下町ロケット 3-ゴースト-原作の最終回と結末ネタバレ
池井戸潤の下町ロケットシリーズの第3弾「下町ロケット-ゴースト」の原作の最終回と結末ネタバレです。
このページには原作「下町ロケット-ゴースト」の最終回と結末のネタバレが含まれてします。知りたくない人は閲覧にご注意ください。
なお、このページは「下町ロケット 3-ゴースト-原作のあらすじとネタバレ」からの続きです。
■ケーマシナリーからの訴状
ある日、ベンチャー企業「ギアゴースト」は内容証明郵便を受け取る。
送り主はトランスミッション大手「ケーマシナリー」の代理人「田村・大川法律事務所」で、ギアゴーストが製造する自動車用トランスミッション「T2」がケーマシナリーの特許を侵害しているので、製造を中止しろという内容だった。
ギアゴーストの島津裕は事前に特許調査をしており、そのとき、特許に問題は無かったのだが、特許出願は出願から18ヶ月が経過しないと公開されないというシステムのため、事前の特許調査の時にはケーマシナリーの特許は公開されていなかったのだ。
ギアゴーストの社長・伊丹大は、顧問弁護士・末長孝明に相談するが、裁判をしても勝ち目はなさそうだったので、特許使用料の値下げを交渉するため、ケーマシナリー側の弁護士・中川京一と青山賢吾賢吾に会いに行った。
しかし、ケーマシナリー側の弁護士・青山賢吾賢吾は、ギアゴーストの自動車用トランスミッション「T2」は、アイチ自動車に採用されていることから、ライセンス料として15億円を請求し、一切の値下げに応じなかった。
ギアゴーストの社長・伊丹大は、返答に1ヶ月の猶予を貰い、なんとか道を探ろうとするが、ギアゴーストの顧問弁護士・末長孝明はケーマシナリーの目的は急成長しているギアゴーストを潰すことではないかと言った。
15億円を調達する当ては無いギアゴーストの社長・伊丹大は、一晩考えた末、従業員の雇用を守るため、企業からの出資を受け入れ、どこかの傘下に入ることを決意した。
しかし、伊丹大が方々に打診しても、特許問題を抱えるギアゴーストに出資しようという企業は無く、苦し紛れに大森バルブにも出資を要請したが、断られてしまった。
そのようななか、伊丹大が農機具大手「ヤマタニ」の工場長・入間尚人に出資を相談すると、入間尚人は出資を断ったが、佃製作所に相談することを助言した。
伊丹大が中小企業に15億円の出資は無理では無いかと不思議がると、工場長・入間尚人は佃製作所は特許問題で巨額の和解金を勝ち取った超優良企業であることを教えた。
(注釈:佃製作所は第1作「下町ロケット」で、ナカシマ工業との特許侵害訴訟に勝訴し、56億円の和解金を勝ち取っている。)
そこで、伊丹大と島津裕は、佃製作所を訪れ、社長・佃航平にケーマシナリーとの特許問題を打ち明け、出資を要請した。
簡単に言えば、社員の雇用を条件に、15億円でギアゴーストを佃製作所に身売りしたいという要請である。
話を聞いた佃航平は、社内検討を約束して伊丹大らを帰すと、知的財産問題では国内トップレベルの顧問弁護士・神谷修一の元を訪れ、ギアゴーストの件を相談した。
すると、神谷修一は佃航平に、ケーマシナリーへの対抗策として「クロスライセンス」の可能性があることを教えた。
「クロスライセンス」とは特許と特許を交換(相殺)することで、ケーマシナリーの製品に、ギアゴーストの特許を侵害している製品が見つかれば、「クロスライセンス」によって、15億円の特許料を大幅に減らせるというのである。
「クロスライセンス」という手法を知った佃航平が、トランスミッションは本業のエンジンと相乗効果が生まれるので、巨額の特許使用料を払ってでも、ギアゴーストを傘下に収めたいと本音を語ると、神谷修一はある問題を指摘した。
