よしながふみの原作漫画「大奥」の読書感想文
TBSの歴史ドラマ「大奥-誕生(有功・家光篇)」の原作となる「よしながふみ」の漫画「大奥」のあらすじとネタバレを含んだ読書感想文の後篇です。
このページは「よしながふみ漫画「大奥」のあらすじとネタバレ感想文中編」からの続きです。
このページには、よしながふみの漫画「大奥」のあらすじやネタバレが含まれています。あらすじやネタバレを知りたくない人は、閲覧にご注意ください。
■大奥の感想
ドラマ「大奥-有功・家光編」がはじまるため、原作となる「よしながふみ」の漫画「大奥」を読んだ。
よしながふみの漫画「大奥」は、1巻が6代将軍・徳川吉宗の時代「水野・吉宗編」で、2巻から3代将軍・徳川家光の時代の「有功・家光編」となっている。
ネタバレしておくと、2巻で時代が戻る理由は、女性が男性の名前で家督を継ぐことに疑問を感じていた8代将軍・徳川吉宗が、1巻の終わりに、徳川家の歴史を記録した「没日録(ぼつにちろく)」を読むからである。
8代将軍・徳川吉宗が没日録を読んでいるという設定になっているため、2巻からは時代が遡って3代将軍・徳川家光の時代を描いた「有功・家光編」が始まる。
なお、7巻で8代将軍・徳川吉宗が没日録を読み終え、1巻の終わりとストーリーが繋がっている。
さて、3代将軍・徳川家光の時代に、男子のみに感染する赤面疱瘡(あかづらほうそう)という病気が流行したため、男性の人数が極端に減少した。
3代将軍・徳川家光も赤面疱瘡に感染して死んでしまうが、乳母の春日局が徳川家光の死を隠蔽し、徳川家光の娘に男装させ、女将軍・徳川家光とした。
そして、女将軍・徳川家光の就任に伴い、大奥に男性が集められるようになった。よしながふみの漫画「大奥」は、男女が逆転した大奥での物語である。
単なるボーイズラブ(ホモ)の少女漫画かと思って、よしながふみの漫画「大奥」を読み始めたのだが、意外なことに良く出来た少女漫画だった。
1巻で徳川吉宗が側用人に「暇をとらす」と言って側用人を解雇するシーンがある。「暇」を「ひま」と読む人が多いのだが、漫画「大奥」では正しく「いとま」とルビを振っていた。
また、5巻では「判官びいき」という言葉が出てくる。漢字で書くと「判官贔屓」なのだが、漫画「大奥」では「びいき」はひらがなになっている。
「判官贔屓」を「はんかんびいき」と読む人が多いのだが、正しくは「ほうがんびいき」と読む。漫画「大奥」では「判官」に正しく「ほうがん」とルビを振っていた。
なお、「判官贔屓」とは、兄・源頼朝に滅ぼされた源義経に同情したことが語源となっている。この源義経が「判官(ほうがん)」という役職だったことから、源義経のことを「判官(源判官義経)」とも呼んでいた。だから、「判官贔屓(ほうがんびいき)」と言う。
よしながふみの原作漫画「大奥」は、おおむね正しい言葉を使っていた。多少、誤用と思う箇所もあったが、気にならないレベルだったので、良く出来た漫画だと思った。
あらすじの方は、男女逆転の整合性をとるためのアレンジは加わっているが、おおむね史実や通説に沿った内容となってる。
史実や通説を取り入れるのであれば、男女を逆転せずに、普通に大奥を描いた方が面白いと思うのだが、やはり、ボーイズラブ(ホモ)要素が入らなければ、少女漫画は売れないのだろうか。
さて、よしながふみの原作漫画「大奥」を読んで、江戸時代は平成の日本とよく似ていると思った。江戸時代は戦争が無く、武士が平和ぼけした太平の世で、まるで今の日本のようだ。
太平の世に生まれた5代将軍・徳川綱吉は「生類憐れみの令」を制定し、悪法の制定者として庶民から嫌われた。世が世なら、徳川綱吉も「ルーピー綱吉」と批判されたに違いない。
そして、よしながふみの原作漫画「大奥」を読んで思い出したのが、2012年で問題となっている天皇の女系問題である。
