桜井信一の原作「下克上受験」の結末ネタバレ読書感想文
TBSのドラマ「下克上試験」の原作となる桜井信一の著書「下克上試験」のネタバレ読書感想文です。
原作「下克上試験」のあらすじとネタバレは「下克上受験-原作(実話)のあらすじと最終回と結末ネタバレ」をご覧ください。
■下克上受験の感想
TBSでドラマ「下克上試験」が始まるので、ドラマの原作となる桜井信一の著書「下克上試験」を読んだ。
下克上試験は、中卒の桜井信一が偏差値41の娘・桜井佳織と共に、日本最難関の桜陰中学校を目指して親子で受験勉強をする話である。
筆者や家族の都合上、個人名は変えているが、内容自体はドキュメンタリー(実話)で、全て出版元に資料を提出して事実確認を取っているそうだ。
原作「下克上試験」を読んでみると、「下克上試験」の主人公であり、著者である桜井信一は、やたらと「中卒」を前面に押し出していることが気になった。
原作「下克上試験」を読んでも分かるとおり、これだけ文章が書けるのだから、桜井信一は中卒でもバカでは無い。それどころか、かなり頭が良いと思う。
桜井信一の受験に対する着眼点も面白かったし、「中卒=バカ」という世間の先入観を上手に利用している点も面白かった。この本は受験生の親でなくとも、大いに参考になる点があると思う。
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■子供と向き合うと言うこと
世間には、教育熱心な親なんて掃いて捨てるほど居るだろう。
でも、教育熱心な親といえども、子供を良い塾に入れたり、塾の送り迎えをしたり、勉強を教えたりと、子供の受験勉強をサポートしているに過ぎないのではないか。
しかし、桜井信一は、ただ娘・桜井佳織の受験勉強をサポートするだけでなく、娘・桜井佳織と一緒に受験勉強をした。
私が原作「下克上試験」を読んで、桜井信一が娘と一緒に受験勉強をしたという点に驚いたし、感心した。こんな親が居ると言う話は聞いた事が無い。
文字通り、子供の為に体を張るということは、こういうことなのかもしれないと思った。
今回は中学受験だったが、もし、いじめ問題だったとしても、桜井信一は何らかの方法で解決に導いたのではないかと思った。もし、いじめ問題なら、桜井信一はどんな方法を考えたのだろうと思った。
ただ、読み終えてから、桜井信一のやったことは、何も特別な事ではなく、育児の基本なのではないかと思った。
たとえば、「子供と話すときは、しゃがんで子供と同じ視線の高さで話ましょう」という育児論がある。
よくよく考えれば、子供と一緒に受験勉強をするというのは、子供と同じ視線になるということではないのだろうか。そして、それが子供と向き合うということなのではないかと思った。
■ドラマも受験も同じ
私は原作「下克上試験」を読んで、中学受験勉強に必要な事はドラマで全て学べると思った。
たとえば、ドラマをたくさん観ていると、「このドラマって、あのドラマのパクリじゃん」と思うことがある。
もし、数学の問題を解いているときに、問題を見た瞬間に「これあの問題パクリじゃん」と気付くことが出来れば、どうだろうか。
出題されている問題が、あの参考書のパクリと気付く事ができれば、その問題を解くのに必要な公式や解法が分かる。使用する公式や解法に気付けば、数学の問題を解くことが出来る。
つまり、ドラマを観て「このドラマって、あのドラマのパクリじゃん」と気付くことにより、問題を解くのに必要な思考回路を強化する事が出来る。
また、ドラマに登場する主人公の心境を考えたり、犯人を推理する事によって、国語で必要な読解力を磨くことが出来る。
だから、高いお金を出して塾に通わなくても、テレビで連ドラを観ていれば、受験勉強に必要な能力を磨くことが出来ると思う。
ただ、勘違いしてはいけないのは、ドラマをいくら観ても、テストに合格する事は無いということだ。受験に合格するためには勉強が必要である。
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■国語の答えの難しさ
私は原作「下克上試験」を読んで、作家・野坂昭如の息子のエピソードを思い出した。
野坂昭如は小説「火垂るの墓」の作者で、小説「火垂るの墓」がテストの問題に出た。「この時の著者の心境を答えよ」という問題だった。
父の野坂昭如が「火垂るの墓」の執筆中に、いつも「締め切りが~。締め切りが~」と言っていたので、息子はテストの答えに「締め切りが~」と書いたら、採点でバツにされたのだというのだ。
