陸王の結末ネタバレ読書感想文

池井戸潤の小説「陸王」の結末ネタバレ読書感想文です。

このページには原作小説「陸王」のあらすじとネタバレや結末が含まれてします。閲覧にはご注意ください。

小説「陸王」のあらすじとネタバレは「陸王-原作のあらすじとネタバレ」をご覧ください。

■陸王の読書感想

池井戸潤の原作小説「陸王」を読んだ。小説「陸王」は、先細りしていく足袋業界で100年の歴史を持つ老舗の足袋製造業者「こはぜ屋」がランニングシューズ業界に新規参入して、マラソン足袋「陸王」を開発するストリーである。

池井戸潤の小説では定番となっている二部構成で、今回は「会社編」と「陸上部編」という構成になっている。

今回、原作小説「陸王」を読んで、改めて思ったのだが、中小企業の経営というのは、暖簾や看板を子供や孫に繋いでいく、終わりの無いマラソンのようなものだと思った。

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■心が救われた陸王の言葉

原作小説「陸王」は、老舗の足袋屋「こはぜ屋」がマラソン足袋「陸王」を作る話で、マラソンが一つの題材となっている。

実はマラソンが好きで、よく参加する。ただし、マラソンと言っても、私の場合は、ネットショッピングモールの楽天市場が開催するイベント「楽天お買い物マラソン」だ。

楽天お買い物マラソンは、楽天市場で10店舗買い回ると、ポイントが10倍になるという企画だ。

私は、讃岐うどん1000円とか、タオル1500円とか、安い物しか購入しないのだが、よく「楽天お買い物マラソン」に参加する。

ときどき、格安で買える目玉商品があるので、買おうと思ってチャレンジするのだが、直ぐに売り切れてしまい、一度たりとも目玉商品を買えたことがなく、いつも残念な気持ちになる。

しかし、原作小説「陸王」を読んで、少し気分が軽くなった。落ち込んだ私をの心を救う言葉が、原作小説「陸王」の330ページに登場したのだ。

330ページで、足袋屋「こはぜ屋」の大番頭を務める経理・富島玄三が、社長・宮沢紘一に対し、「難しい経営の理論は分かりません。でも、儲けを逸することは、損失ではない」と言っている。

私は、この言葉に感動した。徳をし損ねたり、儲け損なったりすることは、損をしたことにはならない。

目玉商品が買えなくても、別に損したわけではない。こういう考え方ができるようになれば、色々な場面でストレスが減ると思った。ぜひ、見習わなければならないと思う。

■マラソン界のサイヤ人「タラフマラ族」

メキシコの山岳部にタラフマラ族という先住民がおり、タラフマラ族は長距離を走ることから「走る民族」と呼ばれている。

タラフマラ族を漫画「ドラコンボール」で例えるなら、タラフマラ族は、戦うために生まれてきた戦闘民族「サイヤ人」である。つまり、タラフマラ族は、マラソン界のサイヤ人なのである。

このタラフマラ族は、高度な文明を持っておらず、ランニングシューズなどは履かずに、「ワラーチ」という原始的なゴム草履で長距離を走ることから、走り方についての研究が進んだ。

現在は、かかとで着地して、つま先で地面を蹴るという走り方が定番となっている。

しかし、新たなランニングフォームの研究によると、これは人間本来の走り方ではなく、不自然な走り方だというのだ。

人間は本来、足の前部分や足の中腹部で着地して走っており、足のつま先で着地するのを「フォアフット」、足の中腹部で着地するのを「ミドルフット」と言う。

この「フォアフット」や「ミドルフット」こそが人間本来の走り方であり、自然な走り方なので、走っても疲れないし、故障も少ないのだ。

あるデータによると、ランニングシューズで走る人は、裸足で走る人よりも、故障する確立が大きい。

ランニングシューズを履くと、かかとから着地する走り方になるのだが、かかとから着地すると、足はダメージを受ける。

だから、ランニングシューズはソールで足へのダメージを軽減する作りになっているのだが、完全にダメージを無くすことはできず、足にダメージが蓄積されていき、10年後に足は故障する。