江戸時代は男子が家督を継ぐ決まりになっていたが、男子にだけ感染する病気「赤面疱瘡(あかづらほうそう)」の流行により、男性が減少したため、一時的な措置として、女性が家督を継ぐようになった。
第7巻で女将軍・徳川吉宗は「血統で家を継ぐ点から考えると、男系にはいささか無理があるように思える」「側室なり、妻が産んだ子が、その男の真の子であると、どうして断言できる」「男が働くことはともかく、家の当主は女である方が理にかなっているようにおもわれるぞ」と話している。
おそらく、作者「よしながふみ」が原作漫画「大奥」を通じて主張したかったことは、天皇家の女系問題(女性天皇問題)なのだと思う。
男性が家督を継承する問題については、「妻が産んだ子供が、本当に夫の子供か分からない」という問題は昔から指摘されてきた。
確かに、女性が家督を継承した方が、血統が明確になるため、合理的だ。しかし、古来より、男性が家督を相続してきた。
男性が家督を相続するようになった理由や由来は明確では無いが、その理由は子供の生存率にあると思う。
医学の発達した現在は生まれた来た子供はかなりの確率で成人するが、江戸時代は成人できずに死ぬ子供も多かった。生まれてきて直ぐに死ぬ子供も多かった。さらに時代を遡れば、もっと子供の生存率は下がるだろう。
このため、昔は多くの子供を生む必要があった。より多くの子供を産むためには、女性よりも男性の方が都合が良い。
女性は、漫画「大奥」のように男性をいくら集めても、1年間に1人しか子供を産めない。
しかし、男性は実話「大奥」のように多くの女性を集めれば、1年間に複数人の子供を作ることが出来る。
それに、女性は出産時に死亡するリスクもあるので、男性が家督を相続する方が、都合が良かったのだと思う。
よしながふみの原作漫画「大奥」は、現時点で7巻までしか出ておらず、完結していないため、残念ながら女系の家督継承問題についての結末は分からない。このあたりは、続巻で明らかになるだろうから、楽しみにしたい。
よしながふみの漫画「大奥」の登場人物のモデルは「よしながふみ「大奥」で実在するモデルのまとめ」をご覧ください。
コメント欄
なんか...そういうことじゃないでしょう、と思うような感想。
何様?
>太平の世に生まれた6代将軍・徳川吉宗は「生類憐れみの令」を制定し
生類憐れみの令を出したのは5代将軍綱吉だし、吉宗は8代将軍。6代は家宣。
数字も名前もごちゃごちゃですね。原作でも書かれているし、史実はググればわかることなので、もう少し正確に書かれては。
ご指摘ありがとうございます。誤記があったため、第5代将軍・徳川綱吉に訂正しました。今後は出来るだけ、誤記が無いように心がけます。
>史実や通説を取り入れるのであれば、男女を逆転せずに、普通に大奥を描いた方が面白いと思うのだが、やはり、ボーイズラブ(ホモ)要素が入らなければ、少女漫画は売れないのだろうか。
偏見だと思います……。
確かに、近年ボーイズラブ(ホモ)要素を入れるようになった作品が多くなってきたとは思いますが、少女漫画=ボーイズラブ(ホモ)要素を入れれば売れる、というのはどうかと。
女性でも、ボーイズラブ(ホモ)要素なんて気色悪い! ありえない!! と拒否反応を示す方は多いです。
それに、どのテーマを選び、何と組み合わせるのかは作者の自由ではないでしょうか。
編集部から出る要望を受け入れつつ、自分の描きたいものを完成させ、読者からの支持を得る。
「大奥」がヒットしたのも、その点を実現させたからこそだと私は思います。
要するに、作者の描きたいものを描いているのなら、それでいいじゃないか! というのがこのコメントの結論です。
そこまで普通の大奥が読みたいのなら、こちらの「大奥」を読まないか、あるいは読んでも感想を記事にしなければ良いのでは?