運命の人・弓成亮太(西山太吉)とエルズバーグ

TBSドラマや山崎豊子の小説「運命の人」の登場する弓成亮太(モデルは西山太吉)とエルズバーグの関係のネタバレです。

ドラマ・小説「運命の人」の実話のあらすじは「外務省機密漏洩事件(西山事件)のあらすじとネタバレ」をご覧ください。

小説「運命の人」は、1972年に実際に起きた事件「外務省機密漏洩事件(西山事件)」をモデルとした小説で、外務省機密漏洩事件(西山事件)で西山太吉が逮捕されたが1972年4月4日である。

日本で外務省機密漏洩事件(西山事件)が発生していたころ、アメリカではペンタゴン・ペーパーズ事件が発生していた。このペンタゴン・ペーパーズ事件を起こしたのがダニエル・エルズバーグである。

ペンタゴン・ペーパーズとは、ベトナム戦争に関する約7000枚の機密文書の総称で、ペンタゴン・ペーパーズ事件とは、ダニエル・エルズバーグによる機密漏洩事件である。

歴代のアメリカ大統領は国民を欺き、泥沼化するベトナム戦争にアメリカを引きずり込んだ。機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」には、そのことが記録されていた。

そのペンタゴン・ペーパーズの制作に関わったダニエル・エルズバーグは、政府の欺瞞を暴くため、投獄を覚悟して、1971年3月にニューヨークタイムズの記者へペンタゴン・ペーパーズのコピーを漏洩した。

そして、1971年6月13日、ニューヨークタイムズがペンタゴン・ペーパーズを報道。アメリカ政府は記事の差し止めを求める一方、ペンタゴン・ペーパーズをスパイ容疑で指名手配して逮捕させた。

逮捕されたダニエル・エルズバーグは逃亡中に、反戦派のマイク・グラベル上院議員にペンタゴン・ペーパーズを渡し、議会で読み上げさせることで、ペンタゴン・ペーパーズの内容を議事録に残すことに成功した。

アメリカ最高裁判所は、ニューヨークタイムズなどに記事の掲載を認め、「表現の自由」を保障する見解を示した。

一方、ダニエル・エルズバーグは起訴されるが、不法侵入事件「ウォーターゲート事件」の実行犯だったニクソン大統領の一派がダニエル・エルズバーグの精神科医のオフィスに侵入していたことが発覚する。

政府の不法行為の発覚により、連邦地裁は審理無効とし、訴追を棄却した。これが、ペンタゴン・ペーパーズ事件のあらすじである。

一方、毎日新聞の西山太吉は、外務省の安川壮審議官つきの女性事務官・蓮見喜久子と、東京都新宿区にある飲食店「車」で飲食した後、バー「スカーレット」で口説き、連れ込み旅館で肉体関係を持った。

その後、西山太吉は数度にわたり、ホテル山王や秋元政策研究所で、蓮見喜久子から外務省の機密文書を受け取り、機密文書を元に記事を書いていた。

西山太吉は機密文書のうち、沖縄密約に関する機密文書を社会党の横路孝弘に渡し、与党を糾弾する横路孝弘に荷担した。

しかし、横路孝弘が情報提供者を秘匿する措置を執らなかったため、直ぐに漏洩元が判明し、1972年4月4日に蓮見喜久子と西山太吉の2人が逮捕された。

蓮見喜久子は1審で有罪判決を受け、控訴せずに刑が確定。西山太吉は1審で無罪を勝ち取ったが、2審で有罪判決を受けて上告。最高裁は上告を棄却して、有罪判決が確定した。

ダニエル・エルズバーグも西山太吉も共に国家の欺瞞を明かすため、国家機密を漏洩した事件であるが、西山太吉は女性事務官の蓮見喜久子と肉体関係を持っていたため、ダニエル・エルズバーグとは異なる運命を辿った。

西山太吉はダニエル・エルズバーグには成れなかった。その運命を分けたのが、女性事務官の蓮見喜久子との肉体関係だった。

山崎豊子が小説のタイトルを「運命の人」としたのは、そういう意味も含まれているのだと思う。

ただ、私は、西山太吉はダニエル・エルズバーグではなく、ベアリングス銀行事件のニック・リーソンと同じだと思った。

ニック・リーソンとは、イギリスの投資銀行「ベアリングス銀行」を倒産させた男である。実は毎日新聞は外務省機密漏洩事件(西山事件)の影響で倒産したと言われているのだ。

西山事件で毎日新聞を倒産させた男」へ続く。

コメントを投稿する

コメントは正常に投稿されていますが、反映に時間がかかります。