後妻業-原作ネタバレ読書感想文
黒川博行の原作小説「後妻業」の夏休みのネタバレ読書感想文です。
■後妻業-ネタバレ読書感想文
黒川博行の小説「後妻業」を読んだ。非常に面白かった。主人公・武内小夜子が高齢の老人と結婚して殺害し、遺産を奪う話だった。
後妻業とは、高齢の男性と結婚して殺害し、遺産を相続することを職業としている女性のことである。「後妻」を職業にしてるので、「後妻業」というわけだ。
「後妻業」は、弁護士などの間では噂になっていたが、一般的に広まったのは、この小説「後妻業」がきっかけである。
さて、小説「後妻業」に登場する主人公・武内小夜子は、結婚相談所「ブライダル微祥」の経営者・柏木亨と手を組み、資産家の老人と短期間で婚姻を繰り返していた。これまでに9人と結婚して殺害し、それぞれの遺産を相続していたようだ。
武内小夜子が老人・中瀬耕造を殺害した手口は、老人・中瀬耕造が服用していた血液の抗凝固剤「ワーファリン」を胃薬にすり替えるという方法だった。
しかし、意識を失っただけで死ななかったため、武内小夜子は入院した老人・中瀬耕造の点滴を外したり、色々としたすえ、最後は「空気注射」で殺害した。
意識不明に陥った91歳の老人・中瀬耕造が死んだところで、誰も殺人などとは思わないので、武内小夜子の手口は完全犯罪だった。
さて、武内小夜子は老人・中瀬耕造が死ぬと、公正証書の遺言書を持ち出して、全財産の相続を宣言した。
公正証書とは、公証人役場で公証人が証人2人の立ち会いの下で作成する書類である。
公正証書は、裁判の判決と同等の効力があり、その内容をひっくり返すことは不可能に近く、差し押さえについても公正証書で取り決めておけば、簡単に差し押さえをすることが出来る。
武内小夜子は、この法律知識を利用し、結婚した相手に公正証書の遺言書を作らせてから殺害し、公正証書の遺言書の効力を使って遺産を相続するという手口で後妻業を繰り返していたのだ。
だから、もし、貴方が誰かから、「遺言を公正証書にしてほしい」と頼まれたら、高確率で死刑宣告だと考えた方だよいだろう。
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■魑魅魍魎
小説「後妻業」は、前半で武内小夜子と黒幕・柏木亨の犯行を見せておき、後半で南栄総合興信所の調査員・本多芳則が弁護士の依頼を受けて、武内小夜子の素性を暴いていくという倒叙形式になっている。
ここで面白いのは、調査員・本多芳則の存在である。オーソドックスな倒叙形式であれば、後半で警察(正義)が犯人(悪)を追い詰めていくのだが、調査員・本多芳則は正義では無く、武内小夜子の証拠を掴んで大金を揺すろうとする悪だったのである。
また、武内小夜子は、結婚相談所で紹介された資産家の舟山喜春を次のターゲットとして近づくのだが、舟山喜春は資産家などではなく、体で女性を溺れさせて、金を騙し取ろうとする結婚詐欺師だった。
そして、武内小夜子は後妻業で稼いだ金をイケメンホストにつぎ込んでいたのだが、イケメンホストだって武内小夜子を単ある金づるとしか思っていないだろう。
そう考えると、被害者の娘である姉妹も遺産を相続するために動いており、姉妹から相談を受けた弁護士も、弁護士も姉妹に着手金など金の話をしており、あくまでも金(仕事)で動くだけで、弁護士も正義では無い。
小説「後妻業」の登場人物のほとんどが金のために動いており、正義で動く人が登場していない。世の中やっぱり金のかのだろうか。小説「後妻業」を読んでいて、世の中の人は魑魅魍魎だと感じた。
■大阪人は犯罪も漫才
原作小説「後妻業」を読んでいて面白かったのは、武内小夜子と黒幕・柏木亨の会話だった。
大阪人が2人集まれば漫才になると言うが、武内小夜子と黒幕・柏木亨の会話もまさに漫才だったのである。
武内小夜子と黒幕・柏木亨は、後妻業の仲間だと言っても、自分の利益だけを考え、いがみ合っているのだが、その会話が夫婦漫才みたいで面白いのである。
大阪人が2人集まれば、犯罪も漫才になるので、すごいと思った。
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■2人の関係が謎過ぎる
