野口源三郎の生涯
NHKの大河ドラマ「いだてん(いだてん)」に登場する野口源三郎(永山絢斗)の実話を紹介します。
■野口源三郎の生涯
野口源三郎(のぐち・げんざぶろう)は、明治21年(1888年)8月24日に埼玉県榛沢郡横瀬村(深谷市横瀬)で丸橋栄三郎の長男として生まれた。
しかし、生まれて間もなく母親が死去したため、埼玉県榛沢郡岡部村にある母方の親戚・野口家へ養子に出され、野口八重郎の三男という扱いになっている。野口家は豊でもなく、貧しくもない農家で育った。
野口源三郎は、埼玉師範学校(埼玉大学)を卒業後に一時、小学校の教師として働いていたが、剣道四段、テニスでもかなりの腕前でスポーツには覚えがあったので、校長の勧めにより、学問の最高学府である東京師範学校(筑波大学)へと進学した。
東京師範学校の校長・嘉納治五郎がマラソンや水泳を教育に取り入れたため、高等師範学校で開催されたマラソンで、1年先輩の金栗四三と出会うが、空腹に耐えかね、レースを放り出して水を飲みに行ってしまう。
野口源三郎は大の甘い物好きで、マラソンを走っていると、どうしても腹が空いて我慢ができず、レースの途中で抜けて飲み食いするという癖に悩まされ続ける事になる。
さて、日本は明治45年(1912年)のストックフォルム・オリンピックに出場することになり、明治44年に羽田で予選か開催され、東京師範学校から野口源三郎・金栗四三・橋本三郎の3人が25マイル・マラソン出場した。
しかし、野口源三郎は大事な予選でも、やはり、レース中に腹が減るという持病が起き、空腹に溜まりかねて、駄菓子屋に飛び込んでパンを盗み食いしようとして怒られてしまい、25マイルを完走したものの、4位に終わってしまう。
しかも、盗み食いの失態を親類に見られていたらしく、野口源三郎はマラソンの禁止を言い渡されてしまった。
しかし、オリンピックに参加した金栗四三に触発され、本格的に陸上競技を開始する。ところが、大正5年のベルリンオリンピックは、第1次世界大戦によって中止になってしまうのだった。
さて、野口源三郎は、大正4年に高等師範学校を卒業すると、長野県の松本中学に教師として赴任。赴任前に立ち寄った丸善でコロンビア大学のコーチであるマーフェーの著書「陸上競技の練習法」と出会う。
野口源三郎は、松本中学で体育の指導方針の作成などに当たる一方で、松本中学に陸上部を発足し、マーフェーの著書「陸上競技の練習法」を元に陸上競技の指導を行い、自身も大正5年に十種競技を開始する。
十種競技なら、競技中に腹が減るという癖に悩まされることはなく、元々、運動が万能で高身長という利点がフルに発揮され、大正6年には、長身を活かして、棒高跳びで3メートルを記録して日本記録を樹立。3回極東選手権大会の十種競技でも優勝した。
野口源三郎は、大正7年に嘉納治五郎に呼ばれて東京高等師範学校の嘱託とて働きながら、陸上を続けており、大正9年のアントワープ・オリンピックで十種競技の日本代表に選ばれ、日本選手団の主将を務めた。
野口源三郎は、アントワープ・オリンピックの十種競技は14人中12位という結果に終わったが、世界レベルの技術を目の当たりにすることができ、大きな収穫を得た。
さらに、帰国の際に、体育の盛んなスウェーデンなどを視察し、多くの収穫を得て帰国した野口源三郎は、体育の指導方法を研究して、近代体育教育の基礎を築き、大正15年の体育指導要領の改訂に貢献した。
その一方で、大正10年に大日本体育協会の主事に就任。既成の選手だけでは、諸外国に勝てないと考え、若手を育成するため、全国の中学校を巡回して、陸上や体育の普及に奔走し、数多くの選手を育て、大正13年のパリオリンピックでは選手団監督を務めた。
大正14年に東京高等師範学校の教授となって、体育教師の育成にあたり、学校体育や陸上競技の発展に尽力し、昭和8年(1933年)には日本陸上連盟から第1号の「功労章」を授与された。
戦後は昭和24年(1949年)に東京教育大学の教授に就任、昭和25年には日本初の体育学部長に就任、昭和27年には名誉教授に就任。埼玉大学の体育学部長や順天堂大学の教授も務めた。
そして、数々の功績が認められ、昭和35年に「紫綬褒章」、昭和39年に「勲三等瑞宝章」を受章。昭和42年(1967年)年3月16日に死去した。享年80だった。
なお、大正8年に野口源三郎・金栗四三・沢田英一の3人が話し合って選手育成を目的として「アメリカ大陸横断駅伝」を企画した。
そして、「アメリカ大陸横断駅伝」の予選として「箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)」が開かれた。「アメリカ大陸横断駅伝」は資金面で協力が得られずに中止になったが、箱根駅伝は現在にも続いている。
NHKの大河ドラマ「いだてん(韋駄天)」の実話やモデルについては「大河ドラマ「いだてん(韋駄天)」のキャストとモデル」をご覧ください。
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