原作「鍵のかかった部屋」のネタバレ読書感想文
嵐・大野智のドラマ「鍵のかかった部屋」の原作となる、貴志祐介の原作小説「鍵のかかった部屋」のあらすじとネタバレを含んだ読書感想文の後編です。
このページは『原作小説「鍵のかかった部屋」のあらすじとネタバレ』からの続きです。
このページは原作小説「鍵のかかった部屋」のあらすじとネタバレが含まれています。あらすじやネタバレを知りたくない人は閲覧にご注意ください。
■第3話「歪んだだ箱」のあらすじ
教師・杉崎俊二が結婚生活を送る予定の新居が地震で傾く。明らかな欠陥住宅だった。ある日、新居となる欠陥住宅の中で、新居を建築した新愛工務店の社長・竹本袈裟男が死んでいた。
新居は地震で傾いていたため、ドア枠が歪んでおり、ドアが綺麗に閉まらなくなっていた。内側からたたき込めば閉まるが、外側からドアを閉めることは不可能な状態だった。
内側からしか閉まらないドアが完全に閉まっていることから、新居は密室となっていた。
■第3話「歪んだだ箱」の感想とネタバレ
犯人は新居に住む予定の杉崎俊二だった。杉崎俊二は玄関のドアを内側から閉め、歪んで開かなくなっていた小窓をジャッキで戻して、小窓を開けて脱出した。
そして、部屋のドアは、壁に開いているクーラー用のダクトを通す穴を利用し、家の外からピッチングマシンでテニスボールを投げ込み、テニスボールでドアを内側からたたきつけて、ドアを閉めていた。
さて、「歪んだだ箱」は、「ドアは中からしか閉めることができない。ゆえに家は密室だった」という理屈で密室を作り上げていた。
密室トリックというと、ドアに鍵がかかっているものと思い込んでいたが、こういう視点からも密室ができるのか、と驚かされた。しかし、「歪んだだ箱」は少しトリックが強引だったように思える。
なぜなら、密室トリックに使用するエアコン用の穴が、床から150cmのところに開いているからだ。床から150cmだと低すぎるように思える。
エアコンというと、天井付近に取り付ける物だと思っていたが、低い位置に取り付けるエアコンもあるのだろうか。謎である。
それに、屋外からピッチングマシンを使ってドアを閉めるのだから、室内の床からは150cmの高さでも、地面からは約2mの高さになるのではないか、と思った(欠陥住宅なので、穴の位地も欠陥なのかもしれないが)。
携帯型のピッチングマシンでも、高さ2メートルの場所で操作するのは難しいのではないかと思った。
さて、「歪んだだ箱」で感心したのは、「密室事件の犯人は、密室のまま警察に事件現場を引き渡したい」という理論だった。
確かに、そう言われてみれば、そうだ。犯人は現場を密室にすることにより、殺した相手を事故死や自殺に見せようとしている。
苦労して密室を作り上げたのに、窓を割ったりしたら、密室で無くなってしまう。だから、密室事件の犯人は、なるべく事件現場を無傷のまま警察に引き渡したいという心理が働くようだ。
小説「鍵のかかった部屋」は密室トリック以外にも、犯人の心理につても考えながら読むと面白いかもしれない。
■第4話「密室劇場」のあらすじ
劇団「ES&B(土性骨)」の公演中に、楽屋で劇団員のロベルト十蘭が何者かに殺害された。
女性弁護士の青砥純子(あおと・じゅんこ)と防犯コンサルタントの榎本径の2人は、劇団「ES&B(土性骨)」の劇を見に来ており、異変に気づいて犯人捜しを始める。
楽屋の出入口は2つ。1つは売店の前に通じており、売店には団員のカルロス金玉(名前です)が居た。もう1つは舞台に通じており、舞台では劇団「ES&B(土性骨)」が劇をしていた。
どちらの出口も気づかれずに出入りすることは不可能で、楽屋は密室となっていた。犯人はどこから脱出したのか…。
■第4話「密室劇場」のネタバレ感想文。
楽屋でロベルト十蘭を殺害した犯人は、劇団員の富増半蔵だった。密室のトリックは、富増半蔵が舞台の背景として置いていたサボテン(切り出し)の陰に隠れ、少しずつ動いて、反対方向の舞台袖へと逃げる、というものだった。
さて、密室劇場に登場する劇団「ES&B(土性骨)」は以前にも殺人事件で榎本径らにお世話になったようだ。私は、榎本径シリーズを「鍵のかかった部屋」から読み始めたので、事情が全く分からなかった。
劇団の脚本家は「左栗痴子(ひだりくりちこ)」なのだが、その後に「栗痴子」という名前が登場する。これは同一人物なのだろうか。「左」が名字なのだろうか。よく分からなかった。
途中で、大道具が「大場」で小道具が「小場」という名前ギャグが登場するしたので、右栗痴子でも登場するのかと予想したのだが、右栗痴子は登場しなかった。
劇団「ES&B(土性骨)」が演じる舞台のシーン(ギャグ)は、意味が分からず、読むのが嫌になった。そのうえ、カルロス金玉という名前の劇団員が登場したので、読むのを止めたくなった。
密室劇場は、ただ「カルロス金玉」という芸人を登場させたかっただけなのではないか、と思う。
コントを活字にするのはかなり無理があるので、「密室劇場」は小説では面白くなかったが、ドラマなら面白くなる可能性はある。ドラマ「鍵のかかった部屋」に期待したい。
■原作小説「鍵のかかった部屋」の感想
嵐の大野智が主演するドラマ「鍵のかかった部屋」が始まるため、原作となる貴志祐介の小説「鍵のかかった部屋」を読んだ。
貴志祐介の原作小説「鍵のかかった部屋」には、「佇む男」「鍵のかかった部屋」「歪んだ箱」「密室劇場」の4話が収録されている。いずれも密室トリックを使った短編小説である。
この小説「鍵のかかった部屋」の短編4話を読んで共通した感想は、「このトリックを使えば、本当に密室が出来るのだろうか」である。
たとえば、第2話「鍵のかかった部屋」では、ボイル・シャルルの法則を利用し、室内の温度を上げて空気を膨張させ、内側からドアを押すトリックがあった。
未開封のポテトチップスを富士山の頂上へ持って行くと、袋の内外に気圧差が発生し、ポテトチップスはパンパンに膨らむ。
これと同じで、気圧差があれば、ドアを押すことは可能だと思うが、最近の部屋は全く空気が漏れないほど気密性があるのだろうか、と疑問に思った。
ドラマでこの密室トリックが映像になるのだから、どうせなら、CGを使わずに、本当に小説「鍵のかかった部屋」のトリックで実際に密室が完成するのかに挑戦して欲しい。
さて、小説「鍵のかかった部屋」は面白かったけれど、読後感が期待していたものとは違ったので残念だった。密室犯罪・完全犯罪系の小説を読んだ時に得られるスッキリ感が欲しかった。
第4話「密室劇場」のギャグ小説は、かなり好き嫌いが分かれると思う。私は第4話「密室劇場」のギャグ小説がつまらなく思えた。
第4話「密室劇場」の分かりに、第2話「鍵のかかった部屋」のような話があれば、全体的な印象も変わっていたと思う。
小説「鍵のかかった部屋」に収録されている4話はいずれも短編なので、小説をそのまま1時間の連続ドラマにするのは難しい気がする。
しかし、フジテレビは小説「謎解きはディナーのあとで」の短編を上手く連続ドラマにしていたので、ドラマ「鍵のかかった部屋」にも期待したい。
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