下町ロケット2 ガウディ計画のネタバレ読書感想文
池井戸潤の原作小説「下町ロケット2 ガウディ計画」のあらすじと最終回の結末ネタバレ読書感想文の感想編です。
原作小説「下町ロケット2 ガウディ計画」のあらすじとネタバレは「「下町ロケット2 ガウディ計画」のあらすじとネタバレ」をご覧ください。
■下町ロケット2 ガウディ計画-あらすじとネタバレ感想文
TBSのドラマ「下町ロケット」の原作となる池井戸潤の小説「下町ロケット2 ガウディ計画」を読んだ。
補足をしておくと、TBSのドラマ「下町ロケット」第1部の1話から5話の原作が前作「下町ロケット」で、第2部の6話から最終回までの原作が「下町ロケット2 ガウディ計画」である。
さて、池井戸潤の小説「下町ロケット2 ガウディ計画」は前作「下町ロケット」よりも複雑だった。前作はロケットのバルブだけだったが、今作はロケットのバルブに加えて、人工心臓と人工弁がテーマである。
さらに、医療問題やデバイス・ラグ問題など、小説「下町ロケット2 ガウディ計画」にはかなり広いテーマが含まれていた。
デバイスラグとは、海外の医薬品・医療機器が日本で認可されるまでに生じる時間のズレである。
海外で開発された医薬品・医療機器は、厚生労働省の認可を受けなければ、日本で使用することは出来ない。
厚生労働省の認可が下りるまで、数年を要するため、海外で安全が認められている医薬品・医療機器でも、日本では使用できないという問題が発生する。これがデバイスラグ問題である。
外国製の医薬品・医療機器に頼っている以上、必ずデバイスラグ問題が発生する。(ただし、個人輸入なら使用可能です。)
このデバイスラグ問題の代表格が人工心臓で、人工心臓の認可には10年を要するので、日本で使用されている人工心臓は、欧米より10年遅れている。
デバイスラグ問題と言われるように、日本は医薬品や医療機器の認可が遅いのだが、例外もある。それが勃起改善薬のバイアグラである。バイアグラは、申請から僅か半年というスピードで承認されている。
以前、あるタレントが、ある番組でデバイスラグ問題を取り上げ、バイアグラのスピード承認について、「お前らが必要だからスピード承認したんだろ」と痛烈に批判していた。
バイアグラに対して女性の避妊薬「ピル」の承認は、申請から承認まで10年以上を要しており、こうしたデバイスラグ問題の背景には、男性社会など、様々な問題が含まれているのかもしれない。
また、小説「下町ロケット2 ガウディ計画」に登場する人工弁も外国製に頼っており、人工弁はデバイスラグ問題に加えて、外国製は日本人の体格に合わないため、体格の小さい子供は人工弁が使用できないという問題がある。
私も外国製が体に合わないという経験をしているので、これは切実な問題だと思う。
私は眼鏡を掛けているのだが、私は鼻が低いので、外国製の眼鏡は私の顔に合わないのだ。
アジアンサイズと言ってアジア向けのサイズを展開している外国の眼鏡メーカーもあるのだが、それでも、私の鼻には合わない。それほど私の鼻は低いのだ。
以前、阿部寛と上戸彩が出演する映画「テルマエ・ロマエ」を観た。テルマエ・ロマエは、古代ローマの浴場設計技師ルシウス・モデストゥス(阿部寛)が21世紀の日本に来て、日本の銭湯の技術を古代ローマに持ち帰るというストーリーだ。
その映画「テルマエ・ロマエ」のなかで、21世紀の日本にタイムスリップしたルシウス・モデストゥス(阿部寛)は、日本人を見て「平たい顔族」と言った。
鼻の低い私は、まさしく「平たい顔族」なのである。
さいわい、眼鏡は国産品があるので、鼻あてを調整すれば、何とか掛けられるのだが、国産の眼鏡でも、直ぐに眼鏡がズレ落ちてくる始末である。
私の場合は眼鏡だから命に支障は無いが、人工弁は命に関わることなので、早く国産の人工弁が開発されれば良いと思う。
■「下町ロケット2 ガウディ計画」の舞台は福井県
小説「下町ロケット2 ガウディ計画」の舞台は福井県福井市である。
福井県といえば、私は以前に「実話・天皇の料理番のあらすじとネタバレ」を書いた。「実話・天皇の料理番」の主人公・秋山徳蔵が福井県越前市の出身なので、なんとなく福井県には親近感がある。
(注釈:実話・天皇の料理番のあらすじとネタバレは「実話・天皇の料理番-あらすじとネタバレ」をご覧ください。)
