ドラマ「南極大陸」と実話「南極物語」の比較のまとめ後編
ドラマ「南極大陸」と実話「南極物語」の比較のまとめ後編です。第6話から第10話までのまとめをこのページに追加していきます。
ドラマ「南極大陸」の第1話から第5話の比較については「ドラマ『南極大陸』と実話『南極物語』の比較のまとめ前編」をご覧ください。
--ドラマ「南極大陸」の第6話--
■ドラマ:木村拓哉 が、「僕たちが歯を食いしばって生き延びた1年間は、第2次・第3次越冬隊に引き継がれて、必ず、日本の国際社会復帰の足がかりに、日本の力になってくれると信じています」とスピーチする。
実話:南極観測事業は2年で終了する予定なので、第3次越冬隊という概念は無い。
■ドラマ:鮫島直人(寺島進)と内海典章(緒形直人)の2人が雪上車で救出に向かう。
実話:遭難していない。
■ドラマ:コンパスが狂う。
実話:犬ぞり旅行中にコンパスが20度から30度狂う。原因は調査できなかった。
■ドラマ:通路にトイレがあり、排泄のためにみんなが並ぶ。
実話:トイレは昭和基地の主屋棟から10メートル離れた場所にあった。うんこは直ぐに凍るので臭くなかった。中野征紀と佐伯富男の2人はブリザードの日でも、トイレは使わず、野糞をしていた。
■ドラマ:樺太犬テツもベックも、倉持岳志(木村拓哉)が犬ぞり旅行から帰って来た日に死んだ。
実話:樺太犬テツもベックも、犬係の北村泰一が犬ぞり旅行から帰って来た日に死んだ。北村泰一は、樺太犬も人間と同じように感情や意志がある、と信じるようになった。
■ドラマ:比布のクマは、鎖がちぎれて、どこかへ逃げていった。
実話:カエル島調査から帰って来た犬ぞり隊は、昭和基地の10メートル手前で、迎えに来た雪上車と会合したため、樺太犬15頭を放して、雪上車に乗り込む。しかし、比布のクマは昭和基地に帰ってこなかった。
比布のクマは、メス犬シロ子に相手にされなかったため、失恋して失踪したとされている。
■ドラマ:シロ子が8匹の子犬を産む。
実話:シロ子が子犬10匹を出産するが、うち2匹は死産だった。
■ドラマ:南極観測船「宗谷」は往路で氷に閉じ込められて身動きが取れなくなり、氷と共に流される。
実話:だいたい実話。詳しくは「南極観測船「宗谷」とバートンアイランド号」をご覧ください。
■ドラマ:第2次南極観測船「宗谷」輸送計画で甲論乙駁の議論となる。
実話:議論になったことは実話。ただし、「観測機材の方が大事だ」などと言っているとが違う。
■ドラマ:南極観測船「宗谷」が左舷のスクリューを破損する。
実話:南極観測船「宗谷」は氷から自力脱出したさい、左舷のプロペラ1枚4分の3を折る。
■ドラマ:第2次越冬隊の隊長は岩城昌隆(宮沢和史)。
実話:第2次越冬隊の隊長は村山雅美。村山雅美はユーモアも人望もある人で、第1次南極観測隊にも参加している。人物像は全く違う。簡単な経歴は「岩城昌隆(宮沢和史)のモデルは村山雅美」をご覧ください。
■ドラマ:白崎優(柴田恭兵)が外国船への救助を提案し、岩城昌隆(宮沢和史)が反対する。
船長の松本満次がバートンらイランド号へ救助を要請し、永田武は救助を知らなかった、とされている。
■ドラマ:白崎優(柴田恭兵)が無線で昭和基地に「全員収容」を通達する。
実話:永田武が無線で昭和基地に「全員収容」を通達する。
■ドラマ:第1次越冬隊が「全員収容」に不満を唱える。氷室晴彦(堺雅人)が話をするために1人で宗谷へ向かう。
実話:第1次越冬隊が「全員収容」に不満を唱える。宗谷側の情報をしるため、立見辰雄を宗谷の偵察に送る。
■ドラマ:倉持岳志(木村拓哉)がシロ子と子犬たちを連れて行くことを決める。
実話:菊池徹が「子犬を連れて帰ろう」と提案。第2次越冬隊の隊長・村山雅美から「犬ぞりは直ぐに使いたい」と要請されていたが、「子犬は犬ぞりに関係無い」として、第1次越冬隊は子犬を連れて宗谷に引き揚げる。
シロ子は操縦士の森松秀雄が機転を利かせて、宗谷へ連れ帰った。詳しくは「南極物語-森松秀雄の奇跡」をご覧ください。
