ドラマ「南極大陸」がつまらない理由
ドラマ「南極大陸」と実話「南極物語」の比較シリーズです。今回はドラマ「南極大陸」第6話の「54年前の真相」の真実をネタバレです。
このページは『実話「南極物語」の「54年前の真相」のネタバレ』からの続きです。
さて、「54年前の真相」について話しをすすめる。氷に閉じ込められて身動きの取れなくなった第2次南極観測船「宗谷」は、アメリカの砕氷艦「バートンアイランド号」に救助を求める。
実話では、バートンアイランド号の救助について、第2次南極地域観測隊の隊長・永田武と船長・松本満次の意見が対立していた。
南極観測隊は「日本単独の力で南極観測事業を行う」という信念を持っていたので、外国船に救助を求めることを嫌っていたからだ。
実は、第2次南極観測船「宗谷」は第1次よりも3週間ほど早く日本を出発している。
これは第1次の復路で、氷に閉じ込められたとき、ソ連(ロシア)の砕氷艦「オビ号」に助けてもらったためである。外国船に救助を頼まなくても良いように、早く出発したのである。
さて、南極観測隊は文部省の指揮下にあったが、南極観測船「宗谷」の船長や乗組員は海上保安庁の職員で、海上保安庁の指揮下にあった。つまり、南極観測船「宗谷」には、2つの指揮系統が存在していたのである。
海上で起きたことについての責任は、船長が全責任を負うため、南極観測船「宗谷」の指揮権は船長の松本満次にあった。船上では、南極観測隊は船に乗ったお客さん、という扱いになる。
これは船の世界の常識であり、海上保安庁の法律でも、そのように決まっていた。
南極観測事業は、文部省に設置した「南極地域観測統合推進本部」が担当しており、隊長の永田武は南極地域観測統合推進本部と通信するのだが、船長の松本満次は海上保安庁と独自に通信していた。
隊長の永田武は松本満次の行為を「合法的」とし、海上保安庁との連絡は南極地域観測統合推進本部に任せていた。
こういう経緯から、隊長の永田武は、バートンアイランド号が南極観測船「宗谷」の救助に来る事を知らなかった、とされている。
ドラマ「南極大陸」では、船長の三船頼道(小林隆)が隊長の白崎優(柴田恭兵)に「岩城にはまだ報告しておりませんが、ここから少し離れた所にアメリカのバートンアイランド号が停泊していることが分かりました」と報告している。
船長の三船頼道(小林隆)の「岩城にはまだ報告しておりませんが」という台詞には、もの凄い深い意味があるのだ。
このバートンアイランド号に救助を頼む経緯が、ドラマ「南極大陸」の「54年前の真相」なのだと思う。宗谷内で口論する内容は、主張や反対する人物が違うだけで、ほぼ事実と思って良いだろう。
船員グループは「船が大事だ」と言うし、学者グループは「機材を運ぶ」と言う。そして、山屋グループは「俺1人でも南極に残る」と言い出す。
さしずめ、「兎にも角にも樺太犬を助けろ」と考える私は「愛犬家グループ」である。
「モノイワヌ・タイインヲ・ゼッタイニ・コロスナ・バンナンヲ・ハイシ・ツレカエレ(もの言わぬ隊員を殺すな。万難を排し、連れ帰れ)」な、どと電文を送った人も、愛犬家グループだろう。
それぞれが、それぞれの立場の主張しかしないので、意見が対立する。愛犬家グループは、船の心配や観測機材の心配することはない。そう考えれば、「54年前の真相」の察しはつくだろう。
また、ドラマ「南極大陸」の第6話で、第1次越冬隊員は、南極観測船がバートンアイランド号に救出されことを知らされたとき、落胆していた。
この落胆の裏には、「日本単独で南極観測事業を成し遂げる」という強い信念があったからである。
ドラマ「南極大陸」を観て、このような実話を何人が理解できるのかは不明だが、ドラマの部分部分は良くできている。フィクション部分は別として、実話が反映されている細かな部分は非常に面白い。
ドラマ「南極大陸」がつまらないと思う人は、実話を知らないからだと思う。つまらないのではなく、分からないだけだと思う。ドラマ「南極大陸」は実話を知っていれば、3倍は面白くなる。
ドラマ「南極大陸」を見る場合は、最低限、ドラマの原作(今回は原案)の「南極越冬隊 タロジロの真実」は読んでおくべきだと思う。
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