さて、小説「下町ロケット2 ガウディ計画」では、福井県にある北陸医科大学の一村教授と、福井県のベンチャー企業「株式会社サクラダ」が国産人工弁を作る「ガウディ計画」を進めており、佃制作所は参加要請を受けてガウディ計画に参加することになる。
株式会社サクラダはガウディ計画のために設立された会社で、その母体(親会社)は繊維会社「桜田経編(さくらだたてあみ)」だ。
繊維は福井県の地場産業であり、桜田経編で培われた経編(あてあみ)の技術が人工弁に生かされている。
さて、福井県には、繊維の他に、もう1つ有名な地場産業がある。それが眼鏡だ。国産眼鏡の約9割は福井県鯖江市で製造されており、鯖江産の眼鏡フレームは世界レベルで言っても高品質だった。
しかし、福井県鯖江市の眼鏡作りが盛んだったというのは昔の話で、今はもうすっかりと衰退している。
実は、福井県鯖江市の眼鏡作りの技術が中国や韓国に流出したため、眼鏡市場には中国製や韓国製の安い眼鏡が溢れ、眼鏡の本場と言われた福井県鯖江市の眼鏡産業は衰退して瀕死の状態にあり、多くの眼鏡製造会社が倒産に追い込まれたのである。
この原因は1980年代まで遡る。1972年に中国は日中友好の証として上野動物園へパンダを送り、日本でパンダブームがわき起こる。
福井県鯖江市の時の市長・山本治は、日光友好を掲げ、パンダと引き替えに中国に眼鏡作りの技術を教えた。
しかし、中国にはトンチの利く人が居て、中国が鯖江市に贈ったのは白黒のパンダではなく、茶色い「レッサーパンダ」だったのである。
そして、1984年に中国から福井県鯖江市に日中友好の証として「レッサーパンダ」やキジが送られ、翌年の1985年に動物園の無かった福井県鯖江市に西山動物園が開園した。
こうして、福井県鯖江市はレッサーパンダという西山動物園の目玉を得たが、眼鏡産業を衰退させてしまったのである。
私は小説「下町ロケット2 ガウディ計画」を読んで、いかに技術が大事か、技術を理解していない権力者のせいで技術者がいかに苦労ししているかを痛感した。
■下町ロケット2 ガウディ計画は機械弁
弁膜症の治療に使われる人工弁には、生態弁と機械弁がある。生態弁は牛や豚なのど弁を加工した人工弁で、ガウディ計画で開発するのは機械弁である。
生態弁にも機械弁にも、メリットとデメリットがあり、万能では無い。機械弁は血栓ができやすいし、どんなに良い性能の人工弁が出来たとしても、人体にとっては異物なのである。
こうした人工弁の問題を一気に解決するのが、理化学研究所の小保方晴子で有名になったSTAP細胞(スタップ細胞)だ。
STAP細胞は、俗に言う「万能細胞」で、STAP細胞を作る技術が発見されれば、患者の細胞から弁を再生する事ができる。STAP細胞が実用化すれば、様々な問題を一気に解決できるので、再生医療から大きな期待がかかった。
残念ながら、理化学研究所の小保方晴子には論文ねつ造疑惑などが浮上したため、STAP細胞は闇に葬り去られてしまった。
しかし、まだ望みはある。2015年11月、京都大学とパナソニックの共同開発チームが、万能細胞「IPS細胞」を自動培養する装置の開発に成功したのである。
パナソニックは、前作「下町ロケット」で佃制作所を苦しめた「ナカシマ工業(マネシマ工業)」のモデルと噂されている企業だ。
(注釈:ナカシマ工業のモデルは「ナカシマ工業(マネシマ工業)の実在のモデル」をご覧ください。)
IPS細胞が実用されれば、再生医療が大幅に進み、病気で苦しんで居る人を救うことができるので、京大とパナソニックには頑張って開発を進めて欲しい。
■下町ロケット2 理系女子の加納アキ
小説「下町ロケット2 ガウディ計画」に新登場人物・加納アキが登場する。加納アキは大学院で修士課程を修了した後、家庭の事情で研究を断念したが、教授の紹介で3年前に佃制作所に入社したリケジョ(理系女子)である。
加納アキは、おっちょこちょいだが、粘り強くて明るいため、ガウディー計画のリーター立花の補佐としてガウディ計画に加わることになった。
リケジョ(理系女子)と言えば小保方晴子を連想したので、加納アキも割烹着を着て研究開発を進めるのかと思い、ドキドキしながら読んだが、残念ながら加納アキが割烹着で研究をするシーンは無かった。
加納アキは、むさ苦しい佃制作所研究開発部において紅一点となる存在なので、女性ならではの視点でヒントを発見して、ガウディ計画に寄与して欲しかったのだが、残念ながら、加納アキに目立った活躍は無かった。