■ドラマ:倉持岳志(木村拓哉)が樺太犬の首輪を絞める。
実話:首輪抜けが得意な樺太犬が居た。第1次越冬隊の犬係でも、逃げた樺太犬を捕まえるのは大変だったため、第2次越冬隊のために首輪を絞めた。
■ドラマ:海氷の状態の悪化により、バートンアイランド号が離岸を通告する。
実話:海氷の状態の悪化により、バートンアイランド号が離岸を通告して、離岸の準備を始める。通達は、事実上の命令だった。
--ドラマ「南極物語」第7話との比較--
■ドラマ:南極観測船「宗谷」は、バートンアイランド号から離岸通告を受けて外洋に脱出する。
実話:宗谷はバートンアイランド号とともに外洋へ脱出する。宗谷は単独は脱出できる状態ではなく、バートンアイランド号の通告は事実上の命令だった。
■ドラマ:南極観測船「宗谷」はスクリューを破損していた。
実話:バートンアイランド号が救出に来る前のこと。宗谷は自力で氷から脱出しようとしたとき、左舷スクリュー1枚の4分3を根本から折り、性能の2割から3割を失った。
■ドラマ:外洋に脱出したバートンアイランド号は、次の救助に向けて立ち去る。
実話:バートンアイランド号は外洋に留まり、宗谷を救援する。ただし、バートンアイランド号は「宗谷が沈没しても、救助する義務は負わない」という条件を付けていた。
■ドラマ:宗谷は外洋からセスナ機による空輸を試みる。
実話:宗谷は外洋から小型飛行機(ビーバー機)「昭和号」で輸送を試みる。第2次越冬隊は度重なる縮小にり7名となっていた。2日も晴れが続けば、越冬隊が成立する状態だった。
■ドラマ:樺太犬を置き去りにする事が大きく報じられる。
実話:第2次南極観測隊には、朝日新聞の疋田桂一郎と、共同通信の吉田基二の計2名が報道担当として加わっており、日本では樺太犬の置き去りが大きく報じられていた。
■ドラマ:越冬隊員の自宅に「犬殺し」のビラが貼られる。樺太犬に関する電報が多数寄せられる。
実話:ビラは不明だが、越冬隊員の自宅には脅迫文や脅迫電話などがあり、警察が自宅周辺を警備する騒動となっていた。樺太犬二関する電報も多数寄せられた。
■ドラマ:倉持岳志(木村拓哉)が樺太犬を毒殺するために、「セスナを飛ばせ」と訴える。
実話:第1次越冬隊の一部は昭和基地に残留することを希望していたが、文部省が認めなかった。その後、第1次越冬隊が宗谷に収容される。
バートンアイランド号から離岸勧告が来た後に、犬係の菊池徹や北村泰一が、「飢え死にするくらいなら毒で殺す。着地できないのであれば撃ち殺す」と言って小型飛行機(ビーバー機)「昭和号」を飛ばすように訴えた。
■ドラマ:予想以上に燃料の消耗が激しく、南極観測船「宗谷」や外洋に1日しか停泊できない。
実話:外洋に脱出したのが1958年2月17日で、同年2月24日正午に第2次越冬隊の成立を断念する。
飲料水や燃料の不足などの理由もあったが、宗谷はボロボロの状態になったいた。船長の松本満次が総合的にみて「船の安全を保証できない」と判断し、日本の南極地域観測統合推進本部が2月22日に、期限を2月24日に指定した。
■ドラマ:リキの飼い主・古舘遥香(芦田愛菜)が行方不明になるが、リキの犬小屋で寝ていた。
実話:昭和基地の近くで首輪を抜け出した樺太犬リキとみられる樺太犬1頭の死体が見つかる。古舘遥香(芦田愛菜)は樺太犬リキの伏線と思われる。
--ドラマ「南極大陸」第8話と実話の比較--
■ドラマ:帝都新聞が樺太犬の置き去りを報じる
実話:第2次南極観測隊には、共同通信の吉田基二と朝日新聞の疋田桂一郎の2名が参加しており、南極観測船「宗谷」の様子を日本国内へ送信したいたので、日本では樺太犬の置き去り事件は大々的に報じられた。
■ドラマ:第3次南極観測隊の見送りを含めた検討が始まる。
実話:南極観測を含めた国際共同観測は当初、2年の計画だったが、アメリカの学者を中心に観測延長の声があがり、延長が決定。これに伴い、日本でも延長について協議が始まり、南極観測の2年延長が決定する。
■ドラマ:第1次越冬隊はケープタウンで南極観測船「宗谷」を下り、空路で帰国する。
