7人の敵がいる。されど8人の仲間有り

昼ドラマ「七人の敵がいる」の原作となる、加納朋子の小説「七人の敵がいる」のあらすじとネタバレを含んだネタバレ読書感想文の後編(最終回)です。

このページはネタバレ感想文の3ページ目です。1ページ目の「「七人の敵がいる」のあらすじとネタバレ」からご覧ください。

また、このページには原作小説「7人の敵がいる」のネタバレや結末が含まれているので、ネタバレや結末を知りたく無い人は、閲覧にご注意ください。

■7人の敵がいる。されど8人の仲間有り
加納朋子の小説「7人の敵がいる」というタイトルには、「されど8人の仲間有り」という下の句が隠されている。

ラスボスだったPTA会長の上条圭子が最後に、「7人の敵がいる」には下の句があり、上の句と下の句を続けると、「7人の敵がいる。されど8人の仲間有り」になる事を教えてくれた。

「7人の敵がいる」の語源は、「男は敷居を跨げ(またげ)ば7人の敵がある」という諺だろう。

おそらく、諺の「男は敷居を跨げば7人の敵がある」に、下の句はない。私の持っている辞書に、下の句は登場していないので、PTA会長の上条が教えてくれる下の句「されど8人の仲間有り」は作者・加納朋子のオリジナルだと思う。

「7人の敵がいる。されど8人の仲間有り」という言葉は、小説「7人の敵がいる」を上手く表現していると思う。多くの敵が出来ても、敵よりも多くの味方が出来る。

下の句と言えば、「情けは人の為ならず」という諺にも下の句がある。下の句を続けると、「情けは人の為ならず、巡り巡って我が己が身の為」となる。

「情けは人の為ならず」は、「他人に親切にすると、いずれは自分に返ってくるので、自分のために他人に親切にする」という意味である。

■岬美咲と山田陽子
夫の山田信介が勝手に自治会の会長を引き受け、全て妻の山田陽子に仕事を丸投げしたため、山田陽子は自治会の会長の仕事を背負わされてしまう。

しかも、夫の山田信介は総務の女性・木下の仕事まで引き受けていたため、山田陽子は激怒する。

山田陽子は総務の仕事を木下に返そうとするのだが、木下はパソコンを持っておらず「出来ない」と言い、泣きだしてしまう。そこで、助け船を出したのが岬美咲だった。

岬は、会長と総務の仕事を山田陽子が引き受け、山田陽子が仕事で出席できない自治会長の集まりなどを木下に出席してもらう、というアイデアで山田陽子と木下の2人を弱点を補い合わさせた。

この時の岬美咲の考え方が山田陽子に大きく影響したのだろう。結末で山田陽子は得意な人が特異なことを担当するPTAの会社化を提案している。

■PTAは楽しいらしい。
小説「7人の敵がいる」の山田陽子はPTAで大変な思いをしているようだが、私の地元の田舎なのでPTAは楽しいらしい。

私の友達によると、私の地元のPTAには男性も多く出席しており、PTAは不倫相手を探す場になっているらしい。友達もPTAを隠れ蓑にして、それなりに楽しんでいるそうだ。

さて、田舎のPTAと都会のPTAとでは、事情が違うのだろうか。田舎のPTA会長と言えば、ちょっとした地元の権力者である。私の地元では、何年も同じ人がPTA会長を続けている。

運動場や体育館の使用許可など、PTA会長は様々な権限を持っており、PTA会長の知り合いでなければ体育館などは貸して貰えない。噂によると、それなりの接待が必要らしい。

私の友達が学校の体育館を借りるため、PTA会長と交渉したことがあるのだが、結局は貸して貰えず、他の学校で体育館を借りていた。他の学校で体育館を借りられたと言うことは、私の地元だけが特別なのだろうか。

そう考えると、学校の購買部(売店)の納入業者を決定する権利を有しているのは誰だろうか、などという疑問も生まれる。

■半径3メートルの日常
小説「7人の敵がいる」に登場するエピソードは、主人公・山田陽子の半径3メートルの日常だ。いずれのエピソードも手が届きそうなものばかりで、親近感を覚える。

私は、主人公・山田陽子の苦労を通じて、「保護者の負担になっているのであれば、PTAを廃止した方が良いのではないか」と思うようになっていた。

少子化問題というのは、生みやすい環境や育てやすい環境が必要である。PTAや自治会も子育てに大きな弊害になっているのであれば、PTAや自治会などは廃止して、プロが仕事として行えばいい。

そうすれば、新しい雇用も生まれ、お金が循環して景気も良くなるのではないか。

そう考えていると、結末(エピローグ)にドンピシャリの答えが待っていた。山田陽子が用意した答えは、主婦の五十嵐を代表にしてPTAをビジネス化することだった。

私が考えと同じ答えが結末に待っていたので、小説「7人の敵がいる」は後味が良かった。そして、「1本獲られた」と思った。

おそらく、私が「PTAを廃止して、プロが行えばよい」と思うようになったのは、作者の加納朋子に心理を誘導されたからだと思う。だから、読み終えて「1本獲られた」と思った。

小説「7人の敵がいる」が推理小説だったならば、私の犯人予想は完全に外れていたに違いない。

加納朋子は本格的な推理小説も書いているようだ。小説「7人の敵がいる」を読んで、加納朋子の推理小説が読みたくなった。

ただ、PTAを会社化するエピローグは蛇足でもあった。山田陽子は先手、先手を打って理詰めで物事を進めていたにもかかわらず、PTAを会社化する計画は曖昧模糊としていた。

最後のエピローグは、PTAをビジネスで成功させることが出来るという、もっと具体的な青写真を示して欲しかった。

PTAの改革ですら困難なのでは、政府や国家の改革は不可能なのではないか。2012年2月現在、大阪府では橋元徹市長が「維新の会」を立ち上げ、政府を巻き込んでの組織改革に乗り出している。

主人公の山田陽子と橋元徹市長が重なって見えた。橋元徹市長の改革が成功するのか失敗するのか、大阪府政の改革を見守りたい。

■小説「7人の敵がいる」は、お薦め
PTAや自治会がボランティアで大変だということが分るが、究極のボランティアは主婦だということがよく分る小説だった。

小説「7人の敵がいる」を夫や子供の枕元に置いておけば、1週間くらいは夫や子供が優しく接してくれるかもしれない。小説「7人の敵がいる」は、そう思える1冊だった。

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