しかし、裸足(「フォアフット」や「ミドルフット」)で走ると、擦り傷は出来るが、足が故障する確率は下がるのだ。

そもそも、人間の足には、走るための機能が全て備わっており、ランニングシューズなど必要ない。人間の足には、ランニングシューズの命とも言えるソール機能も備わっているのである。

だから、裸足になって「フォアフット」や「ミドルフット」といった人間本来の走り方を取り戻せば、ランニングシューズも必要ないし、故障もしないというのである。

このため、最近は「ベアフットシューズ」「裸足感覚シューズ」というのが、各メーカーから発売されるようになってきた。

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■裸足感覚シューズの注意点

ドラマ「陸王」を見て、「裸足感覚シューズ」「ベアフットシューズ」が欲しくなる人も居ると思うので、注意点を書いておきます。

販売されている「裸足感覚シューズ」は、足のつま先で着地する「フォアフット走法」や足の中腹部で着地する「ミドルフット走法」を想定として作られているものが多く、ソールが薄くなっている。

ソールが薄いということは、ソールが着地時の衝撃を吸収してくれないため、かかとで着地している人がソールの薄い「裸足感覚シューズ」を履くと、かかとに着地の衝撃がダイレクトに伝わり、逆に足を痛めてしまう可能性がある。

それに、「フォアフット走法」や「ミドルフット走法」は、効率的に走る事ができ、膝への負担も少なくなるが、簡単に習得できるものではない。

私も「フォアフット走法」に挑戦してみたのだが、なかなか難しい。それなりの距離を走ろうと思えば、「フォアフット走法」に必要な筋肉を鍛えなければならず、相当な練習が必要だと思った。

他にも、「フラット走法」というのもあり、「かかと着地」「フォアフット走法」「ミドルフット走法」「フラット走法」のどれが良いのかという論争は、どれにも一長一短があり、決着は付いていない。

たとえば、シューズは軽い方が有利と言われるが、振り子走法の人はシューズが軽すぎると逆に走りにくく感じるので、適度な重さがあったほうが良いので、シューズも軽い方が良いとは一概には言えないのだ。

だから、「その人の走り方にあったシューズを選ぶ」というのが、私の結論である。

そもそも、ジョギング程度なら体に良いが、マラソンやランニングになると、体に負担が大きく、体に悪いという研究もあるので、「走らない」という選択も考慮した方が良いだろう。

■ダイワ食品の茂木裕人の選択の実話

怪我をして戦線を離脱したダイワ食品の茂木裕人は、アトランティスからサポート契約を打ち切られ、「こはぜ屋」のサポートを受けていた。

しかし、ダイワ食品の茂木裕人が怪我から復帰すると、アトランティスはダイワ食品の茂木裕人とのサポート契約を取り戻そうとして、「こはぜ屋」に妨害を開始した。

ダイワ食品の茂木裕人は、こはぜ屋が零細企業だったことから、こはぜ屋とアトランティスの選択に悩んだ。

そして、最終的に、ダイワ食品の茂木裕人はアトランティスのシューズ「R2」を履いて会場に現れたのだが、レーズでは「こはぜ屋」のシューズ「陸王」で走り、ライバルの毛塚直之に勝利した。

この結末には、元ネタと思われるエピソードがあるので、実話を紹介しておきます。

小説「陸王」の実在のモデルは「アシックス」と考えられる。その理由は『「陸王」と「こはぜ屋」のモデルは「きねや無敵(MUTEKI)」』をご覧いただくとして、ここでは話を先に進める。

