あなたには帰る家がある-不倫の結末ネタバレ感想文

山本文緒の小説「あなたには帰る家がある(あな家)」の結末を含むネタバレ感想文です。

原作小説のあらすじとネタバレは「あなたには帰る家がある-原作のあらすじとネタバレ」をご覧ください。

あなたには帰る家がある-不倫の結末ネタバレ

■あなたには帰る家がある-ネタバレ感想文

夫・茄子田太郎は私立中学校の教師で家族のために家を新築しようとしている。妻・茄子田綾子は家事が得意な良妻賢母で、2人の子供に恵まれている。

夫・茄子田太郎は両親と同居しており、家族の幸せのために古くなった家を新築しようとしていた。

一見すると、茄子田家は幸せそのものだが、実はどんでもない秘密を抱えており、家の新築しようとしたことを切っ掛けに、崩壊への序曲を奏で始まるのである。

その秘密とは何か。それは、妻・茄子田綾子の長男・茄子田慎吾の父親は夫・茄子田太郎ではなく、本当の父親は義兄(姉の夫)という秘密だった。

茄子田綾子は、姉の婚約者を好きになり、姉が結婚する直前に、姉の婚約者と1度だけ関係を持ち、姉夫婦が新婚旅行に出ている間に妊娠が判明した。

茄子田綾子は両親からお見合いを勧められていたので、優しい人を子供の父親にしようと思い、お見合い写真の中から一番モテナさそうな男性を選び、お見合いをした。そのお見合い相手が茄子田太郎だった。

茄子田綾子がお見合いの席で妊娠していることを打ち明けると、茄子田太郎は「今日できた子供だと思うことにしよう。他のことは忘れよう」と言って茄子田綾子を抱き、結婚していたのである。

その真相を知って私は、茄子田太郎は偉いなと思った。他人の子供を妊娠している相手と結婚するのは、かなり勇気が要ると思う。

それに、血液型から長男・茄子田慎吾が2人の子供ではないことが両親にバレたとき、茄子田太郎は「綾子が産んだのであれば俺の子供だ」と言い、茄子田綾子を庇っている。

そして、茄子田太郎は、そういう秘密を背負いながらも、家族の幸せのために家を新築しようとしているのだ。

しかし、その一方で、茄子田太郎は、妻のことを愛していると言っているにもかかわらず、女性の居る店に行ったり、住宅販売員の森永祐子や保険のセールスレディーの佐藤真弓にちょっかいをだしてりしている。

茄子田太郎は、家族を幸せにするために家を新築すると言ったり、妻のことを愛していると言ったりしているが、私はあまり真実味が感じられなかった。

それに、茄子田太郎は二世帯同居型の二世帯住宅を希望しているのに、家族は二世帯分離型の二世帯住宅を希望していたので、家族にも嫌われているようだった。

私は茄子田太郎のような人と出会ったことが無いので、茄子田太郎のことがイマイチ、理解できなかった。

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■茄子田綾子は地雷

茄子田綾子は、家事が大好きな良妻賢母というイメージだったが、自宅を新築することになったことが切っ掛けで、住宅メーカの営業マン佐藤秀明と出会ってしまい、不倫を開始する。

私は小説「あなたには帰る家がある」を読んで、茄子田綾子は完全に「地雷」だと思った。「地雷」とは、関わってはいけない人間のことである。

佐藤秀明は妻と給料勝負をしており、給料で負ければ、仕事を辞めて主夫にならなければならないのだが、茄子田太郎が新築を止めて、保険に入ると言い出した。しかも、その保険を勧誘したのが妻・佐藤真弓だと判明した。

佐藤秀明は1件も契約を取っていなかったので、茄子田太郎が保険を契約すれば、このままでは妻との給料勝負に負けると考え、茄子田綾子に助けて欲しいと頼んだ。

すると、「地雷」の茄子田綾子は、下記のように脳内変換をしてしまうのだ。

1・佐藤秀明から新築の契約を「助けて欲しい」と頼まれる。
  ↓
2・奥さんと別れることになったら慰謝料や養育費が必要だ。
  ↓
3・茄子田家との契約が取れなければ、佐藤秀明は給料が減って困る。
  ↓
4・佐藤秀明は私と結婚しようとしているのだ。
  ↓
5・自分の息子2人と佐藤秀明の娘も引き取れば良い。ちょうど、女の子が欲しかった。
  ↓
6・そういえば、アレが来ていない。佐藤秀明の子を妊娠したに違いない。
  ↓
7・これで子供が4人になる。佐藤秀明には頑張って働いてもらおう。
  ↓
8・そうだ。そのためには茄子田家との新築の契約が必要だ。