特許侵害を調べるために、ケーマシナリーの製品を分解して精査するのだが、その作業を誰がやるかという問題である。
ギアゴーストにクロスライセンスという戦略を教えて特許侵害が見つかれば、ギアゴーストは15億円を支払う必要が無く、身売りする必要が無くなり、佃航平がギアゴーストを買収するという話そのものが無くなる。
しかし、ギアゴーストにクロスライセンスを教えずに、佃製作所が密かにケーマシナリーの特許侵害を発見すれば、ただ同然の値段でギアゴーストを手に入れることが出来るというのだ。
佃製作所に戻った佃航平は、殿村直弘らに、クロスライセンスのことを教えると、殿村直弘は佃航平に決断を尋ねた。
すると、佃航平は、クロスライセンスを隠してギアゴーストを買収しても、ギアゴーストの社員は喜んで仲間になると言ってくれるだろうか、損得以前に道義的な正しさも重要だと言い、ギアゴーストにクロスライセンスという対抗策を教えることを明かした。
それを聞いた殿村直弘らは、佃航平の考えに賛成し、山崎光彦も特許侵害の精査も手伝おうと提案したので、佃航平は「この商売下手はウチの専売特許みたいなもんだな」と胸をなで下ろしたのだった。
スポンサードリンク
■クロスライセンス
さて、佃航平はギアゴーストの社長・伊丹大にクロスライセンスという対抗策があることを教え、特許侵害の調査の協力をも約束した。
こうして、佃製作所とギアゴーストが協力して、ギアゴーストの製品を分解して精査したが、特許侵害は発見できず、クロスライセンスという対抗策は消えた。
一方、佃製作所の顧問弁護士・神谷修一は、ギアゴーストの顧問弁護士・末長孝明が情報漏洩したのではないかと疑っていた。
実は、ケーマシナリーが行った当初の特許申請では特許侵害の問題は無かったが、ケーマシナリーが特許申請を修正したため、ギアゴーストは特許侵害になっていた。
そして、ケーマシナリーの特許申請の修正が、ピンポイントでギアゴーストを狙い撃ちしていたことから、佃製作所の顧問弁護士・神谷修一は内部の情報漏洩を疑ったのである。
そして、ギアゴーストの顧問弁護士・末長孝明が、クロスライセンスという対抗策を提案しなかったことから、神谷修一は顧問弁護士・末長孝明が情報漏洩の犯人ではないかと疑った。
ある日、ギアゴーストの伊丹大と島津裕は、神谷修一から顧問弁護士・末長孝明による情報漏洩を指摘され、ある資料を渡されるが、身内を疑う神谷修一に激怒して席を立ってしまった。
2日後、ギアゴーストの伊丹大は、顧問弁護士・末長孝明とともにケーマシナリーの弁護士・中川京一と話し合いを行うが、特許使用料の減額は受け入れられず、話し合いは決裂に終わった。
話し合いの後、伊丹大は顧問弁護士・末長孝明に、弁護士同士のつながりから、個人的に減額を交渉してもらえないかと頼んだが、顧問弁護士・末長孝明はケーマシナリーの弁護士・中川京一と個人的な面識は無いと答えた。
しかし、佃製作所の顧問弁護士・神谷修から渡されていた資料は、廃刊になった弁護士の業界誌で、その記事で末長孝明と中川京一が対談しており、旧知の仲だと判明していた。
このため、伊丹大は、顧問弁護士・末長孝明が嘘を付いていることを確信したのだった。
■ダイダロスの重田登志行
さて、伊丹大が顧問弁護士・末長孝明と別れると、ケーマシナリー側の弁護士・青山賢吾から声を掛けられた。
小型エンジンメーカー「ダイダロス」が、特許問題を知ったうえで、ギアゴーストを買収したいのだという。
伊丹大は思わぬ助け船に喜んだが、ダイダロスの資料を見ると、ダイダロスの社長が因縁のある重田工業の重田登志行だったので驚いた。
重田工業は、帝国重工の上層部に太いパイプを持つ協力企業の筆頭格で、帝国重工の機械事業部に納品していた。