一昔前、アシックスは「性能は良いが、ダサい」「性能は良いのに、デザインが最悪」という評価だった(今でもそういう評価かも知れない)。

このため、アシックスを愛用している選手は、試合会場まではナイキやアディダスといったお洒落なシューズを履いていき、試合会場でアシックスに履き替える人が多かったのである。

おそらく、ダイワ食品の茂木裕人が試合会場まではアトランティスのシューズを履いていき、レース会場で「陸王」に履き替えたのは、こういうアシックスの実話がモデルになっているのではないかと思う。

なお、アシックスは日本では「ダサい」という烙印を押されているが、ヨーロッパなどの諸外国では「性能も良いし、お洒落」と評判でアシックスは人気がある。

ちなみに、私もアシックスを愛用しているのだが、昼間に使うのは厳しいので、深夜のジョギング用にしている。

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■陸王-「こはぜ屋」の結末の感想

新素材「シルクレイ」を生産する機械は、元々、試作品を作る為の機械だったので、シルクレイの量産を前提としていなかった。

このため、シルクレイの量産に耐えきれず、機械が火を噴いて修理も不可能となり、マラソン足袋「陸王」は生産打ち切りのピンチに陥った。

こに現れたのが、アメリカのアウトドア系アパレルメーカー「フェリックス」の社長・御園丈治だった。

御園丈治は、顧問・飯山晴之が特許を持つ新素材「シルクレイ」に着目し、顧問・飯山晴之をヘッドハンティングしようとしたのだが、顧問・飯山晴之は「こはぜ屋」に義理立てして断った。

そこで、フェリックスの御園丈治は、「こはぜ屋」ごと買収して、顧問・飯山晴之を手に入れようとしたのである。

「こはぜ屋」の社長・宮沢紘一は、会社を売却する以外に「陸王」を残す方法はないと考えたが、顧問・飯山晴之の助言により、「業務提携」という方法があると気付いた。

社長・宮沢紘一は、フェリックスの社長・御園丈治に業務提携を持ちかけるが、フェリックスは時間と技術を金で買い、急成長してきた会社だったので、業務提携を拒否し、話し合いは決裂した。

ところが、後日、フェリックスの社長・御園丈治が、条件付きの融資を提案してきた。

返済期間は5年で、5年で返済できなければ、「こはぜ屋」が融資残を資本金として受け入れ、フェリックスの傘下に入るという条件だった。

フェリックスは融資の条件として3年間の発注保証を付けていたが、3年間以降の発注は保証しておらず、フェリックスに悪意があれば、3年後に発注を打ち切られ、「こはぜ屋」は融資を返済できなくなり、フェリックスの傘下に入るとというリスクがあった。

経理・富島玄三は融資を受ける事に反対したが、社長・宮沢紘一はフェリックスの社長・御園丈治の「意図的な発注減は無い」という言葉を信じ、融資を受けることにした。

そして、「こはぜ屋」はフェリックスからの融資を受けて工場を建設し、売上げは以前の5倍を軽く超えるようになってくのであった。

これが小説「陸王」の結末なのだが、私は、陸王の結末を読んだとき、フェリックスの社長・御園丈治の気持ちが理解できなかった。

これまでは、時間と技術の問題を企業買収という方法で解決してきたフェリックスの社長・御園丈治が、どうして「こはぜ屋」に条件付きの融資を提案したのだろうか。

この結末は、フェリックスの社長・御園丈治の心理が重要なのでは無く、「外資系が目を付けるほどシルクレイの技術は優れている」ということを表現したかったのだろうか。

私は、埼玉中央銀行を辞めて東京ベンチャーキャピタルに転職した坂本太郎が「こはぜ屋」に融資してくれると予想しながら読んでいたので、ちょっと、フェリックスの社長・御園丈治の登場は蛇足だと思えた。