こうして、脳内変換した茄子田綾子は、佐藤秀明と結婚の約束をしたと言い、佐藤秀明の自宅に押しかけ、妻・佐藤真弓に娘を引き取りたいと言い出したのである。

このように、勝手に脳内変換で都合良く解釈するのは「地雷女」の特徴で、「地雷女」は現実にもたくさん居るため、気をつけなければならない。もちろん、地雷は女性だけなく、男性にも居るので、女性も地雷男に気をつけなければならない。

ただ、佐藤秀明は完全な被害者とは思えない。他の住宅メーカーの営業マンが早々に茄子田家から手を引いたにもかかわらず、佐藤秀明は茄子田家の契約を取りに行っており、見方によっては自ら地雷に当たりに行っている。

私は原作小説「あなたには帰る家がある」を読んで、つくづく、人生で必要なのは地雷を回避する能力だと思った。

■タイトルの意味

原作小説のタイトル「あなたには帰る家がある」にはどういう意味なのだろうか。誰が誰に対して言っている言葉だろうか。

このタイトルは色々な解釈ができるのだが、私は茄子田綾子が佐藤秀明に向けた言葉ではないかと思った。

茄子田綾子の姉夫婦は実家で両親と二世帯住宅を建てて暮らしている。しかも、茄子田綾子は姉の夫と関係を持ったので、当然、離婚しても実家には帰れない。

つまり、タイトル「あなたには帰る家がある」の後ろには「でも、私には帰る家が無い」という意味が隠されているのではないか。

また、ダブル不倫しているカップルは一緒の家に帰ることは無いので、会っても必ず別れなければならない。だから、帰って行く不倫相手に向けた言葉なのではないかと思った。

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■佐藤真弓の枕営業事件

生命保険会社「ライフ生命」で働くようになった妻・佐藤真弓は、夫・佐藤秀明と三ヶ月の給料で勝負することになった。夫・佐藤秀明が給料勝負で負けたら、妻を働き手と認め、仕事を辞めて主夫になるという勝負である。

妻・佐藤真弓は、茄子田太郎に保険を勧めるのだが、茄子田太郎からデートして欲しいと枕営業を要求された。

小説の結末で、妻・佐藤真弓は、夫・佐藤秀明に「私、茄子田さんと寝たよ」と告げているのだが、寝ている描写は無い。本当に寝たのだろうか?

私は妻・佐藤真弓は茄子田太郎とは寝ていないと考える。私が寝ていないと考え理由は2つある。

1つ目は、茄子田太郎が生命保険を契約していないからである。いくら横柄な茄子田太郎でも、寝ておいて生命保険を契約しないとは考えにくい。

2つ目は、妻・佐藤真弓が結末で支部長・愛川由紀の経費の私物化を注意したからである。

支部長・愛川由紀は、営業成績を上げれば、何をしてもいいと考えており、佐藤真弓にも無くら営業を勧めていた。

この支部長・愛川由紀に対して経費の私物化を注意するということは、「営業成績を上げるためには何をしてもいい」という方針に反発していることになる。

佐藤真弓が茄子田太郎と寝ているのであれば、支部長・愛川由紀の経費の私物化を注意せず、支部長・愛川由紀の側につき、高価な食事をご馳走して貰い、甘い汁を吸い続けるているだろう。

しかし、佐藤真弓はそうしなかった。つまり、それは茄子田太郎と寝ていないという証なのである。

■結末の感想

不倫が発覚して修羅場はあったが、家庭が崩壊したわけでもないし、あまりすっきりとしない結末だった。

妻・佐藤真弓がどうして不倫を許したのか、どうして離婚しなかったのか、いまいち釈然としなかった。

そして、妻・佐藤真弓はなぜ、夫・佐藤秀明に「私、茄子田さんと寝たよ」と言ったのだろうか。

「私も他の男性と寝たので、これでおあいこ。不倫したことを自責する必要は無い」という優しさなのだろうか。もう少し、妻・佐藤真弓の心理描写が欲しかった。

一方、茄子田夫婦も、シロアリが原因で家を新築することになったので、離婚はしていないようだ。おそらく、茄子田太郎は不倫していた妻・茄子田綾子を許したのだろ。

茄子田太郎は、不義の子を妊娠している妻・茄子田綾子を受け入れて結婚したのだが、今回の不倫をどう思ったのだろうか。その辺の描写も欲しかった。

なお、夫・佐藤秀明のようになすがままに生きて主夫になる男性に対して、色々な意見があるかもしれないが、私は有りだと思う。

天才バカボンの歌にも「ナスがママなら、キュウリはパパだ」とある。だから、ナスがパパでキュウリがママという家庭があっても良いと思う。

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