小説「下町ロケット」がシリーズで続いていくのであれば、今後の活躍に期待した。
■ガウディ計画の由来
小説「下町ロケット2 ガウディ計画」には、ガウディ計画に参加している株式会社サクラダという会社が登場する。
株式会社サクラダは、福井県福井市にある繊維会社「桜田経編」の子会社で、ガウディ計画の為に設立されたベンチャー企業である。
株式会社サクラダの社長は桜田章と言い、社長の桜田章は桜田という名前から、スペインのバルセロナの協会「サグラダ・ファミリア」を模したロゴが名刺に印刷していた。
建築家アントニ・ガウディがサグラダ・ファミリアを設計したので、そこから、桜田章が「ガウディ計画」と名付けたようである。
ところで、ヨーロッパには他にも多くの有名な建造物がある。その1つがイタリアにある「ピサの斜塔」だ。ピサの斜塔は、地上8階建てで、約4度傾斜している。
ピサの斜塔は、建設中に地盤沈下を起こして傾いてしまったが、その後も重心を変更しつつ、建築を継続したため、傾いたまま完成した。
現在は地盤沈下を防ぐために、地下の堅い支持層まで杭を打ち込んで建物を支えるのだが、日本の建設業界では、データの不正流用が行われており、くい打ちが正しく行われず、マンションが傾くという事件が起きている。
しかし、こうした不正は今に始まったことでは無い。日本の建設業界では、これまでにも、欠陥住宅・手抜き工事・強度不足などの他にも、コンクリートを水で薄めた「シャブコン」などを使う事件が起きている。
明るみに出たデータの改竄・不正は氷山の一角で、日本の建設業界ではデータの改竄や不正は頻繁に行われているそうだ。
こうした不正は今に始まったことでは無い。以前から不正は横行しており、日本の物作りに対する信頼は揺らいでいる。
これまでに、牛肉偽装事件・殺人エレベーター事件・殺人エアバック事件・産地偽装事件など、日本では数々の事件が起きている。
■下町ロケット2と責任者
小説「下町ロケット2 ガウディ計画」でも、責任を部下に押しつける場面があるのだが、ドラマ「下町ロケット」の第5話に良いシーンがあったので、ドラマ「下町ロケット」第5話から紹介したい。
佃制作所は、ロケットエンジンのバルブを帝国重工に納品するため、燃焼テストを受けたが、佃制作所のバルブが作動せずに燃焼テストは失敗する。
帝国重工のテスト責任者・富山敬治(新井浩文)は失敗の原因を佃制作所のバルブだと断定したが、佃制作所は調査の結果、帝国重工が用意したフィルターに付着していた二酸化ケイ素がバルブ不作動の原因だと突き止めた。
すると、テスト責任者・富山敬治(新井浩文)とフィルター担当者・近田が責任を押しつけ合うのだが、財前道生(吉川晃司)が「責任者はお前だ。これが若帝国重工の技術か。恥を知れ」と一括するのである。
小説「下町ロケット2 ガウディ計画」を読んで感じたのだが、日本の責任者は責任を取らない。責任者は「責任を負う者」なのに、問題が発生すると、全て下に責任を押しつけて切り捨てるだけだ。
戦国時代の城主は、敵に降伏するとき、兵士の助命と引き替えに、自分の首を差し出した。責任者は、部下を守るために、腹を切る覚悟が必要である。
■下町ロケット2 偽装と粉飾
小説「下町ロケット2 ガウディ計画」では、佃制作所のライバル企業としてサヤマ製作所が登場する。
サヤマ製作所の社長・椎名直之は、元NASAの科学者で、3年前に父親の後を継いで社長に就任した。以降、サヤマ製作所は「NASA出身」という看板で売り上げを急激に伸ばした。
しかし、サヤマ製作所は技術力で売り上げを伸ばしたのでは無く、椎名直之が人脈を使って仕事を増やし、下請け企業としての規模を拡大しただけだった。
そこで、社長・椎名直之は、下請け工場から技術力で勝負する会社へと転換するため、日本クラインから人工心臓「コアハート」で使用するバルブの試作品と量産化を請け負った。
しかし、サヤマ製作所は動作保証90日を達成できず、データーを偽装して日本クラインへ納品し、動作保証をクリアするため、佃制作所から中里を引き抜いたのである。
前作「下町ロケット」では「数字は嘘をつかない」という面白さがあったが、今作「下町ロケット2 ガウディ計画」では「その数字が嘘だった」という面白さがあった。