ただから、国語のテストは正しい答えを書くのではなく、ましてや、自分が思ったことを書くのでもないと思った。国語の答えは、出題者が「こう答えて欲しい」と思っている答えを書かなければならないのだと思った。
■桜井信一に対する感想
原作「下克上試験」の中に、授業参観や運動会について書いているページがる。
このページで、桜井信一は、「金髪の子が居ると写真を撮る気が失せてしまう」「授業参観はジーンズで来ることすらマナー違反だと思っている」と書いている。
実は前書きにも、桜井信一は「最近、『DQN』なんて蔑称が出来て非常に困っています」と書いている。
こういう点からも、桜井信一は、一般的にイメージされている不良の中卒ではなく、高校を卒業してないというだけで、常識を持ち合わせていることが分かる。
それに、桜井信一は高校を中退しただけで、学生時代は素行も良く、勉強は出来なくても、頭は良かったのだと思う。
それに、受験勉強のために車を手放したり、自費診療で病院を受診していたりするので、貧困層ではなさそうである。
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■アルジャーノンに花束との共通点
私は原作「下克上試験」を読んで、ダニエル・キイスの小説「アルジャーノンに花束」を思い出した。小説「アルジャーノンに花束」は、TBSとフジテレビでドラマ化された名作である。
その昔、アメリカでは、知能指数が一定以下だと知的障害者に分類され、知的障害者はコロニーという巨大収容施設に収容された。
小説「アルジャーノンに花束」は、パン屋で働く知的障害者チャリーが脳の手術を受けて高いIQを手に入れるが、手術で手に入れたIQは一時的であり、その後、チャーリーのIQは低下していき、最後は収容施設に入るというストリーである。
チャーリーはIQが高くなって行くにつれ、感情が変化していき、小説「アルジャーノンに花束」は「IQの変化」と「感情の変化」という2つの放物線によってストーリーが構築されている。
原作「下克上試験」も、中卒という学歴によって分別されたきた桜井信一が、一念発起して娘を最難関の桜陰中学校に入れるために親塾を開く物語で、「成績」と「感情」という2つの曲線によってストリーが構築されている。
だから、私は原作「下克上試験」と小説「アルジャーノンに花束」に多くの共通点があると思ったし、原作「下克上試験」を読んだ人は小説「アルジャーノンに花束」も読めば、より理解が深まるのではないかと思う。
■結末の感想
私が中学入試の事情を知らないだけかもしれないが、原作「下克上試験」の結末は、つまらなかった。つまらないかったというか、拍子抜けしたという感じである。
桜陰中学校の受験に失敗したら、引っ越して公立中学に入るという流れで、娘・桜井佳織は桜陰中学校を受験して、受験に失敗した。
ところが、後書きによると、娘・桜井佳織は偏差値70前後の有名私立中学に通っているというのだ。
2013年に桜陰中学校を受験して落ち、2014年6月の時点で差値70前後の有名私立中学の2年生ということは、中学受験で浪人したわけではないようだ。
本には書いてないが、桜陰中学校の他にも滑り止めを受けていたのかもしれない。
偏差値41の子が、1年5ヶ月の勉強で、偏差値70前後の有名私立中学校に合格するのは凄いことなのかもしれないが、物語としては、つまらない結末だと思った。
私の近所に「うちの子は、A大学しか受験しません」と言っていたが、A大学を滑っても、ちゃっかりと、滑り止めの有名大学に合格している人が居た。
原作「下克上試験」を読んで、その人の事を思い出した。やっぱり、世間って、そんなもんなんだと思った。
あんがい、桜陰中学校を目指したのは、娘をたきつけるためで、本当の目標は偏差値70前後の有名私立中学レベルだったのかもしれない。なんとなく、そんな気がした。
それに、ドキュメンタリー(実話)ということだが、お金の問題なども含めて、あまりリアリティーは感じなかった。
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コメント欄
まさに、能力主義に敗北宣言をしてがんばる
ドラマとしか感じなかった。
これで、感動する人は、なんともアレだね
桜井さんは中卒ではなく高校中退と思います。原作を読みましたが四谷大塚で2万台の席次で塾に相談に行くくだりがありますが偏差値53、54を目指すのは馬鹿らしいとの事でしたが、実際、復習塾ではなく進学塾では入塾テスト自体に合格しないとおもいます。その辺で完全なノンフィクションでもないと思います。