臨床犯罪学者・火村英生の推理-原作の犯人ネタバレ読書感想文
有栖川有栖の小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」(作家アリスシリーズ)のあらすじと犯人ネタバレを含む読書感想文のあらすじとネタバレ最終回です。
小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」のあらすじとネタバレ編は「臨床犯罪学者・火村英生の推理-あらすじとネタバレ」をご覧ください。
このページは、小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」のあらすじや犯人のネタバレが含まれていますので、原作を未読の方はご注意ください。
■臨床犯罪学者・火村英生の推理の感想文
有栖川有栖の小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」が2016年1月期に日本テレビで実写ドラマ化されるので、原作となる有栖川有栖の小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」を読んだ。
密室トリック小説を読むのは、2012年放送のフジテレビドラマ「鍵のかかった部屋」の原作となる貴志祐介の推理小説「鍵のかかった部屋」を読んで以来である。
貴志祐介の推理小説「鍵のかかった部屋」では奇想天外な様々な密室トリックが登場して面白かったので、有栖川有栖の小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」ではどのような密室トリックが登場するのか楽しみである。
なお、小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」に実在のモデルは以内と思うが、私は殺された密室トリックの巨匠・真壁聖一のモデルを貴志祐介だと思いながら読んだ。
■臨床犯罪学者・火村英生の推理の犯人ネタバレ感想文
原作小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」は面白かった。ライトノベルで殺人トリックや密室トリックも簡単だったのだが、ピリリとスパイスが利いていた。
特に面白いと思った点は、「46番目の密室」というもの凄い密室トリックが登場すると思わせておいて、密室トリックが登場しない点である。
真壁聖一は、これまでに45個の密室トリックを考え、密室の巨匠と呼ばれていた。その真壁聖一が「46番目の密室」を最後に、密室トリックから引退することを宣言した。
真壁聖一は密室状態だった地下の書庫で殺されており、真壁聖一は真壁聖一自身が考えた「46番目の密室トリック」によって殺されたと思われた。
しかし、真壁聖一は「46個目の密室トリック」で殺されたわけではなかった。確かに、犯人の推理作家・石町慶太は、「46番目の密室」を盗んだが、「46番目の密室」のトリックを使っていなかったのである。
そして、犯人・石町慶太は「46個目の密室」の真相をネタバレせずに警察に出頭したので、「46個目の密室」がどのような密室トリックだったのかは分からずに終わった。
私は原作小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」を読んで、アメリカのホラー映画「スクリーム」を思い出した。
映画「スクリーム」はホラー映画の定石を逆手に取ったストーリーになっており、ホラー映画をあまり観ない人に面白さが分からないが、ホラーファンであればあるほど、面白いという仕組みになっている。
そういう意味で、原作小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」は、良い意味で密室トリックへの期待を裏切られたので、映画「スクリーム」を観たときのような面白さがあった。
■地下の書庫の密室のネタバレ
真壁聖一が殺された地下室の書庫の密室トリックのネタバレしておくと、地下の書庫はドアの蝶番が壊れており、鍵を掛けなければ、ドアが勝手に開いてしまうので、真壁聖一自身が鍵を掛けた。
そして、真壁聖一が暖炉の中に書かれたナゾナゾを読むため、暖炉の中に上半身を入れた所で、屋根に居た犯人・石町慶太が煙突から壺を落として真壁聖一を殺害した。
このため、犯人・石町慶太の思惑には関係無く、地下の書庫は密室になってしまったのである。
私は日本テレビのアニメ「名探偵コナン」をよく観るので、殺害方法も密室トリックも直ぐに予想できた。もしかしたら、名探偵コナンで似たような事件を観たのかもしれない。
残念ながら真壁聖一を殺したトリックも、地下書庫の密室トリックも目を見張るようなトリックではなかったが、結末に至る過程で色々と仕掛けがあるので、面白かった。
■犯人は檜垣光司ではなかった!外れた私の犯人予想
私は、小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」を読んで、密室の巨匠・真壁聖一を殺した犯人を居候・檜垣光司と予想していた。
昔から、居候というのは、2階で厄介になるので、合わせて10階の身の上だとされ、たいだい、事件や問題を起こすのは居候と相場が決まっているからだ。
[注釈:居候が「10階の身の上」というのは、厄介(やっかい)は「8階」とも読めるので、2階と8階を足して10階になるという言葉遊びです。]
言葉遊びは、さておき、檜垣光司が怪しいと思ったのは、クリスマスの前夜に屋根で雪かきをしていたからだ。
地下の書庫で、暖炉に上半身を突っ込んで死んでいたのは、暖炉の煙突から何かを落として殺害したという方法は直ぐに予想がついた。
だから、私は、クリスマスの前夜に屋根に登って雪かきをしていた檜垣光司が犯人だと予想した。
それに、檜垣光司の父親・檜垣光男は消防士で、10年前に起きた浅間サンホテルの火事で、推理作家・真壁聖一と編集者・船沢辰彦の2人を助けて殉死している。