黒幕・柏木亨が4万円で仕入れた偽物のブランド時計を定価230万円だと言い、90万円で武内小夜子に売りつけようとするシーンがある。
武内小夜子が「マージン取ってるやろう。ほんまは80万円と言われんちゃうんか」と追求すると、黒幕・柏木亨は渋々、「85万や」と答えた。
すると、武内小夜子は勝ち誇ったように、「80万なら買うてもいいわ」と告げると、黒幕・柏木亨は仕方なく、80万円で時計を売った。
しかし、時計は偽物で、4万円で仕入れた物なので、黒幕・柏木亨は76万円を儲けたているのだ。
知らない相手なら、偽物を売りつけて騙す人も居るかもしれないが、後妻業の仲間からも金を騙し取ろうとする強欲さが、すごいと思った。
後で偽物だとバレて、裏切られたりするのかと思っていたが、全然、そんな展開にはならなかったのは少し残念だった。
■お金は綺麗に払うこと
結婚相談所の柏木亨は、ホステスの三好繭美と交際していたのだが、途中で別の女性に乗り換えた。
怒った三好繭美は、店を変わると言い、柏木亨にバンス(店からの前借り)の返済金や店のツケの支払いを求めたのだが、柏木亨は支払わなかった。
このため、三好繭美は、南栄総合興信所の調査員・本多芳則が後妻業の調査に来ると、柏木亨の不利なことを教えたのである。
最終的に、三好繭美が教えた情報が有力な手がかりとなり、柏木亨は調査員・本多芳則から3000万円を脅されることになってしまう。
だから、私は別れるときは、綺麗に円満に別れなければならないと思う。お金で解決出来る問題なら、お金で解決で解決するべきだと思う。もう会うことは無いので、払わないなどという考え方は最低だと思う。
たとえば、芸能人でも、紅白歌合戦に出場して、これからというときに、過去の女性問題が発覚して引退に追い込まれるような人も居る。
あのとき、ちゃんとお金を払っていれば、と思っても、後の祭りである。
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■後妻業の結末の意味
原作小説「後妻妻」の結末は、主人公・武内小夜子は弟・黒澤博司に殺されてしまうという呆気ないバッドエンドの結末を迎えた。
黒幕・柏木亨は、死体が出なければ事件にならないと言い、死んだ武内小夜子を埋めに行こうとしたが、警察に見つかって逮捕されるというバットエンドを迎えた。
以前に読んだ奥田英朗の小説「ナオミとカナコ」は、DV夫の死体を埋めて上海に逃走するという内容だったので、ドキドキしながら小説「後妻妻」の結末を読んでいたのだが、黒幕・柏木亨は武内小夜子を埋める前に警察に捕まってしまったので、物足りない結末に思えた。
どうして、小説「後妻業」は物足りない結末に終わったのか。それは、モデルとなった実話が関係していると思う。
(注釈:モデルとなった実話については「後妻業-武内小夜子の実話と実在のモデルのネタバレ」をご覧くとして、ここでは話を進める。)
実は、小説「後妻業」に登場する姉妹のモデルとなった人物が、作家・黒川博行の知人なのだ。
黒川博行は、知人の姉妹から、内縁の妻に遺産の大半を持って行かれたことを話したので、黒川博行は内縁の妻に興味を持ち、小説「後妻妻」を書いたのだ。
実話では、警察が動かなかったので、事件にならず、報道もされず、武内小夜子のモデルになった内縁の妻は遺産の大半を相続している。
そこで、黒川博行は、せめて小説の中で知り合いの姉妹の無念を晴らしたいと思い、主人公・武内小夜子が弟・黒澤博司に殺されるという結末にしたのではないか。
■後妻妻の感想文
昔は、せいぜい「玉の輿」や「結婚詐欺」くらいだったのだが、最近は女性が積極的になり、「プロ彼女」や「後妻業」などが増えてきたので、お金持ちの男性は色々な女性が近づいてきて大変だと思う。
しかし、なんとなく、羨ましいと思う一面もある。
私はなど、お金が無いので、後妻業の女すら近づいてこない。最近はセールスの人も、宗教の勧誘の人も来なくなった。
未だに私に近づいてくるのは、ハエだけだ。
なお、原作「後妻妻」のあらすじとネタバレは「後妻業-原作のあらすじと犯人ネタバレ」をご覧ください。
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