に唯一の食料となるのはアザラシおよびアザラシの糞であり、この説は極めて有力である。
樺太犬タロ・ジロはウンコを好んで食べていたようである。西堀栄三郎は著書でウンコを食べられたことを報告している。また、ある隊員は「野糞にタロ・ジロを連れて行けば、綺麗にしてくれる」と別の隊員から教えられたことを報告している。
ウンコを食べることは、動物界では特別なことではない。狼などは他の動物の糞を食べ、不足する栄養を摂取していた。樺太犬タロ・ジロもウンコを好んでウンコを食べる傾向にあったようである。
■ペンギンを食べた説
樺太犬タロ・ジロなどはペンギンを狩り、食べていた。ペンギン1匹で樺太犬2頭の1ヶ月分の食料となる。ただし、樺太犬タロ・ジロが狩ったペンギンを食べる様子は目撃されていない。
■アザラシを食べた説
樺太犬タロ・ジロはアザラシを食べて生き延びたという説。樺太犬タロ・ジロが共同でアザラシ狩りをしていた。しかし、アザラシの肉を食べるところを目撃した者は居ない。アザラシに糞をさせるために噛みついていたという説はある。
■死骸を食べていた説
海から打ち上げられる魚の死体などを食べていた。
■共食い説
樺太犬は死んだ樺太犬を食べて生き延びたという説がある。しかし、昭和基地に置き去りになった樺太犬の様子から、共食いの形跡は確認されていない。
■樺太犬タロ・ジロ実験
第4次越冬隊が空腹状態になった樺太犬タロ・ジロを放して鼓動を観察したところ、タロ・ジロはアザラシの糞を食べた。
また、タロ・ジロが協力してペンギンやアザラシを襲った様子が確認されているが、襲ったペンギンやアザラシを食べるところは目撃されていない。
■樺太犬タロジロの謎
第3次越冬隊と越冬を開始してからしばらくの間、樺太犬タロ・ジロは越冬隊が与えた餌を食べなかった。また、樺太犬タロ・ジロは魚を食べなくなっていた。ペンギンの肉も食べなくなっていた。
■ソ連隊が樺太犬タロ・ジロに餌を与えていた説
1958年(昭和33年)から1959年にかけて、ソ連隊の飛行機が給油のために無人の昭和基地に立ち寄ったさい、大きな黒い犬2頭を発見し、樺太犬に餌を与えていた。
ソ連の説はかなり有力である。ソ連隊が樺太犬タロ・ジロに餌を与えていた話しは「樺太犬タロ・ジロはソ連(ロシア)に助けられていた」をご覧ください。
■フランス隊が保護していた説(都市伝説)
第2次南極観測隊が樺太犬タロ・ジロを置き去りにしたことは、世界中で大きく報じられていた。フランス隊が昭和基地上空を通ったさい、昭和基地で樺太犬タロ・ジロを発見したため、フランスの基地で保護していた。
フランスの樺太犬を保護していた説については、「フランス隊が樺太犬タロ・ジロを保護していた」をご覧ください。
■樺太犬タロ・ジロは死んでいた説(黒幕の陰謀説)
樺太犬タロ・ジロは本当は死んでいた。しかし、南極観測事業の継続するため、話題が必用になった。だから、タロ・ジロに似た樺太犬2頭を昭和基地に放った。
樺太犬タロ・ジロは死んでいた件については「樺太犬タロ・ジロは死んでいた」をご覧ください。

■60年目の真実説

「60年目の真相」は、2018年に1次越冬隊の犬係だった北村泰一が、再考察をした説である(フジテレビ番組で紹介していた)。
要約すると、首輪から抜けた樺太犬のリキがタロとジロの面倒を見ており、100km離れた鯨の死骸や、調査ルートの途中に食料を保管していたデポの食料を食べていたと言う説である。
「60年目の真相」説によると、タロ・ジロ・リキは100km離れた鯨の死骸やデポで食料を食べた後、昭和基地に戻っていた。
しかし、そもそも100kmも離れた場所まで食料を食べに行かなくても、昭和基地に十分な食料が残っており、昭和基地の食料は手つかずのままである。
しかも、デポを調査すれば、食料が減っていたかどうか、判明しているはずなので、「60年目の真相」説には疑問が残る。
■樺太犬タロ・ジロが生き延びた方法の結論
樺太犬タロ・ジロが生き延びた方法には諸説あるが、南極に残された樺太犬タロ・ジロは、アザラシの糞を食べて生き延びた可能性が非常に大きい。
ただ、アザラシの糞だけで、必用なカロリーを摂取できるかは疑問であり、補助的にアザラシやペンギンも食べていたと思われる。
ソ連の越冬隊が樺太犬に餌を与えていたことは、かなり信憑性のある話しだが、それを確認する方法は無い。

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コメント欄

たろとじろはしんでいたってほんとうですか。びっくりしました。

  • 投稿者-
  • にぶんひかる

タロとジロが死んでいたことにびっくりしました
 
教えてくれてありがと

  • 投稿者-
  • あいうえお

そういう説があるだけだからww

  • 投稿者-
  • 匿名