その後、推理作家・真壁聖一は命の恩人である消防士・檜垣光男の妻子が苦しい生活を続けていることを知り、妻子を星火荘に招いた。
そして、妻・檜垣直美は推理作家・真壁聖一の秘書兼家政婦として働いていたが、2年前に交通事故で死んでいる。
妻・檜垣直美は交通事故死として処理されているが、本当は推理作家・真壁聖一が殺したのではないだろうか。
推理作家・真壁聖一は、妻・檜垣直美を使って46番目の密室トリックを実験しているとき、妻・檜垣直美をしなせてしまったのではないか。
もしそうであれば、消防士・檜垣光男も妻・檜垣直美も推理作家・真壁聖一が原因で死んだのであり、息子の檜垣光司に推理作家・真壁聖一を殺す動機がある。
しかし、私の犯人予想は見事に外れ、小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」の犯人は、推理作家・石町慶太だった。
■予想が外れる面白さ
私の外れた予想は、「アリス」こと有栖川有栖の犯人予想と同じだった。という事は、私の犯人予想は、作者のミスリードによって誘導されたということになるのだろう。
以前に何かの小説を読んだとき、私は、年齢も性別も環境も全く違う主人公の意見に共感したことがある。
しかし、それは、私本来の意見ではなかった。つまり、私は、積み重ねられたエピソードにより、私は意見を誘導され、主人公の意見に共感したのである。
それ以降、私はミスリードによって作者に誘導される楽しさを覚えた。
作者に意見を誘導される楽しさというのは、それは手品のトリックを見破ってやろうと血眼になって観るのではなく、純粋に手品を観て楽しむ感覚に近いような気がする。
■悪質なイタズラのネタバレ
2階の各部屋に行われていた悪質なイタズラの犯人は、石町慶太だった。各部屋に行われてた様々なイタズラで、重要なのは屋根裏部屋に続く階段にまいた石灰だけだった。
屋根裏部屋を割り当てられていたのが、犯人・石町慶太で、石町慶太は、部屋の前にまかれた石灰に足跡が無ければ、「ずっと部屋に居た」というアリバイが作れるため、真壁聖一を殺害する時のアリバイ作りのために石灰をまいていた。
屋根裏部屋の前にだけ石灰をまくと怪しまれるので、カモフラージュのために他の部屋にもイタズラを行っていた。
ネタバレを知った後に読み返してみると、編集者・安永彩子の部屋にされていたイタズラが、白いスプレーで窓にハートマークを書いていたので面白かった。
犯人・石町慶太は編集者・安永彩子と結婚しようと考えていたので、ハートマークはラブメッセージの意味があったのだろう。
しかし、編集者・安永彩子は犯人が分からないので、窓に書かれたハートマークを気持ち悪がっている。
■イタズラでアリバイは成立するのか?
犯人・石町慶太は、アリバイを作るために、部屋の前に石灰をまいた。石灰に足跡が付いていなければ、部屋から出ていない証拠になるので、それがアリバイの証明になるのだという。
しかし、犯人・石町慶太は窓から屋根に出られるので、部屋の前に石灰をまいても、それは部屋から廊下に出ていないという事を証明するだけで、アリバイの証明にはならないと思う。
犯人・石町慶太が、不審人物「サンタクロース」に目撃されなければ、どのよう推理が展開されたのか、気になるところだ。
■実は伏線だった!ワープロの誤変換のネタバレ
原作小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」で、ワープロの誤変換の話題が出た。「談笑(だんしょう)」と入力しようとすると、最初の変換候補に「男娼」という候補が出てくるという話である。
私も誤変換には苦労している。私はジャストシステムの変換ソフト「ATOK」を使用するるようになって少しは変換ミスが減ったのだが、やはり、思い通りには行かない。
先日も「最強のイケメン」と称される木村重成について書いたのだが、書き終えるとATOKが変な変換を学習して馬鹿になった。
(注釈:イケメン木村重成の生涯は「イケメン過ぎた木村重成の生涯」をご覧ください。
特に「青柳の遺書」を書いた後は変換ミスが酷かった。もう少し変換ソフトが進化して変換ミスが無くならないものだろうかと思う。
(注釈:柳の遺書は「木村重成の妻・青柳の遺書」をご覧ください。)
私も変換ミスには苦労しているので、作家なら尚更なのだろうと思って、作家同士の変換ミス談義を読んだのだが、この何気ない変換ミス談義が犯人の動機の伏線になっているとは思いもよらなかった。
■犯人・石町慶太の動機のあらすじとネタバレ
臨床犯罪学者・火村英生が犯人の石町慶太を呼び出すと、犯人の石町慶太は意外なほど簡単に真壁聖一とサンタクロース(諸田禎一)の殺害を認めた。
犯人・石町慶太が余りにもアッサリと2人の殺害を認め、警察に出頭すると言うので、私は犯人・石町慶太が誰かを庇って、犯行を認めたのかと思った。
そこから、臨床犯罪学者・火村英生がグイグイと名推理で犯人の石町慶太を追い詰め、石町慶太の口から真犯人や黒幕の名前が明らかに・・・。
と、思ったのだが、犯人・石町慶太が隠そうとしていたのは真犯人でも黒幕でもなく、自分の性癖だった。なんと犯人の石町慶太はホモ(ゲイ)だったのである。
実は、密室の巨匠・真壁聖一と犯人・石町慶太の2人は肉体関係にあった。いわゆホモやゲイと呼ばれる関係である。
しかし、正真正銘のホモだった犯人・石町慶太は、編集者・安永彩子と出会って女性に目覚め、安永彩子と結婚することにした。
その関係を知った密室の巨匠・真壁聖一は、ホモの関係を安永彩子に暴露すると、石町慶太を脅した。
このため、石町慶太は、ホモの関係がばれれば、恋人の安永彩子を失ってしまうと思い、真壁聖一を殺害したのである。
しかし、私は、小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」を読んで、少し犯人・石町慶太の動機が弱いと思った。結婚相手にホモやゲイを暴露されるくらいで、人を殺すものだろうか?