伊丹大が帝国重工の機械事業部に在籍していたとき、機械事業部は赤字という未曾有の事態に直面しており、各取引先に値下げを要請していたが、重田工業は帝国重工との太いパイプにあぐらをかいて値下げには応じなかった。
そのようななか、機械事業部の伊丹大が提案した改革案が上司・的場俊一の目にとまり、重田工業との契約が打ち切りになった。契約を打ち切られた重田工業は会社更生法を申請して倒産した。8年前のことである。
さて、伊丹大は弁護士・青山賢吾の仲介で、因縁のある重田登志行に会うが、重田登志行は伊丹大を恨むどころか、感謝していた。
元々、重田工業は重田登志行の父親の会社で、重田登志行は父親時代からのしがらみなどに縛られており、敷かれたレールの上を走っているだけで、重田工業の経営に嫌気を差していた。
重田工業が倒産した後、父親が死に、重田登志行は父親が再起のために隠していた資産を引き継いで、5年前に小型エンジンの会社を買収し、重田工業時代には封印していた自分流のやり方で経営を開始して業績を拡大した。それが、ダイダロスなのだという。
さて、重田登志行は以前からギアゴーストに目を付けていたと言い、伊丹大にギアゴーストの買収案を提案するが、重田登志行の経営手法はリストラであり、伊丹大の社長続投は約束されていたが、ギアゴーストの社員の雇用は保障されていなかった。
伊丹大は自分は首になっても社員の雇用を保障することを譲渡の条件にしていたが、断らずに「検討しますので、時間をいただけますか」と頼んだのだった。
スポンサードリンク
■黒幕のネタバレ
数日後、ギアゴーストにケーマシナリーから訴状が届いた。話し合いは決裂したため、ケーマシナリーが特許使用料15億円の支払いを求めて提訴したのである。
そこで、伊丹大は、嘘を付いていた顧問弁護士・末長孝明との契約を解除して、佃製作所の顧問弁護士・神谷修に弁護を依頼することに決め、佃製作所の佃航平に連絡をして、顧問弁護士・神谷修と会った。
すると、顧問弁護士・神谷修は「私は負ける裁判はやりません」と言い、裁判を引き受け、勝訴の秘策となる論文を見せた。
それは、佃航平が見つけた論文で、この論文が無ければ、弁護を引き受けていないという。
その後、伊丹大と島津裕は、顧問弁護士・末長孝明の元を訪れ、顧問契約の解除を宣告し、神谷修に弁護を依頼したことを教え、末長孝明とケーマシナリーの弁護士・中川京一が対談している雑誌の記事を突き付けて弁護士事務所を後にした。
さて、今回の情報漏洩を持ちかけてきたのは、ケーマシナリーの顧問弁護士・中川京一で、ギアゴーストの買収に成功すれば、末長孝明には成功報酬として3億円が支払われることになっていた。
末長孝明と中川京一が対談した雑誌は、既に廃刊になった業界誌だったので、2人の関係が発覚するはずは無かったが、こうして雑誌の記事を突き付けられ、特許訴訟ではトップクラスの敏腕弁護士・神谷修が出てきたのであれば、事情が変わってくる。
動揺した末長孝明は、伊丹大と島津裕が帰ると、慌てて中川京一に電話を掛け、情報提供の件が絶対に漏れないように頼み、成功報酬の支払いも約束させて電話を切った。
そこへ、島津裕が弁護士事務所に忘れたカバンを取りに戻ってきたのだった。
そのようななか、伊丹大はダイダロスの社長・重田登志行から、ギアゴーストを買収するのは重田工業を倒産に追いやられた復讐では無く、帝国重工の次期社長・的場俊一への復讐だと打ち明けられた。
帝国重工の協力会社だった重田工業は、伊丹大の改革案によって取引停止となり、倒産に追い込まれたが、その後、伊丹大も重田工業が倒産したことで批判を受け、帝国重工の墓場へと左遷された。