実話:第1次越冬隊はケープタウンで南極観測船「宗谷」を下る。休暇を貰って旅行を楽しんでから、空路で日本へ帰国する。
■ドラマ:倉持岳志(木村拓哉)が北海道へ行き、樺太犬の飼い主に謝罪して回る。
実話:樺太犬は購入しているので、第1次越冬隊は謝罪旅行はしていない。
■ドラマ:昭和基地に残された樺太犬のうち、樺太犬タロ・ジロ・リキ・デリー・アンコ・シロ・ジャック・風連のクマの計8頭が首輪を抜け出す。
実話:上の8頭が首輪を抜け出して自由に行動する。このうち、生存が確認でできたのは樺太犬タロ・ジロだった。
■ドラマ:風連のクマが首輪に着いた鎖を放り込み、氷の割れ目(クレパス)に落ちた樺太犬リキを引っ張り上げる。
実話:昭和基地は無人になったので、樺太犬の行動は誰にも分からない。
▼ドラマ「南極大陸」最終回と実話の比較▼
■ドラマ:倉持岳志(木村拓哉)が偵察としてヘリの第1便で飛び、樺太犬タロ・ジロと再会する。
実話:第1次越冬隊で機械係を担当していた大塚正雄ほか6名がヘリの第1便で昭和基地に向かい、ヘリコプターから大塚正雄が樺太犬2頭を確認する。
樺太犬タロ・ジロとの再会については「北村泰一が樺太犬のタロ・ジロと再会する南極物あらすじ」をご覧ください。
■ドラマ:昭和基地に着いた倉持岳志(木村拓哉)が直ぐに樺太犬を掘り返す。
実話:第2次南極観測隊が失敗しており、第3次南極観測隊に失敗は許されなかった。第3次隊のメーンは樺太犬ではなく、越冬隊の成立だった。北村泰一が樺太犬を掘り返したのは、越冬中の2月下旬だった。
■ドラマ:倉持岳志(木村拓哉)が樺太犬リキの死体を発見する。
実話:第1次越冬隊の気象担当だった村越望が、第9次越冬隊と参加していたとき、樺太犬1頭の死骸を発見した。このことは報道されず、犬に関する資料は残っていない。
第1次越冬隊の犬係・北村泰一がその後、当時の関係者から話を聞いたが、「犬の毛は白かった」という情報しか得られなかった。北村泰一は、白毛という特徴から、見つかった遺体を樺太犬リキと推定した。
■ドラマ:倉持岳志(木村拓哉)が「犬はみんな綺麗なまんまだった」と報告した。
実話:当時の報道で「犬が共食いしている」という情報が流れたが、鎖につながれたまま見つかった樺太犬8頭の死体に損傷はなく、共食いした形跡は無かった。
■ドラマ:最終回の最後に謎の老人が写る。
実話:分からない。おそらく、最後の謎の老人の正体は、原作者(原案者)の北村泰一だと思う。ただし、北村泰一本人かどうかは分からない。
あの場所は、樺太犬を水葬した場所で、原作者の北村泰一は「今でもあの場所を忘れていない」とコメントしている。
実話「南極物語」のあらすじとネタバレは、「実話『南極物語』のあらすじとネタバレ」をご覧ください。
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コメント欄
以下の部分が少々伝聞と違います。
「■ドラマ:白崎優(柴田恭兵)が外国船への救助を提案し、岩城昌隆(宮沢和史)が反対する。
船長の松本満次がバートンらイランド号へ救助を要請し、永田武は救助を知らなかった、とされている。」
実際には、救助要請は日本の当時の文部省内におかれた南極地域観測統合本部(少し違うかもしれませんが)が、要請決定をし日本政府として外交ルートを通じ担当諸国に要請を正式に出した。
宗谷の松本満次船長は海上保安庁職員として、この本部の決定をギリギリまで延期依頼をしたが、最後は聞き入れられず国内で決定、要請が出された。
船の中は、全権が船長にあるので、観測隊長の永田氏が(建前上は)知るのが後になったことになっているが、これはあまり名誉ではない要請を隊長が決定したことにしたくない向きが作った話だ。無論、隊長も事前にしっており、むしろ早い援助要請に乗り気だった、と伝えられている。
情報ありがとうございます。船長と隊長とが対立していたと聞いていたのですが、そういう事情があったのですか。参考になりました。