男性同士の性的関係は古くかある。男色は武士の嗜みで、織田信長は森蘭丸と肉体関係にあり、武田信玄も高坂弾正昌信と肉体関係にあり、徳川家康も赤備えの井伊直政と肉体関係にあった。
それに、最近は、男性同士の肉体関係を「ボーイズラブ」と呼び、若い女性の間で大人気らしい。
漫画やドラマにもボーイズラブが多数、取り上げられているので、編集者・安永彩子もボーイズラブ好きという可能性もある。
それに、有名な作家は変人が多い。編集者ならそれくらい分かっているはずだし、作家と結婚しようというのなら、ある程度の変態行為は覚悟しているはずだ。
だから、犯人・石町慶太は編集者・安永彩子に、真壁聖一とホモの関係にあることを打ち明けるべきだと思った。
■46番の密室トリックの真相を考える
犯人・石町慶太は、密室の巨匠・真壁聖一が考えた最後の「46番の密室」のネタ帳を見つけ、盗用するため、ネタ帳を暖炉で燃やした。
だから、「46番の密室」の真相について知っているのは犯人・石町慶太だけである。
しかし、小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」の結末で、犯人・石町慶太は「46番の密室」の秘密を抱えたまま警察へ出頭したので、「46番の密室」の真相は藪の中である。
ところで、臨床犯罪学者・火村英生に呼び出され、警察へ出頭することを決めた犯人・石町慶太は、真壁聖一とホモの関係にあった事を告白したが、「46番の密室」についてはネタバレしなかった。
真壁聖一はなぜ、ホモである事を告白して、「46番の密室」についてはネタバレしなかったのだろうか?謎である。
そこで、私はある仮説を立てた。実は、真壁聖一が考えたという「46番の密室」は、そもそも存在していなかったのではないか。
そして、犯人・石町慶太は真壁聖一を殺害した後、「46番の密室」など存在しないという事を知った。
犯人・石町慶太は真壁聖一を怨んで殺害したが、何度も愛を交わし、何度も肉欲の果てに昇天しあった相手である。
犯人・石町慶太は、死んだ真壁聖一の名誉を守るために、真壁聖一のネタ帳を燃やし、「46番の密室」を盗んだことにしたのではないか。
もちろん、これは私の想像なので、「46番の密室」の真相は藪の中である。
■火村英生と有栖川有栖の関係
小説「臨床犯罪学者・火村英生の推理 46番目の密室」を読んでいて、火村英生と有栖川有栖の関係が気になった。
犯人の石町慶太は、なぜ、火村英生と有栖川有栖に自分がホモ(ゲイ)であることを告白したのだろうか?
犯人の石町慶太は、46番目の密室トリックをネタバレしなかったように、自分が真壁聖一とホモ(ゲイ)の事も告白せずに、墓場まで持って行く事も出来たはずだ。
にもかかわらず、犯人の石町慶太は、自分がホモ(ゲイ)であることを告白した。なぜだろうか?
それは、犯人の石町慶太が、火村英生と有栖川有栖に、自分と同じ臭いを感じ、自分と同じような目に遭わないように忠告したかったからではないだろうか。
火村英生は臨床犯罪学者になった理由について「人を殺したいと、私自身が思ったことがあるからです」と話している。
火村英生が誰を殺したいと思ったのかは明らかになっていないが、火村英生がホモ(ゲイ)で、殺してみたいと思った相手が有栖川有栖だったとしたら・・・。
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