実は、このとき、伊丹大の改革案を採用したのが、帝国重工の次期社長・的場俊一で、伊丹大を切り捨てたのも的場俊一だった。
的場俊一は、伊丹大の改革案を利用して倒産させた重田工業を見せしめとし、下請け企業に強引な値下げを飲ませ、機械事業部の赤字を解消したのだ。
重田登志行は、伊丹大も次期社長・的場俊一の被害者であり、協力して次期社長・的場俊一を叩き潰そうと持ちかけた。
■ケーマシナリーとの裁判
ある日、ギアゴーストとケーマシナリーの裁判が始まる。
ケーマシナリーは、トランスミッションの特許侵害でギアゴーストを訴えていたが、ギアゴーストの代理人・神谷修は、佃航平が見つけた論文を示し、ケーマシナリーの特許は無効だと主張した。
佃航平は、島津裕の何気ない一言から、ギアゴーストのトランスミッションは既に存在する技術の応用だと気づき、ギアゴーストのトランスミッションの基礎技術となる論文を探し当てていた。
この論文は公開されていたので、ケーマシナリーが申請した特許は既に公開されている技術に過ぎず、ケーマシナリーの特許そのものが無効なのだという。
さらに、代理人・神谷修は、雑誌の対談記事やICレコーダーの会話を証拠として示し、ギアゴーストの元顧問弁護士・末長孝明がケーマシナリーの顧問弁護士・中川京一を通じて情報漏洩していたことを指摘して、ギアゴーストに特許侵害が無いことを主張した。
これに対して、ケーマシナリーの顧問弁護士・中川京一は、「次回までに回答いたします」と答えるほかに術は無かった。
スポンサードリンク
■下町ロケット-ゴースト-最終回と結末
半年後、裁判はギアゴーストの勝訴に終わり、末長孝明弁護士と中川京一弁護士は不正競争防止法違反の容疑で逮捕された。
伊丹大は、自分を帝国重工の墓場へと追いやった真犯人が帝国重工の次期社長・的場俊一だったことを知って復讐に燃えており、的場俊一に復讐するため、ダイダロスの社長・重田登志行と提携することに決めた。
島津裕は「もう済んだこと」「佃製作所を裏切るの?」と反対したが、伊丹大は反対するのであれば、もう必要ないと告げた。
さて、帝国重工は、準天頂衛星「ヤタガラス」を搭載したロケット「ヤタガラス」7号機の打ち上げに成功した。
ヤタガラス7号機の打ち上げを最後にロケット事業から退く部長の財前道生は、宇宙航空企画推進グループへと移ることになっていた。
財前道生は、宇宙航空企画推進グループで、準天頂衛星「ヤタガラス」の価値を布教する活動に従事し、ロケット事業を側面から支援するのだという。
そして、そのために財前道生が目を付けていたのは「農業」だった。
一方、殿村直弘の父親は、弱気になっており、田んぼを農業法人に貸そうかと言い出していた。
そんな父親を見た殿村直弘は、実家の農業を継ぐことに決め、妻に相談すると、妻は自分まで仕事を辞めてしまえば、失敗したときに共倒れになると言い、自分は仕事を続けるので、農業を継げば良いと応援してくれた。
このため、殿村直弘は裁判が終わると、佃航平に辞表を提出し、佃製作所を退職した。佃航平は何度も辞表を読んで、目頭を熱くした。
さて、ギアゴーストの伊丹大は裁判の後、一度、裁判の礼を言いに来ただけで、未だに提携の話には発展していなかった。
そのようななか、ギアゴーストの島津裕が1人で佃製作所にやってきた。
島津裕は佃航平に、ギアゴーストがダイダロスと業務提携したことを報告して謝罪すると、伊丹大が帝国重工を辞めてから、ギアゴーストと提携することになった経緯を話すと、自分もギアゴーストを辞めることを明かして、佃製作所を後にしたのだった。
なお、「下町ロケット-ゴースト」の読書感想文は「下町ロケット-ゴースト-原作ネタバレ感想文」をご覧ください。
スポンサードリンク