最近は、粉飾決算・偽装表示・産地偽装・データ流用・ねつ造など、消費者を騙して利益を得ようとする企業が多い。サヤマ製作所はそうした悪徳企業の象徴だ。
下請け企業を虐めたり、粉飾決算や偽装表示などの不正に関わっている人が小説「下町ロケット2 ガウディ計画」を読めば、どのような感想を持つのだろうか?気になるところだ。
■下町ロケット2 貴船教授の最終回と結末のネタバレ感想
「医は仁術」と言われたのは昔の事である。「医は算術」と言われる現代の医学界において、「白い巨塔」と呼ばれる大学では、権力こそが正義だ。
権力に魅入られ、権力に取り付かれた貴船教授は、国産の人工心臓「コアハート」の開発を成功させて、アジア医科大学の次期総長の座を狙おうとした。
しかし、貴船教授は、コアハートの臨床1号の患者が死亡する事件により、学会トップの座から失脚した。さらに、アジア医科大学からも更迭され、千葉県の関連病院の院長へと転落する事が決まった。
確かに権力は魅力的だが、権力や金で動かない人間は居る。それが佃航平だ。佃航平は社長なので利益は考えるが、大企業や権力に屈せず、夢や理想のために動いた。
貴船教授や日本クラインが患者を救いたいという熱い情熱を持って国産の人工心臓「コアハート」を開発していれば、佃航平もきっと協力し、開発に成功していたと思う。
貴船教授は権力を失って、ようやく、「医者は医者だ。医者は患者に寄り添ってこそ医者だ。地位とか利益も関係なくなってみて思い出したよ」と気づいたが、もっと早く気づいて欲しかった。
医者だけに「初診(初心)、忘れるべからず」である。
■大切なのはアイデアと技術
私は小説「下町ロケット2 ガウディ計画」を読んで、大事なのは技術だと思った。
貴船教授は、一村教授から人工心臓「コアハート」のアイデアを盗んだが、プロジェクトに失敗した。
また、中里は佃制作所からバルブの設計図を盗んでサヤマ製作所に転職したが、バルブを作る事ができなかった。
なぜ、貴船教授や中里は失敗したのか?それは、貴船教授や中里に技術が足りなかったからである。
結局、アイデアや設計図だけでは成功せず、それに伴う技術が必要なのだ。アイデアと技術が揃ってこそ、初めて言い製品ができる。
それはドラマ作りも同じだと思う。いくら原作や脚本が良くても、それを映像化する制作陣や役者がダメなら良いドラマは出来ない。逆もまた然りである。
池井戸潤の小説「下町ロケット2 ガウディ計画」がどのように映像化されるのか、TBSのドラマ「下町ロケット」を楽しみにしたい。
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コメント欄
楽しく読まさせていただきました。私もヨーロッパに住んでいたのですが、避妊用ピルはとても進んでいる印象があります。また、その他の薬についても同様でドイツにいたときは、日本だと入院が必要な病気が、あちらでは自宅で薬で治せるといった具合いに薬の使用に関して発展しています。
このような問題を小説やドラマとして描いている点がとてもいいと思いました。とてもわかり易い文章であらすじがよくわかりました。ありがとうございました。
久し振りに胸に迫りくるドラマに感動させて頂きました。
ありがとうございました。
心より厚く厚く御礼申し上げます。
昭和11年生まれ!中卒!79歳!無知蒙昧な輩です
振り返りますと!重なるシーンの連続に感涙がとめどなく頬をつたわります。
重ねまして御礼申しあげます。
中国に技術提供する鯖江のような失態は、ドイツの自動車メーカーもやっていた。定年した日本人もしている。
技術は人につき、会社にはつかない、技術者が居なくなり、技術が他国に流れれば、会社も国も衰退する。
そんな当たり前のことが権力者がわからない。国も結果的に大事にしていない。権力の側は、技術のある人でなく、
好きな人を大事にする。
詳細な情報を有り難うございます。
私も十数年前まで、純粋な技術者で、寝食を忘れ、家庭を省みず、会社へ泊り込んだ日が何度もあった。しかし、それが、何だか「苦」にならないんだなあ。なんか知らないけど、これを何としてでも物にするのは、俺しかいないと半分開き直った時期があった。それが、以外と上手く行く。当然、特許・実用新案を書く。この繰り返しが、たまらなく好きだったせいか、この「下町ロケット」は当時を思いださせる。