東京ベンチャーキャピタルの坂本太郎が「こはぜ屋」に融資して、もう少しわかりやすいハッピーエンドの方が私は良かったと思う。

■陸王の結末後の予想

小説「陸王」は、ハッピーエンドという結末で終わっているが、フェリックスからの発注補償問題が残っている。

フィリックスは3年間の発注補償を付けているが、3年後からはどうなるかわからないという問題が残っており、売上げが5倍に伸びたとしても、安心は出来ない。

フェリックスの社長・御園丈治が、「こはぜ屋」を子会社にしようと目論んで、3年後に発注を打ち切れば、「こはぜ屋」は借金を返済できず、フェリックスの子会社になるしかない。

「こはぜ屋」の運命は、フェリックスの社長・御園丈治の手のひらの上にあるのだ。

しかし、残念ながら、小説「陸王」では、「発注補償が切れる3年後」については描かれていない。そこで、3年後の「こはぜ屋」を予想してみる。

フェリックスが3年後に意図的な発注減をしないと信じたいが、外資系はそうは甘くない。

たとえば、実話で言えば、こういう話がある。

アメリカ人のフィリップ・ナイトは、スポーツシューズ市場の開拓を考え、日本のスポーツ用品メーカー「アシックス(オニツカタイガー)」と販売代理店契約を結ぶ事に成功し、「ブルーリボン・スポーツ」を設立して、アメリカでアシックスのシューズを販売を手がけた。

やがて、フィリップ・ナイトは、社名を「ナイキ」へと変更し、アシックスから技術者を引き抜いて独立して、自社ブランド「ナイキ」のシューズの販売を開始した。

ナイキは、無名だった中距離選手スティーブ・プリフォンテーンを支援し、スティーブ・プリフォンテーンの活躍によって売上げを伸ばした。

(注釈:スティーブ・プリフォンテーンは、アメリカの英雄的ランナーです。)

さらに、ナイキは「エアジョーダン」「エア・マックスシリーズ」で人気を集め、世界でも有数のスポーツ・アパレルブランドへと成長していったのである。

ナイキの創業者は「フィル・ナイト」と表記される事が多いが、フィル・ナイトの本名は「フィリップ・H・ナイト」で、小説「陸王」に登場する外資系会社「フェリックス」であり、名前が似ている。

「こはぜ屋」のモデルが「アシックス」で、外資系会社「フェリックス」のモデルがナイキだとすれば、フェリックスが3年後に「こはぜ屋」の技術者を引き抜いてランニングシューズ界に進出するという展開もあるのではないかと思った。

■陸王-宮沢大地の成長に感動

小説「陸王」を読んで、私が一番、勘当したのは長男・宮沢大地の成長である。

宮沢大地は就職活動に失敗し、就職活動をしながら、家業の「こはぜ屋」で無責任に働いていたが、マラソン足袋「陸王」のソール開発に関わることにより、成長していった。

その成長は、面接にも現れ、宮沢大地は見事にメトロ電業の面接に合格し、採用されたのである。

それでも、宮沢大地はメトロ電業への就職を止めて、足袋屋「こはぜ屋」に残ろうとしたのだが、父・宮沢紘一は「そこで思う存分に働いて、ウチでは得られない知識と経験を蓄積してくれ」と言い、メトロ電業へと送り出した。

すると、宮沢大地は「世の中を見てくるよ。オレなりに精一杯勉強してくる。だけど、一旦、出たからには、戻るつもりでは働かない。それじゃあ、メトロ電業に失礼だからさ」と答えたのである。

私は、このシーンで、宮沢大地は本当に成長したと思った。私は、宮沢大地が「こはぜ屋」に残って「陸王」の開発を続けて欲しかったが、メトロ電業へ就職する事になったので少し残念だった。

しかし、成長した宮沢大地なら、失敗しても責任転嫁などせず、メトロ電業で活躍するだろうと思ったし、宮沢大地が居れば、「こはぜ屋」は次の世代になっても安泰だと思った。「こはぜ屋」の暖簾は、こうやって100年、200年と続いていくのだと思った。

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