アルジャーノンに花束を-意味と結末ネタバレ読書感想文

TBSのドラマ「アルジャーノンに花束を」の原作となるダニエル・キイスの小説「アルジャーノンに花束」のあらすじと解説と結末ネタバレ読書感想文の後編です。

このページは「アルジャーノンに花束を-解説と結末ネタバレ感想文」からの続きです。

■衝撃の結末はバッドエンド
小説「アルジャーノンに花束を」の結末で、主人公チャーリーは恋人アリスを追い出した。

チャーリーとアリスを結末で結婚させてハッピーエンドにすることも可能だが、やはり、小説「アルジャーノンに花束を」の結末はバッドエンドが似合う。

アダムとイブは食べてはいけないと言われていた禁断の果実「知識の木の実」を食べてしまい、自分が裸だった事を知り、自分を恥た。そして、禁断の果実「知識の木の実」を食べたため、楽園を追い出された。

主人公チャーリーも人工的に知能を上げるという禁断の果実に手を出したため、結末で全てを失ったのも仕方が無いと思った。

それは、ドーピングを使って世界記録を出したベン・ジョンソンが、ドーピングの発覚により、全てを失ったのと同じだと思う。

主人公チャーリーがロボトミー手術によって天才になるというのは、SF(サイエンスフィクション)だが、架空の話と割り切れないところがある。

実は現在、スマートドラッグが「頭が良くなる薬」と呼ばれて流通しており、スマートドラッグを飲む人が増えているのだ。

私はスマートドラッグが「禁断の果実」なのかどうかは分からないが、そういった薬(化学的ロボトミー)を飲む前に、IQ(知能指数)よりも大切なことがあることを知るべきだと思う。

■最終回の結末のネタバレ
ところで、知恵遅れに戻ったチャーリーは、精神遅延成人センターに通っていないのに、そのことを忘れて精神遅延成人センターへ行き教室で授業を受けようとする。

すると、教室に入ってきたキニアン先生は、チャーリーを見て泣いてしまったので、チャーリーはウォレン養護学校へ行くことを決意という結末を迎える。

これは読み終わってから気づいたのだが、キニアン先生というのは、チャーリーが付き合っていたアリスのことだ。

実は、チャーリーの知恵遅れ→天才→知恵遅れに連動して、アリスの呼び方がキニアン先生→アリス→キニアン先生へ変化しているのだ。

だから、結末で知恵遅れにもどったチャーリーが、アリスのことを「キニアン先生」と呼んでいる事を考えると、チャーリーはアリスと付き合っていた事も分からなくなったのだろうと思った。そう思うと、再び涙が溢れてきた。

■結末が描く意味
私が小説「アルジャーノンに花束を」は、知恵遅れの主人公チャーリーが脳外科手術によって天才になり、そして以前よりも知恵遅れになる話である。

そして、結末で知恵遅れに戻ったチャーリーは、何とか賢くなろうとして、本を読み、ウォレン養護学校にも2冊の本を持って行く。(注釈:このうちの1冊は、アダムとイブの物語絵を描いた「失楽園」のようである。)

これは、知識を奪われること、忘れる事への恐怖を描くのと同時に「忘れられる事への恐怖」も描いているのだと思う。

チャーリーは経過報告書の最後で、「ついしん。どーかついでがあったらうらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください」と頼んでいる。

これは、天才になったネズミのアルジャーノンが居た事を忘れないで欲しいという願いと同時に、チャーリーという天才になった精神障害者が居た事を忘れないで欲しいという願いが込められているのだと思った。

そして、小説「アルジャーノンに花束を」を読み終えて本を閉じると、表紙に描かれている花束が現れる。

だから、最後の「ついしん。どーかついでがあったらうらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください」は、タイトルの「アルジャーノンに花束を」へと続いているのだと思った。

■「アルジャーノンに花束を」の結末の逸話
作者ダニエル・キイスは、1959年に中編(短編)「アルジャーノンに花束を」を出版し、1966年に1966年に長編「アルジャーノンに花束を」を出版した。

実は2度とも、ダニエル・キイスは出版社から、「バッドエンドはウチの読者層に受けない」という理由でハッピーエンドへの変更を求められた。

しかし、ダニエル・キイスはハッピーエンドを拒み、別の出版社へ原稿を持ち込み、「アルジャーノンに花束を」の出版へとこぎ着けた。

また、小説「アルジャーノンに花束を」は1961年にアメリカでドララマ化されたのだが、このアメリカ版のドラマの最終回にも、バッドエンドになった逸話が残っている。

アメリカ版のドラマ「アルジャーノンに花束を」は、最終回でバッドエンドでは視聴者に受けないという理由でハッピーエンドが用意されていた。

しかし、主役のチャーリーを演じていた俳優クリフ・ロバートソンは、チャーリーに入りきっていたので、最終回の結末の所で体が動かなくなってしまい、ドラマの最終回が原作のようなバッドエンドで終わってしまった。

(注釈:1961年はテレビドラマも生放送で行われていた時代です。)

俳優クリフ・ロバートソンは結末をバッドエンドに変えてしまったので、監督から怒られて落ち込んでいたのだが、翌日になると俳優クリフ・ロバートソンの演技が賞賛されていた。

そこで、俳優クリフ・ロバートソンは原作者ダニエル・キイスの元に駆けつけ、映画化する権利を買ったのである。

■アルジャーノンの由来
ネズミのアルジャーノンの名前の由来は、イギリスの詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーンです。

詩人アルジャーノン・チャールズ・スウィンバーンは、ネズミの名前の由来になっただけで、ストーリーには影響していません。

■高嶋ちさ子の姉はダウン症
私は、小説「アルジャーノンに花束を」を読んでいる間、バイオリニストの高嶋ちさ子の事を思い出していた。

実は、高嶋ちさ子の姉はダウン症で、ダウン症の姉が居たからこそ、高嶋ちさ子は生まれてきた。

高嶋ちさ子の本名は「高嶋知佐子」で、「佐」には「助ける」という意味があり、高嶋ちさ子は母親から「みっちゃん(姉の未知子)を大事にしないとバチがあがるわよ。みっちゃんが居なければ貴方はこの世にいないのよ」と言われて育ってきたのである。

そして、高嶋ちさ子は、ダウン症の姉を守るために、子供の頃から、いじめっ子と戦ってきたため、声がしゃがれ声になり、凶暴な性格になった。

もし、チャーリーの妹ノーマが、高嶋ちさ子のように、チャーリーを守っていれば、チャーリーは家族から離れることもなく、幸せな生活を送っていたのかもしれない。

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