今は、残念ながら、管理職。何かと言えば「金・金・金」正直、うんざりだ。「そんな事は、経理部にやらせろ!!あいつら、誰のおかげで給料もらっているのかわかってんのか!!」と怒鳴りたくなる。(若かったら、経理だろうが総務だろうが食ってかかっていたことでしょう。)次回、いよいよクライマッツクス。個人的には、同じ年の帝国重工財前さんに活躍して貰いたい。
バルブに問題があると疑われたシーンで原因解明が出来た佃社長の能力はさらっと流されているが、実社会ではこういう勘と行動力が物を言います。
かれこれ10年前の話だが、アメリカ企業の携帯電話のパーツをサムソンと日系企業が提供していたのだが、携帯の作動に問題が出た時、日系企業に弁償させようとアメリカ企業とサムソンが濡れ衣を着せてきた。日系企業の工場担当はオロオロしていたが、日本の本社から役員が飛んできて、問題を明らかにして、有無を言わさない調査結果と資料を提示し、アメ公とサムソンを黙らせたということがあった。
お金に汚い言い掛かりに対抗するには、問題が分かるだけの知識と技術を持つこと、そして技術は本社に隠して海外に出さないことが重要です。営業で各社事務所を回るとよく分かるが、外国企業に負けない技術を持つところは、誇りを維持しており社員も目的を持って活き活きとしているが、特許や企業ブランドなどの安定した固定収入に胡座をかいているところは、腐った魚のように目が死んでいてヨーロッパの貴族じみた享楽を楽しんでいる。常に克己を軸にした挑戦者「改善を推進していく心」が外国に負けない日本のキーパーツだと再確認しています。給料と待遇ばかりを重視するゆとり世代との価値観のギャップも、このドラマで意識改革が起きて埋まって行くのかな? 昭和世代の悩みと心配がひしひしと伝わってきます。
因みに色々な企業の冷蔵庫を修理している工場の経営者がサムソンは買うな、設計がダメだから修理しようが無いんだと言っていました。設計が拙くてもセールスマンを買収して、サムソンを売ったらインセンティブが入るというシステムを作って売り上げを上げる戦略とか、そういう実社会の腹黒い闇を思いながら、下町ロケットを見ています。
不正にかかわっている人間の感想、いきます。
まず日本人は日本の技術を過信するのを止めた方が良いと思います。
「日本人の出来ないは信用するな」というジョークがありますが、一般的に他国に比べて
職人気質なのか不可能を無理やりにでも可能にする、そういう意味では凄い技術があります。
しかしそんな事ができるのは一握り。全員が佃社長ではないのに、出来てしまう人がいるが故に
全員にその技術、いや、営業や管理を含めた、とにかくトップレベルの成功例を求めてしまう。
「失敗など許さぬ。出来ないとは言わせない。○○は出来ているではないか」
その結果その水準に達しない企業や人はどうするか。
偽装や不正をして将来破滅するか、その場で破滅するかを選ぶしかない。当然みな前者を選ぶ。
典型的な「偽装」は実は品質にかかわる偽装ではないのです。
人脈をかき集め、寝食を忘れ夜を徹しての開発や施工。たいてい美談で語られますよね。
これ自体が偽装であり不正であるという認識がどれほどの人にあるでしょうか?
ここで「大問題があったがリソースを大量につぎ込んでクリアした。通常なら失敗であった」
と公表すれば良いですが、そんな弱みを公表する会社や人、まずありません。特に技術系では。
このギャップが重なっていき、ハードルが上げられ、余力のなくなった会社や人が耐えきれなくなり、
影響の少ない部分、目に見えない部分から、ついに品質にかかわる部分まで偽装が始まるのです。
不正撲滅のための部門で何年も仕事をしていますが、正直同情して流されそうにすらなります。
サヤマ製作所、正直なところ佃社長よりよっぽどリアリティがあって、ある意味で共感しました。
偽装や不正をなくすための一番の方法は、やはり出来ないことは出来ない、出来ないことによって
たとえ取引相手やその先のお客様に迷惑がかかろうが断ることでしょうね。
作品で言えば純国産ロケットが飛ばなかろうが、患者への移植が間に合わずに死のうが、それでも断ること。
そうすれば99%大丈夫だから1%くらいは誤魔化して出してしまえ、という「偽装の気持ち」が働きませんから。
でも結局は自分の生活や相手の事情を考えて、頑張って無理やり何とかしようとするのが日本人なんですよね。